PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

陸上部と大会サポート、イメージ形成

走るという行為は、なぜかマイレージプログラムと相性が良いようです。普段は燃料を焚いて宙を移動している会員たち。地につけた足で自ら前進することで心の均衡を保つかのようです。

 

エールフランス Flying Blue の「陸上部」

エールフランス Flying Blueにはゴルフ部と陸上部がありますが、後者の人気は不思議と高いようです。

Air France Running

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陸上部と言っても朝練があるわけではなく、エールフランスが無料で提供する情報プラットフォームと、その中のコミュニティが機能するという仕組みです。いわばオンライン陸上部。このプラットフォームを利用しての自主トレーニングと、大会への自主参加が部活動の中身となります。

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Flying Blue の会員総数は北欧3国の人口ほどもあるので、陸上部だけで 43,449も部員がいます。エールフランスの就航地だけだとは思いますが、魅力的なコースの紹介、マラソン大会の案内があり、GPSと連動させた走破記録を保存できる記録帖が提供されます。

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関連スポーツ用品を Flying Blue Store で売っていて、そこへ誘導するあたりは、ちゃっかりしています。これはゴルフ部も同じ。

 

こういうところで部活を始めると、なかなか抜けられないでしょう。走っていれば、来期の会員資格の維持などバカバカしくなること間違いなし。しかしマイレージプログラム改悪を穏便に済ませる効果を狙った目眩ましだとの勘繰りは、いくらなんでも想像が過ぎます。

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マイレージプログラム内オンライン運動部は面白いプラットフォームですが、「旅先では違った気分で楽しむスポーツ」にしか設部されないでしょう。次に出来るとしたら、Air France Équitation (乗馬部) とか Air France Cyclisme/Cycling (自転車部) ではなく、Air France Triathlon (トライアスロン部) に違いありません。

 

ギリシャ観光の切込み隊長エーゲ航空

エーゲ航空の Miles+Bonus は小さなプログラムで、陸上部はありません。それで自社会員を地元のマラソン大会に誘導、国家の主要産業である観光を応援します。

 搭乗すればわかりますが、この会社のギリシャ売り込みは尋常ではありません。大きなイベントには、外国から人を送り込むキャンペーンを行うのは当たり前。もちろん旅客が増えれば儲かるのは事実でしょうが、それを感じさせないところが良いところ。

 ちなみにアテネラソンに参加すると、マイルがもらえます。この大会は毎年11月の第2日曜日に行われるようですが、2019年大会では最大 4,200 miles が参加するだけでもらえます。なぜ4,200 milesかというと、マラソンが約 42 kmだから。

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この大会にはフルマラソンだけではなく、10 km、5 kmのコースもあります。地上でも距離に比例して獲得マイルを変えます。1 km あたり 100 milesです。フライトの160倍と搭乗するよりはるかに高効率。

 遊び心が伴っています。マイレージプログラムらしい取り組みです。

 

皆さんよくご存じの日系2社

ラソン大会の後援になったり、大会開催に便乗してパックツアーを販売したりという取り組みは、日系2社も盛んに行います。ANAトラベラーズが NAHA マラソンのオフィシャルツアーを販売するのは良い例。マラソン大会は参加者が多いので、独自の旅行商品もビジネスになります。

 2016年の東京マラソンでは、参加者に SKY コインをプレゼントしたようです。ご親切に利用法までご教授下さりました。しかしマラソン大会に対する ANA の姿勢はぼやけています。「ANAマイレージクラブの参加サポート」とでも大書すれば、大会運営サポートと会員サポートを印象づけ、社会的に存在感を示すことが出来たのに、せっかくのチャンスに何をやっていたのでしょう。値引きを複雑にするだけと感じる会員がいたかもしれません。

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東京マラソンでは、オフィシャルパートナーになったり、客室乗務員を参加させたり、年によって取り組みが異なるようです。ANA が大会を利用して注目を集めようと努力しているのは明らか。マラソンANA のイメージが重なるように持って行きたいわけです。しかし会員を中心にする ANA 顧客の関心はどうなのでしょうか。

 ANAの乗客・会員というとある種の固定観念が付きまといますが、ロードワークで汗をかいて、シャワー後はスッキリとした出で立ちで仕事(朝型)やディナー(夕型)に向かうなどという「生活感」*は、ピンと来ません。現実は多様なはずですが、ANA から連想されるのはゴルフの打ち放し、バッティングセンター、あるいは運動量はだいぶ落ちますが、カラオケだとなお「それらしく」**見えます。

 もちろんこんなのはステレオタイプですが、ANAのイメージ形成に向けた取り組みは空回りしている気がします。たぶん顧客層に実直にアピールする数多くの広告やキャンペーンが乗客・会員のイメージを形成しており、それが上記ステレオタイプの原因になっています。結局いつもそうですが、原因は会員の真実にはなく、ANAのブランド形成能力の欠如にあります。

*アメリカの都市郊外の住宅地に居住、健康に関心が高く、何事にも前向きに取り組むホワイトカラーの日常。これもある種のステレオタイプで、こざっぱりした良いイメージが何となくできてしまっています。

**:言っちゃなんですが、アメリカ都市郊外型の無色無臭な生活より、こういう日本で日常に見られる生活の方がはるかに文化を感じます。

 

対する JALホノルルマラソンで見られるように、上手にイメージ形成しました。近年ではトライアスロンでも、競技団体をサポートするためにマイル寄附のシステムを作り、 ブランド価値の向上に努めています。JAL の場合、諸相が分断され、相互に干渉しないところに秘密がありそうです。イメージ形成については、ANAより何段か上手です。

 

しかしこんなレベルで ANAJAL の優劣を議論しても仕方がありません。共に便乗商法か、せいぜいスポーツを利用した自社イメージ形成***への利用。もう一捻りして、ありきたりを超えて欲しいところです。

 

***ANAマイレージクラブに外国人会員を多数抱え、東京マラソンへの参加者を SKY コインでサポートする旨、立派な英語で大々的にアピールできていれば、エーゲ航空並みの取り組みになっていました

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