バス代わりの飛行機

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隔年修行(その1)

プログラムの年度

マイレージプログラムでは、搭乗の多い会員に上級資格を与えて区別し、厚遇します。搭乗量を定量化する方法は、プログラムによって大きく異なります。搭乗距離と予約クラスの二因子を掛け合わせたもの、この搭乗距離の基準に支払総額の基準が加わるもの、ビジネスクラス以上の支払い総額だけのものと、これでもかと言うぐらい違います。この搭乗実績を計るパラメータは、細かく見ていくと会社によってさらに異なります。この複雑さはブログやら、掲示板やらが乱立する原因になっています。

 一方で搭乗実績のパラメータの積算期間は、比較的単純。多くのプログラムが

 

今年度の搭乗実績で、次年度の会員資格が決まる

 

というシステムを採用しています。この単年周期のプログラムでは、会員資格の期間と次年度のための搭乗積算期間の関係についてバリエーションがあります。大きく分類すると次の3つのパターンになります。

 

(1) 資格期間と次年度のための搭乗実績積算期間は同じ

エーゲ航空 Miles + Bonus のパターン。11月23日に(次年度のための)搭乗積算は終了、(今年度の)会員資格も終了。旧プログラム Miles & Bonus 時代からゴールド会員を継続している古狸の場合、このパターンを毎年繰り返します。Miles + Bonus 時代の新規会員は、人によりサイクルの終了日が異なります。

 

(2) 資格期間は、次年度の搭乗実績積算と同時に開始、遅れて終了

エールフランス Flying Blue のパターン。(次年度の評価のための)搭乗積算は 1月 1日に開始、12月31日終了。一方で会員資格は、1月から次年 3月までの14ヶ月続きます。Flying Blueでは、基本的には全会員に共通の期間が適用されますが、これは会員によって異なるプログラムもあります。

 

(3) 資格期間は、次年度の搭乗実績積算期間同じ長さ、数ヶ月の遅れ

ANA マイレージクラブのパターン。その年の搭乗実績は1月1日から12月31日に積算されますが、その実績による会員資格期間は、次年 4月から次々年 3月です。基本的には全会員に共通の期間が適用されます。

 

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制度はできる限り単純であるべしという基本からすると、(1) が優れています。しかし会員数の大きいプログラムでは、(2) もしくは (3) のパターンが主流。その理由は、恐らく以下の通り。

 資格期間の開始・終了日を次年度の積算期間と一致させると、年度開始からしばらくの間、資格エラーが多数発生します。マイル加算の遅れ、マイル誤処理の修正、クレームの処理などは、マイレージプログラムでは不可避ですが、(1)のやり方だと、年度替わりにこれらの処理を待たずして会員資格を決めます。するとある一定割合で、一度出した資格を後日修正することになります。航空会社が二度カードを送ると、不正使用の原因になります。またエラーの状態で搭乗した場合、本来提供されるサービスが提供されないことがあります。航空会社はさらにこのクレーム処理が必要となり、泥沼にはまります。期間を後にずらせば、修正する余裕ができます。

 

年度のズレを搭乗の節約に利用する修行僧たち

ところで殆ど全てのプログラムで、

 

搭乗実績の積算年度途中に基準に到達すると、データ処理後すぐその会員資格が発生

 

する制度が採用されています。年度の残存期間、別の会社に搭乗が移ることを防止するためだろうと思います。

 これは当然の措置です。もともとマイレージプログラムは、自社を継続して利用してもらうことが目的。それこそが存在理由です。一年というサイクルは意味を持ちませんし、会員実績を評価する単位が、僅かたりとも会員離れを起す原因になってはいけません。「今年は虎年だったから、タイガーエアにしか乗らなかった」とか、「来年は辰年だからキャセイドラゴンだけの利用だ」などという客を縁起担ぎから解放し、自社だけを利用させるための道具なので、年度の切り替わりが影響しては本末転倒なのです。

