PECHEDENFERのブログ

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隔年修行(その2)

ある年度の会員資格の期間が、次年度の資格を決めるための搭乗積算期間より遅れている、あるいは長く続くために出来た抜け道。それが隔年修行。期間のズレは長くても 3ヶ月ですが、二年に一度その期間に一年分の搭乗を集中して行い、二年間の会員資格の連続維持を可能にします。これはマイレージプログラムが顧客囲い込みに努力する中に咲いたあだ花で、航空会社にとっては嬉しくない搭乗パターン。しかし身から出た錆のような話なので、ほどほどに放置しているように見えます。

 

海外の会社の場合

Flying Blueでは、その年に余剰となる XP は次年に繰り越されます。隔年修行を行うとこの余剰 XP は利用されることなく消滅します。さらにフランス、オランダ住民向けには、毎年 XP を付与するクレジットカードや有料会員制度があります。合計すると 80XP/年になったりします。こうした状況では、隔年修行は流行りそうにありません。ANAの事前サービスや、JALのダイヤ三段仕込のようなややこしい仕組みもないようです。

 逆に言うと、日本ではフライングブルーの隔年修行に価値があるかもしれません。狙い目は、XPに余剰を出さずに到達する Gold 会員。CIのビジネスクラスの利用で、NRT-TPE-HKG を3往復。かかる費用は30万円強 for 2 years。欧州内で時間が取れるなら、AFのパリ乗継ビジネスクラスを利用。3往復(12搭乗)でかかる費用は、15万円強 for 2 years。

 生涯プラチナ会員をめざすなら、隔年での 300 XP 獲得は無意味です。毎年 300 XP、あるいは隔年で 600 XP 獲得する必要があります。会員資格が続いている状態は、会員資格を途切れなく更新していることとは異なります。

 

ブリティッシュ・エアウェイズの Executive Club でも、早期に資格に到達した会員を処遇する時の「特典削減」はなかったはずです。搭乗とデータ処理が終わったら、即会員資格を享受できます。この会社は Flying Blue と同じ (2) のパターンなのですが、avios の初積算が起きた月によって、会員年度が異なります。積算終了は常に8日のようです。(前年度の)会員資格はその次の月まで有効。つまり隔年修行で会員資格を持続させる場合、修行搭乗期間は約7週間。ゴールド会員の場合、この短期間に BA4搭乗を含めた 1,500 の tier points を積算することになります。無理ではありませんが、かなり忙しくなりそうです。

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欧州の三極を構成するこれら二つのFFPは、隔年修行僧への対策は考えていないように見えます。そんな発想をする会員は少ないのでしょう。極東の一部の会員がそんなことを行っていても見逃されそうです。制度全体に手を入れるのは大変ですから。

 

デルタ航空の SkyMiles では、搭乗積算の期間は毎年1月1日から12月31日。そこで到達した会員資格は翌 1月 1日から翌々年 1月31日まで有効です。確かここも基準に達したら、データ処理後すぐに会員資格がもらえたと思います。すると隔年修行ができますね。2年に一度とはいえ、30日以内に15,000ドル以上航空券を買い、デルタで140回飛び回るなんて強烈。実践している方がいらっしゃったら、尊敬します。

 

文化的な側面

隔年修行。一部の人(Pro)にとっては真剣な考慮に値する興味深い方法、あるいはすでに実践している優れた方法なのでしょう。憧れの会員が、バカ正直な連中の半分の出費で維持できるなんて、究極のPP単価抑制法に見えます。

 一部の人(Anti)にとっては、様々なレベルでバカな発想に見えることでしょう。普通に乗りまくっている修行僧やそれに近い人たちには、余裕なさ過ぎ、血眼になり過ぎに見えるはずで、搭乗を楽しまず何のため?となりそうです。業務で年間150回も搭乗させられる社蓄フライヤーには、会員というステータスにしか自分の価値を見つけられない哀れな連中と映るかもしれません。知識があり、他人と異なるやり方、自分自身の工夫を尊ぶ高踏派は、実は隔年修行僧とメンタリティに似たところがありますが、はるかに辛辣なことを言い出しそうです。

 その他の大多数(Muggle)にとっては、第一に奇妙であり、メカニズムを理解すると世の中の知識が増えたと感じられるような内容。そもそも修行自体が馬鹿げていて、心情的には全く理解できない発想のはずです。〆の言葉は、おそらく「まあ、趣味の世界だから...。」

 

「2年に一度、1月から3月間集中して搭乗し、その他の20ヶ月以上の期間は何をしているのか?」は、立場の違いを超えて共通して抱く疑問だと思います。それ以外の期間に搭乗がないのでは、会員の資格の維持自体が目的となっており、本末転倒です。

 本当にそうなら、会員であることだけが自己を肯定する拠り所になっており、つまらない人生を送っている可能性が高いと思います。しかし大部分の隔年修行僧は、おそらく違います。

 二年に一度、集中搭乗する以外は、単なる旅好きが多いのではないでしょうか。普通にエコノミークラスで、年に1、2度の海外旅行を楽にするため、隔年修行もするというケースは結構ありそうです。こういう場合に、金銭的な合理性を持ち出してあれこれ言っても意味がありません。

 マイル収集のみに集中する生活に疲れを感じ始めた陸マイラーたちが、人生に潤いを見つけるために隔年修行を始め、そこに見事に「はまった」みたいな展開もありそうです。こんな場合、隔年修行時以外は平凡な陸マイラー。貯めたマイルで年に数回ハワイ旅行でしょう。

 

経済合理性を欠く奇妙な行動も、広く見られるようになれば文化です。隔年修行も日本の空を特徴付ける個性。他人に危害を加えるようなことがない限り、ポジティブに捉えた方が良いはず。

 

理論と実際

ところで隔年修行を理論にとどめず、実践する人はどのぐらいいるのでしょうか。修行僧は JAL マイレージバンクと ANA マイレージクラブが多いと考えられます。すると隔年修行僧の活動期は、1月から3月になります。

 

羽田朝第一便の到着先のゲートで、乗継案内に羽田行きがある率を数値化

 

して、問題の四半期を他の四半期と比較すれば、隔年修行に実在性があるのかどうかぐらいの判断はできます。

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人数まで書いてあったら、修行僧全体に対する隔年修行僧の割合まで予想できるのですが、ちょっとそれは難しそうです。隔年修行の実態を浮き彫りにする方法は、何か他にあるでしょうか。