バス代わりの飛行機

Tipps für Flugreisen

EU261の補償金支払いを渋るメジャーキャリア

EU内に本拠地を持つ航空会社は、LCC だろうが、レガシーキャリアだろうが適用される規則があります。EU域での着発フライトで、大幅な遅延や運航の休止があった場合、搭乗客の請求に従い、一定の補償金を支払わなければならないというもの。人呼んでEU261。

EU域内発着のフライトを利用する者の権利 - バス代わりの飛行機

 

消費者保護と、航空会社のモラルハザード防止が目的ですが、まじめに対応する会社とそうでない会社があるようです。後者は意外に多いようです。

 

おそらく全く遵守する気がないアドリア航空

onemileatatime.comにも記事があったので、すでにご存じの方も多いかと思いますが、アドリア航空はこの規則を無視し、250 €を払い渋り続けたため、ウィーンで一乗客から訴えられ、敗訴しています。そして強制執行されることを恐れたために9月5日、ウィーン便を一便キャンセルしたとのこと。

Adria Airways cancels one rotation to Vienna, Austria over unpaid EU261 compensation - Aviation24.be

アドリア航空と言えば、スロベニアフラッグキャリアスターアライアンスに加盟する立派なフルサービスキャリアです。このニュースの情報源は、スロベニアの情報サイト。警察がウィーン空港でこのフライトの到着を待っていることが判明したため、キャンセルしたと伝えられます。リュブリャナ空港で一旦搭乗した乗客を全員降機させたということですから、パニック気味の対応です。

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機材は British Aerospace 146 なので、定員100人ぐらい。つまり EU261 を前提に考えると、このキャンセルにより潜在的な補償金は最大100倍に膨れ上がります。報道が事実なら、アドリア航空は EU261 を守る気がさらさらないことを宣言したも同然です。

 

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モラルハザード

残念なことに、こうした状況はアドリア航空に限りません。Flyer Talk他の投稿系、質問系の情報サイトで補償金の払い渋りが数多く見つかります。

 

TAP ポルトガル航空のケースでは、たらいまわしにされ、話が全く進まない様子が伝えられます。

How do I get someone at TP to deal with my EU261?? - FlyerTalk Forums

 

フィンエアーも EU261 の補償金がらみでトラブルが多い会社のようです。

Finnair and the EU261 dodge. – Business Traveller

Finnair delay compensation is a nightmare - Air Travel Forum - TripAdvisor

Get the message Finnair: staff falling ill is not ‘extraordinary’ | Money | The Guardian

遅延や運航休止を受けた旅行者を信じれば、補償金支払いの徹底回避はこの会社の社是のようです。

 

アドリア航空もそうですが、財務内容が良くない航空会社は非常に多いのです。そういう会社は、EU261が厳密に処理されるとたちまち立ち行かなくなりそうです。一方、EU261は搭乗者の請求ベースなので、当局は公表に必要なデータを持たず、問題のある航空会社が公表されることはありません。制裁金に踏み込むなどもっての他。現実には航空会社の倒産が続いては、当局も困るというのが本音なのでしょう。確かに欧州社会にとって、あまりよい結果にはなりません。EU261を遵守する気のない航空会社には、こうした事情を見越した甘えがあるようです。

 

欧州世界がそのように回っているなら、消費者は性悪説の立場に立たざるえません。航空会社をまず疑い、情報収集でリスクを軽減するしかないようです。

 

一方で良識的な会社

一方、EU261を守るとどうなるかに関しては、ルフトハンザの記事があります。

Lufthansa passenger compensation cost 500 million euros in 2018: executive - Reuters

2018年はこの規制のため、乗客に支払った補償金が総額5億€になったというもの。カタログ価格でA380一機分ですね。輸送規模がアドリア航空とは異なるものの、5億€は大した負担です。2018年のルフトハンザグループの純利益 22億€と比べてみると、EU261 の支払がどれだけ重く圧し掛かっているかよくわかります。

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ブリティッシュ・エアウェイズとルフトハンザは、EU261を遵守しているようですが、一番大きな理由は、社会的なインパクトが大きいためでしょう。しかしながら、ある程度利益を上げている会社という点も忘れてはいけません。つまり安心な会社とは言え、乗客はそれなりのコストを払っています。

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EU261の遵守は、消費者および社会に対する信頼性の上から非常に重要です。しかし世に跋扈する航空会社ランキングは、この観点を考慮しているようには見えません。ランキングなんて、お遊び以上のものではない根拠の一つです。

 

「安かろう、悪かろう」は、 LCC では知らしめる努力が見られ、規制に関わらない範囲での対応の悪さは消費者も納得すべきです。日本でもそういうコンセンサスが形成されつつあります。そうなっていないのが、業績の良くないレガシーキャリアなのかもしれません。EU261に関しては情報開示が(社会システムとして)十分ではないため、噂が出る会社は薄暗い商売をしている印象を与えます。これはこれで問題です。