前の記事は主に HOP ! の客をターゲットにした割引カードの話でしたが、アップロードしたとたん、次のニュースが舞い込んできました。
HOP ! という単独のブランドは無くなり、Air France HOPと改称されるとのこと。1月の JOON の記事
エールフランスの新しい会社 Joonの旅 - バス代わりの飛行機
エールフランスの新しい会社 Joon の消滅 - バス代わりの飛行機
でもそうだったのですが、記事をアップロードしたとたん、ブランド名が無くなるという現象が後を追います。
今年に入って「バス代わりの飛行機」は、会社ブランドのデスノートになっています。
Carte d'Abonnement(前払いカード)
前の記事で取り上げた割引カードは、24歳までの若者向け、65歳以上の老人向け、週末旅行向けで、想定されるのは明らかにプライベート利用。一方で、ビジネスユーザーのための有料カードも用意されています。
abonnementという言葉にぴったりくる日本語が無いので困っているのですが、雑誌等の定期購読、鉄道の定期券、オペラのシーズンチケットなど、前もって料金を払って一定期間のサービスを受ける場合に使います。サービスの受容は、定期的または無制限。この Carte d'Abonnement の場合は無制限。
利用方法は、今年になってから複雑化しました。
Comment utiliser au mieux la nouvelle carte d'abonnement Air France
時代を遡れば、Air Inter(1990に Air France が吸収)は、単一固定料金で選択した国内線の予約、無料変更を一定期間可能にする Carte d'Abonnement のシステムを持っていました。値段的にはそれほど良いものでは無いものの、その単純さはビジネス客を満足させました。
Air Franceに引き継がれた後、このシステムは 2016 年にフランス発の全欧州路線へ拡大されました。Air Interとの大きな違いは国内線の利用で、単一固定料金を止め、予約日の混雑度で変動させる一方、フライト変更に関しては予約便出発の14時間前に行えば、同一日のフライトに料金調整なしに可能としました。しかし利用に当たっては、相当の混乱が起きているようです。なかなかのカオスぶりが上記の Le Figaro にレポートされています。
このフランス本土と(北アフリカを含む)欧州を対象とする Carte d'Abonnement の予約変更以外の特典をまとめると、
・AF, HOP ! によるフランス本土路線では、料金区分 Flex の往復を100 €割引
・フランス本土—欧州の路線では、料金区分 Flex の往復を120 €割引
・AFによるフランス本土発着中距離路線ではビジネスクラス10%割引
・SkyPriority と同じ空港での優先扱い
・23 kgの預入手荷物が2個無料
・航空券はいつでも変更および払い戻し可能(予約クラスによって要料金調整)
・AF PlayとLe Kiosqueでデジタル出版物ダウンロード無料
・加入特典として Flying Blue の 2,500 miles + 20 XP
・継続特典として Flying Blue の 5,000 miles + 20 XP
・フランス本土内の路線では、1搭乗あたり 2 XP のボーナス
といったところです。年間料金 419 €。(会社が BlueBiz に加入している場合、319 €)
Les Antilles, La Guyane, la Réunion* を含むフランス「国内線」専用のカードもあり、年間料金は 269 €。(会社が BlueBiz に加入している場合、219 €)やはり予約変更可能で、さらに
・ビジネスクラス 5%割引
・プレミアムエコノミー 10 %割引
・カリブ海地域路線(Cayenne, Fort-de-France, Pointe-à-Pitre, Miami, Port-au-Prince) 10 % 割引
・SkyPriority と同じ空港での優先扱い
・32 kgの預入手荷物が3個無料(ビジネスクラス搭乗時)
・23 kgの預入手荷物が3個無料(プレミアムエコノミー搭乗時)
・航空券はいつでも変更および払い戻し可能(予約クラスによって要料金調整)
・AF PlayとLe Kiosqueでデジタル出版物ダウンロード無料
・加入特典として Flying Blue の 2,500 miles + 20 XP
・継続特典として Flying Blue の 5,000 miles + 20 XP
・フランス本土内の路線では、1搭乗あたり 2 XP のボーナス
*:言うまでもないと思いますが、これらはカリブ海、南米、南インド洋に位置します。つまり対象となっているのは、長距離路線です。
そしてこれら2つのカードの特典を全て合わせたコンビネーションカードもあります。年間料金は 569 €。(会社が BlueBiz に加入している場合、419 €)
現在10万人ほどの顧客が利用しているようです。
顧客に金を落とさせるあの手この手
このブログを開始した頃、つまり 6 年ほど前、AF のエコノミークラスは「一様」で個人客は基本的に事前座席指定できました。それがいつの間にか KLM と同様、劇場並みに座席別料金が異なるようになり、座席指定も有料になりました。これはご自慢のシステム、KARMA(KLMとAFのカルマ - バス代わりの飛行機)の成果でしょうが、一方で欧州のフライトではエコノミークラスが主戦場となっていることを意味します。
確かにビジネスクラスを利用しないビジネス客は多いはずで、そういう(比較的金離れが良い)客にできる限り金を使わせることは大きな課題です。しかし AF が行っていることは、もはや機能しなくなったマイレージプログラムとほとんど同じ発想。結局航空会社は、顧客囲い込みしか思いつかないようです。
新しいアイディアを考えつかない経営陣に頼りなさを感じても、顧客にはメリットの多いシステム。該当する路線のエコノミークラス、プレミアムエコノミークラスの利用が多いなら、加入して損は無い気がします。