長崎空港は大村市の沖合の島を丸ごと使って建設されました。なかなか特徴的な空港なのですが、空弁にも地元の料亭が個性的な逸品を提供しています。大村の食文化がストレートに味わえます。玖島城内に竈を起こして久しい梅ヶ枝荘がつくる大村ずしです。
中身は一見変哲のない押し寿司。高価な素材を使うわけでもなし、見た目で主張するわけでもなし。
ひと塊に見えて、実は4つに切り分けられています。驚きというほどのことはありませんね。しかし圧縮度といい、具の構成といい、独特。押し寿司と言えば、九州各地で木型を使い、力まかせに圧縮する風習があるようですが、もともと陣中食なのでしょうか。バラバラと錦糸卵が落ちることは別にして、本体はおにぎり並みに自立性があります(= self-supportingです)。さらにこの大村ずしには、特筆すべき重量感があります。武家の食文化の伝承、藩おかかえの台所番の技が脈々と受け継がれているなんて妄想もしたくなるというものです。
個人的な好みになりますが、短距離の旅程では鉄道でも航空機でも、幕の内弁当のようにバランスが取れた一食よりも、押し寿司、サンドイッチなどのファーストフードが良いと思います。旅と食の調和の問題です。そういうこともあり、このジャンルでの秀逸な郷土食は嬉しい限り。
地元ではおそらくなじみの食材と調理法のはず。それでもまじめに作ると他所者には逸品になるという例でした。価格は800円ぐらい。機内で食べるにしても、空港で食べるにしてもおすすめ。長崎-大村旅行の最終楽章にふさわしい強烈な印象を残します。ただしお土産にする場合は、こういうタイプの寿司をよく知る方へ。
(追記)
この記事のことを長崎の DrK 先生に引用いただきました。同先生のツイッターです。
https://twitter.com/limken21/status/1206020151222472704
まぎれもない郷土料理です。地元の方の理解は深く、旅行者とは異なる視点で重要なことを補足していただきました。ありがたい限りです。また断面がどうなっているかを紹介するきっかけができました。こんな感じです。
写真は撮っていたのですが、ネタのボリュームの割には数多く載せることになるので、気が引けておりました。
あらためて確認すると、上層は厚めですね。真上から撮った写真より食欲をそそりそうです。