バス代わりの飛行機

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

CX581:CTS-HKG 出発遅延18時間(その2)

札幌で情報収集

最初に判断が必要なのは、

・旅行を中止して航空券の払い戻しを受ける

・旅程がどうなるかわからない旅をとりあえず始める

からの二者択一です。新千歳空港のターミナルビルは、23:00 ~ 5:00に閉鎖されます。23:00までにCX581便の運航が再開される可能性はほぼゼロ。個人としては、とにかく情報収集しなければなりません。こういう状況ですので、空港の無料 Wifi で札幌市内のホテルを予約、さっさとチェックイン。

 

虚実が入り乱れ、時系列が混乱している情報をツイッターでかき集め、ふるいにかけた後に統合、自分なりに分析を行いました。

 香港国際空港のランドサイドで行われているデモに、各地から人が参加するという情報を得た当局が、「空港閉鎖」でこれを阻止したという説がありました。この説が間違っていたとしても、当局が水面下で謀略を阻止した可能性が高いようです。何が謀られたのか、一般人が知ることは難しいのですが、そんな事より重要なのは、空港利用者が直面するだろう事態の予測。乏しい常識も出動させ、次のように判断しました。

 

(1) 旅行客はチェックイン時、空港から街への移動時にデモ隊の影響を受ける

(2) エアサイドは機能しており、深刻な影響を受ける可能性は高くない

(3) 安全でも閉鎖空間なので、水や食糧、エネルギーの供給が問題になりうるが、デモ隊が空港を兵糧攻めする理由はなく、その実力もないのでこの点は心配無用。

(4) そもそも広東人の世界で、食糧に困るという事態は想像しにくい。

(5) フライトは、後ろ後ろに変更される可能性が大きい

 

旅行者全体に対するリスクを基に、自分の行動を決めるのは愚かしいことです。事態の予測は、個人の状況と対照する必要があります。今回の場合、乗継ぎ客なので、(1)のリスクはゼロにできます。日程の縛りも決定的ではないので、(5)も気にする必要がありません。

 

したがって全体を払い戻すオプションより、旅を決行する方が良さそうだと判断しました。イレギュラーがブログネタとして美味しいことも作用しました。

 

方針決定したら、香港に関心が高い「21世紀の松尾芭蕉」たちがツイッタ―で何をつぶやいているかが気になり始めます。しかしそんなことより就寝。

 

翌朝

といっても、目覚めは3時に訪れました。寝ている間に、CX581便の出発時刻がキャセイから届いていました。メール着信もあります。大幅遅延の扱いになるようです。

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普通に新千歳空港に向かい、普通にセキュリティチェックを受け、普通に出国します。ラウンジは無視して、普通に搭乗します。

 

ゲートは変わりましたが、機材は昨日と同じ。置いていった新聞もそのままマガジンラックにさしてありました。型通りの清掃すら行うことはなかったようです。

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ウエルカムドリンクは、やけっぱちの Champagne。

 

観察したところ、搭乗客は昨日より減ったようでした。日本語を喋る客室乗務員はいません。日本人の客も稀。香港に帰る人はともかく、香港に行く人は中止を選んだのでしょう。

 ドアクローズ、安全のビデオ etc.は型通り済みます。そして今度こそは、プッシュバック開始。

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もう一機キャセイが停機しています。CTS-HKGが2便ある日でした。

 

柔らかくもすがすがしい日光。夏の北海道はこんな感じですね。やっぱり香港行きは中止して、北海道にいればよかったと後悔しますが、後の祭り。

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機内サービス

どんどん高度を上げます。搭載した燃料で香港に着陸できる目処がついたということですね。

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南側から飛来する便は、進入前180度旋回することの多い新千歳ですが、南側へ向うフライトなので、離陸した方向へ進行します。すぐに津軽海峡に到達するわけです。

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飲食物のサービスが始まります。最初に配られたのはカニイクラ・ウニ重。

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カニ50%、イクラ20%、ウニ10%、紅生姜10%の被覆率。量は駅弁基準で7割程度。豪華なオードブルですね。しかし機内サービスはこれで終了でした。ナッツもハーゲンダッツ白い恋人もなし。さすがに到着前に飲み物をトレイに載せて回っていましたが、簡素なものです。今日は 2,000マイル、5時間のフライトを実施する大型機ビジネスクラスです。驚きました。

 実は出発前、「機内食に十分な準備ができなかったことをおわびします。」という機内アナウンスがありましたが、経緯が経緯なので当たり前だと軽く流していました。しかし、あのキャセイパシフィックがわざわざ予告するのです。それ相応の「驚きの提供」があるはずで、それが見抜けない Pechedenfer はまだまだ novice flyer。

 量が少ない機内サービスと言う意味で、稀に見るフライト、貴重な体験でした。

 

ちなみに容器のふた。

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北海道では、節足動物が骨を持つようです。

 

イレギュラーならではのメリット
通常このフライトは、すぐ日没になります。普段は識別ができない地形が観察できます。これは佐渡でしょうか。

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これは江田島周辺ですね。いつの間にか日本海側から太平洋側へ抜けようとしています。

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ずっとサービス無しの放置状態でした。この路線では通常時でも、飲食サービスは最初の3分の1の時間に集中し、その後は放置なので驚くにはあたりません。

 

問題なく昼間の香港に到着。ただしリスケジュールされた時刻から、さらに30分遅延しました。

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この後はCX659への乗継ですが、時間は十分あります。この段階で心配することは運休。上階に昇ってもすぐにはわからないと思いますが...。

 スケジュール混乱の程度と札幌で何もできないことを考えると、香港で係員が乗継客を待ち構えているはずと予想していました。確かに予想どおり、到着ゲートで係員が待っています。しかしわずか3件。1件はPechedenferの分です。やはり搭乗していたのは、ほとんど香港に帰る客だったようです。

 

まとめ

詳細は省略しますが、この非常事態に際してキャセイパシフィックが行った搭乗便の再手配、再々手配は見事でした。イレギュラー発生時における予約変更や搭乗調整に関しては、抜群の安定感があります。優秀なシステムに人海戦術が上手に融合されており、他社の追従を許さない気がします。

 人海戦術に関しては日本も得意なはずですが、日系の航空会社では現場が停滞、混乱しがちです。十分な数のスタッフが導入されているものの、客層に合った対応ができていない気がします。

 一方で機内食のグレードダウンは顕著でした。機内清掃も一からやり直したわけではありません。札幌は人員が少なく、手厚いバックアップはできないというのが本音ですか?

 本来消費される予定だった機内食は全て破棄されたのでしょうね。もったいない限りですが、食中毒を防止するには仕方ないのでしょう。

 

再確認できた原則は

 

・システムが立派な会社でも、支社(現場)ではできることが限られ、その場でできないと判断される場合は、本拠地に(で)掛け合うこと

 

です。世評ではキャセイは日本で大抵のことを処理するようですので、今回は極端なケースだったのでしょう。「ここでできることはない」と言われました。こう書くとキャセイの社員が冷たく突き放したように聞こえますが、事実は違います。Pechedenferができるかできないかを明確にするように促しました。はっきり回答してくれると、時間の節約になるので助かります。

 

イレギュラーが起きると、その会社の特徴が顕在化します。客としては興味深い限りです。しかし一歩離れてみると、客にも同じことが言えそうな気がしてきました。「イレギュラー発生時の行動でその人の本質が見える」なんて、安っぽいライターが書きそうですが、そういうものです。意外なことに Pechedenfer は好奇心の塊でした。