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Tipps für Flugreisen

ANA BAGGAGE DROP SUITE(後編)

(4月1日季節の便り、つづき)

 

現実に何が起きるかANA は多方面から分析した。AIは人と荷を区別する。自分の体重を荷物の重量に付け替えることはできない。するとできる限り体重を軽くするため、裸で計量を行う客が必ず出る。80 kg以下 (国際線の場合) では追加料金不要なので、そのようなことを考える者の多くは過体重、肥満である。

 ANA は顧客に多くの修行僧(注1)を抱える。そのうちの半数程度は、過体重および肥満だと ANA は考える。体重のせいでPP単価(注2)が低下するという事態に、旅行直前に絶食絶飲、下剤服用、挙句の果てに剃髪剃眉まで行う修行僧が多数出現する恐れがある。そうした『計量のみがプロボクサー並みの修行僧』は、全裸で体重を量る可能性が極めて高い。

 さらに修行僧は、頻繁に空港、旅客機を利用する。現在の自動預入機の形状だとどういう結果になるだろうか。一般客の眼には、ANA はいつ利用しても裸体の肥満だらけに映るだろう。新料金制導入に合わせて、個室仕様の自動手荷物預け機を導入、過剰な肉を衆目から隔離するのは当然であった。

  

一方で搭乗ゲートの個室化は困難であり、ANA もその改造は考えていない。肥満の搭乗客が AI のチェックを意識するがあまり、手荷物預入れ時の状態 (=裸) でゲートを通るのは問題である。だからと言って、裸で計量を行い、着衣にてゲートを通過すると、データ不一致になる。このジレンマにはどう対応するのだろうか。

 計量が裸なら、ゲートも裸で通る必要があるのかどうか、ANA に疑問をぶつけてみたところ、

ASS ARSE が記録にない薄着をゲートで検出しても、AI が区別しないよう設定する予定です。』

との回答が得られた。ANA を信じるなら、優先搭乗列がプレミアムメンバーの豊満な裸体で占められることはないだろう。 

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制限区域内でも着衣が望ましい

裸体で計測、着衣で通過は、一種の抜け道であることには変わりない。原理的には回避困難な問題だが、ビジネスチャンスにもなりうる。変な話だが、解決不能だと匙を投げれば、自然主義者(naturist, nudist)の注目を集めることは間違いないのだ。彼らの旺盛なバカンス需要の呼び水になる。(注3)しかし空港内、機内では、すべての人間が着衣で過ごすべきだと ANA は考えているようだ。

 

BUTTS から放り出された(注4)地上係員たちは、チェックイン後の客の着衣の確認、それに伴う諸サービス、搭乗ゲートのデータ不一致時の対応にあたる。機械と人との間のインターフェイスの習熟には時間を要したらしい。

 

旅行スタイル、旅行ビジネス、旅行の文化も新料金制の影響を受けそうだ。日本での ANA の注目度は高く、利用者も相当な数にのぼるので不思議はない。

 

ANA BAGGAGE DROP SUITE では、BUMBOTTOM、どちらのモードでも ASS ARSE がポケット内の物体を着衣から区別することはない。そして体重については 80 kg (国際線の場合) まで追加料金はかからない。このことから、小柄な旅客は手荷物を服に収納して、機内持込みを増すことができる。45 kg の旅客なら 35 kg を「着て」も、記録される体重は 80 kg。10 kgを機内持込み手荷物と合わせて、追加料金なしで 45 kg 弱の手荷物をキャビンに持ち込める。この手口は現在でも実質的に許容されているが、今後は広く実践されるだろう。大胆に行えば、不自然な格好になるはずだが、BUTTS が放り出す (注4) 社員は特に対応しないとのことであった。

 マイルが使える!貯まる! ANAショッピング A-Style は、先月よりポケット総面積を4倍、マチを3倍にした人民服 (中山装) をラインアップしている。この不思議な商品が何のために企画されたのか、見当がつかなかったが、ANA BAGGAGE DROP SUITE への先行対応だと考えれば合点がいく。つまり手荷物を着込むための服である。この商品は、旅の装いに新しい流行を産むかもしれない。

 

旅のスタイルも変わるだろう。搭乗前は羽田ラウンジで食べ放題、眠っているうちに那覇に到着。到着後は空港飲食店でソーキそばと豚肉チャンプルーを平らげ、次の移動はうたた寝。寄港地新千歳に着くとスープカレーと海鮮丼。さらに出発を待つうちに口が寂しくなって新千歳ラウンジでも食べ放題。羽田への帰路は食べ疲れのため、寝て移動。このように地上で常時飲食、機内で常時就寝の修行僧は珍しくないが、今後は体重を意識せざるえなくなる。すると現地の短い滞在時間には、飲食ではなく、運動へ意識が向かうものと思われる。

 

修行ついでの空港グルメ・現地グルメは、ソーシャルメディアの定番素材だが、それらの話題は空港近くのジョギングやサイクリング、運動施設の利用などに取って代わられるだろう。ブログやツイッターに、新パラダイムが出現する。

 毎年 4月 1日に季節記事を書き、ANA を礼讃してやまないブロガー、地獄桃氏を電話取材したところ、 

『えっ、ホンマですか?ほんならそれで一本、いやシリーズにさせて頂きます。ちょうどネタ温めてたとこやったし、ドドーンと行きます。』

と筆者の提供した情報にアイディアを得たようで、興奮気味であった。

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広げたPCとカレーはラウンジの定番。PCで編集中なのはブログ記事かもしれない。

 

もちろん ANA は、収益改善に関心を持っている。人件費の削減には確実に寄与するだろう。問題は顧客の反応である。しかしこのことに関しても ANA は自信を持っているようだ。

 

超過料金の新レートは、現在の預入手荷物の超過料金より抑えられている。この点を歓迎する旅行者は多いだろう。値上げになるのは体重過多の客だが、太りすぎに悩む人間は、一般に体重を減らす必要があるのに減らせない、そしてそのことに後ろめたさがあるとされる。したがって体重由来の超過料金は、痩せる動機になると前向きに受けとられる可能性が高い。環境適合性の点でも画期的だ。ANA は新しい料金体系の導入で、その人気を補強でき、旅客単価が増えると期待している。

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ANAの野望は日本の空港を全て青く染めることか?

 

注1:ANAでは、搭乗の多いマイレージクラブ会員をプレミアムメンバーとして手厚く処遇するが、その資格を獲得あるいは維持するために、搭乗自体を目的にする旅客をこう呼ぶことがある。

注2:プレミアムポイント単価。税金諸手数料込みの航空券価格を、その旅程で得られるプレミアムポイントで割った値。プレミアムポイントについては、次のサイトに説明がある。https://www.ana.co.jp

注3:自然主義者に関しては、各地にある専用ビーチと同じ理由で専用フライトにも需要がある。ドイツで自然主義者用フライトが実現したのは、2008年である。

Fly naked on Germany's first nudist holiday flight - Reuters

彼らにとって「出発空港から肉体を解放」という発想は、「機内からハワイ」という発想と変わらない.....おっと、今日はこんな真面目な議論をする日ではありません。

注4:正しく読み仮名が振れる人がいたら尊敬します。