 

以上のシステムはマイレージプログラムの性質から生じたわけですが、会員資格を毎年維持したい人には奇妙な事実が出現します。上に書いた (2)、(3) の年度パターンのプログラムでは、本来単年サイクルにもかかわらず、二年に一度の集中修行で会員資格が連続維持できることになります。プログラムが想定する会員資格を年度更新する場合に比べ、搭乗量は半分で済みます。

 Flying Blueを例に挙げて説明します。平会員(Blue会員)が 2019年 1月 1日から 3月中旬までに 100 XPの搭乗を行うと、データ処理後 (普通は搭乗の約1週間以内に) Silver 会員になります。これは本来 2020年 1月から 2021年 3月までの会員資格を前倒しで獲得することになります。その結果、 2年間会員資格が続きます。次の搭乗は 2021年の 1~3月になり、再び 2年の会員資格をゲット。確かに毎年更新する場合比べ、搭乗量は半分になります。

 

「二年に一度の修行で、ダイアモンド会員を維持」などという見出しは、こういう方法を解説した内容を伴っているだろうと想像します。

 

下に抜け駆けあらば、上に対策あり

完全に制度の裏をかいています。ダイヤモンド会員(以下会員)維持ともなると、普通は年100万円を超える航空券を買う羽目になります。これが二年に一度で済むなら、平均で年間50万円以上節約。一方会社の立場では、一人あたり年間50万円超の売上げが消えます。こんなことが流行したら一大事です。当然のことながら、すでに隔年修行への対策は実施されています。

 

ANA では、搭乗実績が資格達成基準を超えた場合でも、資格年度の開始以前(翌年4月)には、プレミアムメンバー事前サービスを提供するに留めます。事前サービスでは、その会員資格で受けられるサービスの一部が留保されます。

 とは言っても、アップグレードポイントとライフスタイルマガジンを除くと、年に一回贈与されるタイプの特典が「おあずけ」になる程度。隔年会員修行と毎年マジメに会員更新とでは、かかる費用は大幅に違いますが、特典の差は小さいのでした。

 また細かいことですが、毎年 4月中旬までは事前サービスは行われません。事前サービス中でも会員であると強弁を振るう人でも、隔年修行では会員の空白期間が必ず生じます。「二年に一度の修行で会員を維持」には、少しウソが混じります。

 

JALのアンチ隔年修行オペレーションはさらに徹底しています。この会社、三期間を設けて、サービスを増やす特典熟成法を考案しました。言ってみれば、ダイヤ三段仕込 (サファイア三段仕込、クリスタル三段仕込)。FOPが基準に到達した栄光の日から、1週間後より 1S (ファーストサービス) が開始します。そしてステータスカードが到着した記念の日から、 2S (セカンドサービス) も加わります。さらに本来の資格期間が開始する晴れの日から 3S (サードサービス) も始まり、ようやく一人前の Fly on ステータス会員となり、世に顔を向けられるわけです。

サービスステイタス一覧 - JALマイレージバンク

 

JALが狡猾なのは、本来明確であるはずの資格期間ー特典内容の対応を完全に崩した点に現れます。つまり隔年修行なんて概念は、マイレージバンクには存在しないように見えます。あからさまに隔年修行へ対策しましたとは見えないところがミソ。

 

なお JAL の場合、前年度 Fly on ステータスがあった会員には、国内線のFOP 2倍キャンペーンを行っています。会員が指定する一月に JAL グループ国内線に搭乗した場合、FOPが2倍になるという例のあれです。乗る気を起した前歴がある会員の乗る気を呼び起こそう、持続させようとすることが目的ですが、これは隔年修行への対策にはならず、むしろ助長するかもしれません。(meganeさんご指摘ありがとうございました。)

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このテーマ、書き始める前には短くなり過ぎることを心配していたのですが、予期に反して長くなりました。分割します。