PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

航空会社に由来する客の損害が多い時代

利用客は損害を受け、誰も保障する必要がないという話です。社会構造の変化が遠因にあり、客は丸損という事態が増えている気がします。

 

破綻、身売り、解体 etc.

航空業界が規制に縛られていた時代、換言すると国家の庇護にあった時代は、航空会社自体の変化で消費者が損害を受けることは考えずに済んだはずです。世を騒がせてきたのは旅行代理店の破たんで、これは今も昔も突然起きます。

 

現代は規制が廃止される一方、投資、提携が全地球的になったおかげで、航空会社に起きる変化が消費者に直接影響を及ぼすようになりました。損害を与えるような話がほとんどです。

 

航空会社が破綻、発券済み航空券が無価値になる事件は、ヨーロッパで時々起きます。普通、突然です。航空会社も旅行代理店並みになりました。

 旅行中なら帰れなくなります。3週間前にあった WOW Air 運航停止の場合、足留めを食らった旅行者が4,000人いたとされています。他の航空会社がそういう哀れな旅行者限定で、セールを行うのが近年のトレンド。救いの神によるハゲタカ商法です。

 LCCの経営は楽ではないらしく、〇〇の経営が悪化しているというニュースはよく紙面を騒がせます。しかし Air Berlin のように三大航空連合に加盟していても、破綻、予約客は救済されなかったのですから、レガシーキャリアと言えども油断なりません。

 

先進国では表向き国家支援はなくなり、自由競争となっていますが、Alitaliaのように経営危機を何十年も続けており、うやむやな形で資金投入される会社もあります。一筋縄ではいきません。

La compagnie Alitalia n’a plus que 2 semaines pour être sauvée - Tour Hebdo

この4月16日の報道、タイトルだけ見ると、アリタリアを救うにはあと2週間しか残されていないそうです。しかし何度こういうタイトルを見たことか、分かりません。

 

インド第二の航空会社 JET Airways は財務状態の危機が続き、給料の遅配も起きていましたが、ついに昨日(4月17日)運航停止に至りました。

La compagnie aérienne Jet Airways disparaît du ciel indien

Le Mondeによると、死亡診断書にサインはまだだが、臨床的に死亡状態。社長は全マイレージ会員に電子メールを送ったようです。

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ホームページもお通夜状態でした。

 

こういう事例を見ていると、予約しようとする会社がどういう状態か調べても損はありません。航空会社の株もいろいろな情報で動きますが、その手の情報を航空会社利用の際にも参考にすべき時代になっているようです。

 

マイレージプログラムに起因する損害

全く違う方面から客の損害が増えている原因に、マイレージプログラムの肥大化があります。マイレージを貯める人、上級会員になる人は国家庇護の時代と比べて、相当増えています。航空会社が突然破たんしても、航空券なら一回の旅行分に限定される場合がほとんどですが、貯めた何十万マイルはゼロになります。また上級会員だったら、1年にもわたる優待の権利も霧散します。生涯会員だったら、「一生の安泰」が一夜にして消えます。

 これは結構大きな損害なのではないでしょうか。マイルも特典も料金先払いの側面があることを忘れてはならないと思います。

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この種の損害には、バリエーションがあります。ご想像の通り制度変更はその例。よくある改悪です。今週 ANA がエコノミークラスの座席指定を一部有料化することを発表しましたが、ここに含めてよいと思います。何せ SFC が AMC 非会員と同じ扱いなのですから。

 しかしながら、これはバランスが取れた賢いやり方に見えます。Star Alliance 加盟各社の上級会員、Star Alliance Gold 会員については何も述べられておらず、SFC と同じ扱いになりそうです。すると SFC 会員は ANA に裏切られたとは感じないはず。プラチナとダイヤモンドは違うと、あきらめる習性ができ上がっています。今までも少しずつ少しずつ差をつけられてきましたから。一方、他社 Gold 会員の視点では ANA は座席指定料を取るから避けるとか、指定料金も航空券価格に含めて比較すべしという、選択の材料に過ぎません。サーチャージと変わらないのです。SFCを邪険に扱うと JGC への流出が気になりますが、今回も最小限でしょう。見えにくい値上げを堂々と行い、客の囲い込み機能が失われないなら、ANAとしては無問題。会員あしらいが非常に上手。

 

いずれにせよ、こんなことはいつでもどこでも起きます。生涯会員なんてリスクが大きすぎ。興味を持たない方が身の為のようです。

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また上級会員も、航空会社に強い思い入れがある場合を除くと、あくまでもオマケと割り切らないとやってられません。

動きがありそうな事例

日本に近いところでは、アシアナの身売りが決まったようです。債権者は会社を解体して債権回収するつもりはなく、事業は続けられるそうですから、フライトを利用する分には心配なさそうです。ただ長い目で見ると、路線網縮小とサービス低下の可能性は高く、アシアナをよく使う Asiana Club 会員は覚悟あるいは決断が必要かもしれません。

 

また中国南方航空SkyTeamを脱退、アメリカン航空と提携を深めている現状から、やがて oneworld に加盟、その結果キャラが被るキャセイoneworldを出て、Star Allianceに入るなどと予想する人もいますが、こちらの方はエコノミストによる経済予想程度に確度が低くそうです。航空券の購入や Marco Polo Club との付き合い方は、いまのところ考え直す必要はない気がします。