PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

痩せなければ、配置転換(か、解雇)になるスチュワーデスたち

印パ国境での紛争が勃発し、困難な状況に陥っているパキスタン国際航空。今年初めにあったとんでもないニュースがすっかり色あせて、その意味ではラッキーでした。

 

この航空会社は 1月初め、全スチュワーデス(=les hôtesses de l'air, 女性客室乗務員)に対し、

「太っている者は、7月までに痩せろ。さもないと仕事は続けられない。」

という指令を出していたのですから。国際的に非難が集まりそうな気配でした。

www.francetvinfo.fr

記事の内容は以下の通り。

 

基準は BMI >25。2019年1月1日より、女性客室乗務員は 1.65 m の身長の場合、68 kgを超えてはならないことになりました。1月から7月の間にこの基準を満たさない場合、彼女らは搭乗できなくなります。

 「乗務員が 7月31日以後に必要とされる体重を 13.5 kg上回っていたら、もはや搭乗できず、健康評価のため乗務員メディカルセンターへ赴かなくてはならない。減量し、BMI標準を達成するため、処置を受けることになる。」と指令は読めます。全女性搭乗員は、毎月 2.3 kg減量することが奨励され、7月の最終評価の前に毎月体重を図らなければなりません。

 

欧州の価値観からすると、女性だけが対象となっている点が大きな問題です。さらに言うと、経過処置は彼らなりに親身になっているように思えますが、管理の方法が強制的だと反発されそうです。

 

女性客室乗務員に、「若さと均整の取れた肉体」を堂々と求める会社が今でもあり、それを巡るごたごたを少し前に紹介しました。

アナクロ? - バス代わりの飛行機

 

パキスタン国際航空の場合、イスラム教国のフラッグキャリアです。視覚を拠り所にして、女性の肉体に基準を設けるのは、教義に反する気がします。昨今のこの国の様子から考えて、世俗主義が広まったわけでもないでしょう。恐らくは機内を軽くし、燃料消費を抑えるためだろうと思います。

 太った客室乗務員が機内でうろうろしていては、搭乗客の手荷物の重量オーバーを規制することが困難になります。1 kg 超過で追加料金を要求された BMI = 20の客がいたとします。「その前に、お前の飼育しているデブたちを何とかしろ」と抗議したくなるのは当然です。その時は黙って払っても、次回以降の搭乗は他社になります。

 

もしかしたら先進的な施策になるかもしれません。次の段階は、航空券の販売に従量制を導入することでしょう。基本料金は手荷物と合算して 80 kgまで。それを超えると 1 kg あたり何ドルの加算。体重120 kg以上なら2席分基本料金が必要 etc.なんて形です。現在のシステムは痩せている人間に不公平と言われても、反論は難しいのです。航空会社は、この不公平感を利用して利益を上げる余地があります。

 もちろんパキスタン国際航空の取組みで、女性従業員だけが対象になっている点はいただけません。パイロットも含めた男性にも適用しないと、非難は免れません。

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