バス代わりの飛行機

Le rayon d'action illimité. D'une ruche bourdonnante.

アナクロ?

Business Travellerの Asia Pacific版1月号に、この雑誌の前編集者である Tamsin Cocksが寄稿していました。表題は "Sexism in the sky" 。ちなみにこの方は女性です。時代が移っても、あまり変わらない航空会社の体質に対する意見でした。

 

1960年代まで戻ると、客室乗務員は 59 kgを超えず、未婚であり、子がいてはならず、老いさらばえる(decrepit)年齢の 32 歳までに引退しなければならないと Pan Amが公言していた古き良き「トロリー押し人形(trolley dolly)」時代。ドリンクサービスを行う若く魅力的な女性は、フライト体験に必要不可欠であるのは当然だが...などと始まる1頁の意見。昔話も書いていますが、矛の向け方が恐ろしく古い感じです。

 乗務員は体重に上限があってもいいけれど、未婚だとか子がいないとか、機内サービスと何の関係があるのか理解できないというのが、まともな感覚でしょう。年齢については、若い方が良いという客もいるかもしれませんが、こだわるのは前時代的です。

 

80代の爺さんを相手に物を言っているのかと読み進めていましたが、記事が紹介する最近の出来事は、この問題が相変わらず現代的であることを教えてくれました。確かに振り返ってみると、こういう感覚が下敷きになっている「事件」は絶えず起きていることに気づきます。

 記事で示された例は、以下の通りです。

・SpiceJet は女性乗務員を 18 歳から 27 歳までのシングル、欠点のない顔色・肌の色(unblemished complexion)という条件で求めています。

中国南方航空は、55 kgを超えない体重の女性で、顔の特徴は整っており、身体は均整がとれており、顔色・肌の色は健康的であることを要求しています。

・VietJet Air は新規開設路線で、ビキニをまとった女性乗務員による機内通路でのダンスを行っています。これには罰金が科せられました。

・Qatar Airways の CEO、Akbar Al Bakerは、Qatarの客室乗務員の平均年齢は 26歳 であり、アメリカの航空会社に載っているお婆さんたち(grandmothers)とは異なるとコメントしています。

 

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Vietjet のビキニフライトは日本でも知られています。個人的には、Qatar航空 CEO の発言は新聞で読んだ記憶があります。航空会社が起こすこういう「事件」に反発を覚える顧客は少なくないはずですが、繰り返し起きていることから、多数派は Tamsin Cocks が言う通り若く、美しい未婚の未経産婦をありがたがるようです。文化依存性がある可能性を考慮して、「英語圏の多数派」と限定した方が良いかもしれません。

 

日本ではミニスカート制服を導入しようとしたスカイマークが、相当の反発を受けました。Ryanairのように客室乗務員に水着を着せてカレンダーを作るという発想は、それがチャリティー目的であったとしても、社会的に容認されそうにありません。

 

日本で時々物議を醸すのは、女性客室乗務員のオブジェ化の側面です。もう一つの側面、客室乗務員が若いことが無条件で宣伝になる点は、理解すら難しいのではないでしょうか。有能なるAkbar Al Bakerの事です。「平均26歳」発言で、彼の顧客は鼻の下を長くして航空券を買うのでしょう。しかし平均的な日本人なら

「5、6年でほとんど辞めてしまうってこと?カタール、超ブラック。」

とか

「経験の浅い乗務員が多いことを宣伝して、カタールのCEOはバカなのか。」

とあらぬ方向へ考えが及びそうです。日本の一般的な接客の場で、女は若くetc.は迎合—反発の二元論になるほどの価値を持ちません。こだわる個人がいても、変ではありません。しかし社会全体の一般的な価値であると前提にした発言は奇妙です。

 中東の雇用でブラックかどうかなんて、状況が違い過ぎて判断できませんが、接客において経験年数がサービスの質を左右するのは明らか。しゃべり方一つとっても、明確に差があります。様々な状況への対応力も全く異なります。個人差はありますが、平均をとれば違いははっきりしています。さらに付け加えると、客室乗務は楽ではないため、適性が無いと長年続けられないという適者自然選別の効果も無視できません。アジア、ヨーロッパの航空会社では、若い=低レベルが概ね成り立っているように思えます。

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Tamsin Cocksも指摘する通り、航空会社は航空券が売れるから、女性客室乗務員が若くetc.を宣伝し、さらに外見で籠絡を試みる訳です。航空会社はイメージが極めて大切です。そして宣伝、接客において sexism が横行しています。つまり sexism がイメージ向上に欠かせないのが、航空会社なのでした。これはとりもなおさず顧客の嗜好がそれに合致するからです。情けない話ですが、一方で sexism に基づく宣伝がアピールしない日本人という集団は、完全に猫をかぶっているのか、段違いに decent なのか、関心のベクトルがそこへ向かないのか、どうなのでしょう。