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巧妙なアメックスと21世紀の太鼓持ち(その1)

太鼓持ちというやや古い日本語があります。金持ちの宴席に伴い、おべんちゃらを使い、芸も見せて宴を盛り上げる業務およびその業務に従事する者(♂)を指します。今日のキャバクラ嬢(♀)のような身分になるのでしょうか。現代では意味は転じ、有力者(金持ち、うんと上の上司など)の取り巻きで、内外でへつらい気に入られようとする者を指すようです。

 合理性に欠けるレベル(、かつ内外)で有力者を称賛することにより、その有力者から利益を引き出す点がポイントです。

 仏語にも、ほぼ同じ意味で使える単語があります。それは lèche-bottes(靴なめ)と lèche-cul(尻なめ)です。侮蔑的表現であり、後者が下品な言い回しであることは仏語に馴染みがなくても想像がつくでしょう。政治の場では、下位の者が上位の者を慮り、柄にもないことを平然と発言したり、行ったりすることが良く起きますが、そんなことをするとこれらの単語の出番です。lèche-bottesは、メディア頻出単語の一つ。辞書にも出ています。

 

事情に詳しい人が嫌悪するサイト群

太鼓持ちも lèche-bottes、lèche-cul も、対象を軽蔑する場合に使われます。なぜ人は太鼓持ちを軽蔑するか?は興味深いテーマですが、ここでは詳細に立入りません。現象そのものが大切。

 何でこんなことを話し出したかと言うと、いつの間にか大増殖しているアメックスの会員紹介サイト群が、まさにアメリカンエキスプレスの靴なめ集団、尻なめ集団だからです。サイトに書かれた美辞麗句のオンパレードは、書いた人間の意見としては不自然。心の内は irrelevantで、目的は新会員を紹介すると与えられるアメックスポイント。サイトに本音が現れてしまっています。こういうあからさまに「真心が無い」ことが嫌われる原因なのでしょうか。それらクレジットカードの機能、特典の仕組みを知っていて、会員紹介サイトを運営する予定がない人達からとにかく忌み嫌われています。

 もちろん少数ながら、丁寧かつ公平に書かれている紹介サイトもあります。念のため。

 

アメックスのイノベーション

既存会員による新会員の紹介制度は、クレジットカード業界では古くから存在します。アメックスがやったことは、ソーシャルメディアとの絶妙な融合。ポイント報酬をちらつかし、多数の個人会員にアメックスを賞賛させるよう仕向けたことです。当然クチコミ時代より何桁も大きな数字の新入会者を集めることができます。一方で社会的なトラブル(例えば、詐欺に近いオーバーステートメントによる宣伝がなされるなんてこと)が起きても、会員紹介サイトを運営する会員個人の問題です。アメックスとしては問題会員と認定、強制退会させれば責任ある行動をとったことになります。つまり集客効果は高く、リスクは低いシステムなのです。どういう角度から見ても、このイノベーションは称賛に値します。

 もともとアメックスは、世の変化に応じて新たなビジネスの枠組みを構築することに長けています。社会システムの一部まで変え、パラダイムを構築してしまう剛腕は、いかにもアメリカ流ビジネス。この点は敬服するしかありません。アメックスから日本のメガバンクを眺めると、滅びゆく恐竜のように見えるはずです。同じ金融サービスですが、何たる違いでしょうか。

 

一般に靴なめ、尻なめが「分をわきまえている」限り、周囲は忌避する必要がありません。しかしウェブの世界の話です。正当な批判者を商売敵とばかり、別アカウントをつくって攻撃しているのではないかという疑念は常に付きまといます。これは最もやってはならないことです。なぜならこういう事がもし一件でも明らかになると、今まで舐めていた靴や尻の主が社会から非難を受けます。当然その主は原因となった愚か者を追放するでしょう。SNS経由の炎上は、どんな拍子に起こるかわかりません。「言論の自由の侵害をアメックスが助長」なんて、メディアには心地よい響きになるではありませんか。いつまでも気持ち良く靴や尻を舐めていたいなら、軽はずみな行動は慎むべきなのです。

 アメックスにしてみたら、彼らの靴なめ、尻なめの中でも、とびきりの愚か者が暴走する危険性を警戒せざる得ません。さらに彼らの戦略には、別の弱点があります。それは、胡散臭さによるブランドの棄損です。胡散臭さは太鼓持ちの本質。クレジットカード入会を考える人間が真面目だと、事前にカードの評価を複数サイトで調べるでしょう。紹介ボーナスというニンジン付きで真心のないサイトが乱立していることに、すぐ気づくはずです。その時点でそれらのサイトが皆「よだれダラダラ」の姿に見えてくる可能性が高いのです。まともな人間ほど新会員になるのを躊躇うという展開もアメックスは考慮しなくてはなりません。

 

会員紹介サイトを運営する者たち

これら現代の太鼓持ち達は、空き時間を使ってさえも儲けるという意味において、商売熱心です。ポイントとは言え、家計のレジャー費削減に大きく貢献するでしょう。それで浮かせるお金は馬鹿になりません。スタバでPCを広げる起業準備中の連中より、はるかに有能な気がします。

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労働は週に54時間(休憩時間及び始業前準備時間を除く)

一方で、会員紹介サイトを蛇蝎の如く嫌う方が多いのも事実。しかし彼らは分をわきまえている限り、蛇や蝎ほど危険ではありません。むしろ地下6フィートに涌いた蛆虫のように無害なのではないかと。