PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

機内、ラウンジでのワインの注文方法(その2)

ワインの呼び方における歴史の影響と航空会社の現状を俯瞰した後は、実践あるのみ。航空会社別ワインの注文方法と注意点です。以降、多少の例外はものともせず、大胆に公式化します。理解しやすさを優先した結果です。

 航空会社は4つのカテゴリーに分類します。

 

アジア・中東の航空会社

伝統的にワイン文化が無く、ワイン原理主義者から見ると、世界で最も遅れている地域*。代表的な航空会社は、CX, BR, CI, TG, SQ, MH, EK, EY, QRなど。ざっくり言って、箸を使う国と中東です。日本在住者には重要な航空会社が並びます。

 

*:ワインはキリスト教と共にあったので、こういう観点はキリスト教と同じ程度には欧州人の心の底に残っていると思います。

 

アジアは世界で最も偉大な食文化を持つものの、ワインはアジアの外れコーカサスより欧州側で発展。彼岸から見ると、アジアはワインの暗黒大陸。そういうアジアの国々の航空会社です。従業員にワインの常識を習得させるにはコストがかかりすぎ、効率が悪いことこの上ありません。効果的な標準化が必要とされるわけです。航空会社の行うワイン・マニュアル化は、見栄っ張り軽薄男の比ではありません。

 

その戦略は、品種を覚えさせることを基本とします。その1に書きましたが、機内でのワイン品種はかなり限られます。一方生産者はバラバラ、産地もバラバラです。品種の教育が、ローコスト・ハイリターンなのです。

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客の側から見ると、以下のことが起きます。ワインは蘊蓄を語られた方が高級に見えるので、機内でも立派なワインリストにそれらしい説明が載ります。ワインの ID もほぼ完全に載ります。客は自分が勉強した気になります。この何か意味のあることを学んだという感覚が、ホワイトカラーを惹きつけます。ワインリストは、航空券の商品価値を高めます。

 客はワインリストが詳しいため、キャビンサービスを行う者も理解していると何となく勘違いしてしまいます。これは実に大きな誤解。ほとんどの客室乗務員は、ぎりぎりの知識で機内サービスに臨んでいます。航空会社は高いイメージを売るために、とても着いていけないレベルの仕事を現場に放り投げていることになります。ブラック企業の典型的なやり方ですが、ワインに詳しい客はそれほど多くないらしく、何とか回っています。

 

客室乗務員はワインのことはよく分からないと心すべきです。彼女たちの命綱は品種だけと考えた方が良いと思います。

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いくら有名でも個々のワインは、名称では判別できないと思います。

 

こういう航空会社のやり方の是非はともかく、客室乗務員は打ち合わせで品種名とボトルの対応を覚える程度。客の方で合わせてやる、つまりワインは品種名で指定するのが良いのです。さもないといろいろと追加説明する羽目になります。ワインの名称を正確に読み上げてもダメ。品種名を呪文の中に隠す効果しかありません。

 

またこれらの航空会社の特徴ですが、無難なワインを載せます。したがって New Zealand の Sauvignon Blanc と Australia の Shirazは、大体搭載されています。

 

これはMalaysia Airlinesのビジネスクラスの白ワインのリスト。白の2番目が New Zealand の Sauvignon Blanc。

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1 番目はChardonnayです。典型的ですね。3番目はViognierと変化球でアクセントを付けています。(その1)ではその他扱いで良いと書きましたが、これを注文すると、そのとおりの体験ができるはずです。Pechedenferは、

 

Chapoutierと言っても、viognierと言っても、Rhôneと言っても通じたことが無い

 

のでした。ワイン名をリストの通り読み上げても当然ダメ。これは別に驚くべきことではありません。MHに限らず、Chardonnay と Sauvignon Blanc 以外の白ワインはなかなか通じないのです。

 

ちなみに同じワインリストの裏側は赤ワイン。

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1番上の Médoc なので、品種はブレンド。これはMédocでもBordeauxでも、はたまたChâteau les Ormes Sorbetでも通じません。ワイン愛好家としては許せないかもしれませんが、Cabernet Sauvignon か Merlot と言った方が通じたかもしれません。

 2番目は再三申し上げている通りの法則。定番 Australia Shirazが登場してきます。3番目は目先を変えて Rioja です。これはどう発音したら通じるのか見当が付きません。

 

そんなこんなで多少地雷含みですが、Chardonnay(白)、Sauvignon Blanc(白)、Shiraz(赤)はまず積んでいますし、まず通じます。それだけのことが客と乗務員の間に共有されるだけでも、ワインの注文はだいぶ楽になります。この辺がポイント。

 

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QRはワインの教育も結構一生懸命やっていて、リストのワインは大体問題なくわかります。高い評価は伊達ではありません。

 

まとめ

アジア、中東では、社会全体および客室乗務員のワインに関する知識が徹底的に欠落しているので、機内ではわかりやすい注文を心がけるべきです。品種で呼ぶのが良いけれど、Chardonnay、Sauvignon Blanc、Shiraz以外は通じない可能性が高く、その場合は、それ以上の説明が必要と諦めるしかありません。