PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

カタール航空の学生用マイレージプログラム

顧客囲い込みは航空会社にとって、マーケティングの重要テーマです。会社の規模がある程度以上になると、必ず会員プログラムを持っています。レガシーキャリアは特にそうですが、航空会社はサービスに本拠地の風習や文化が色濃く反映されます。ブリティッシュエアウエイズはやはりイギリスのやり方だし、エールフランスのサービスはフランスの発想です。良くも悪くもそうなので、この部分を気に入ってもらえれば、費用対効果が多少悪くても、不便でも顧客は付きます。

 そして風習や文化に敏感で、刷り込みが効果的なのが若者。皆さんも経験があるのではないでしょうか。最初に長距離国際線で使った会社は、その後の人生でも(会社が消滅しなければ)持続して気にしているでしょう。

 あまり若いと一人では旅をしないし、違いも判らないので、刷り込み戦略は20代がターゲットになります。

 

学生相手の商品は昔から無いわけではないのですが、刷り込みを目指したものは少なかったと思います。そんな中、カタール航空が本格的な学生用プログラムを開始しました。その名はスチューデントプリビレッジクラブ。略称スチューデントクラブです。

https://www.qatarairways.com/ja-jp/student-club.html?cid=EMJP104650

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カタールだから当然ですが、海外留学する学生を主なターゲットにしています。特典は航空券の予約ごとに割引率があがるとか、超過手荷物の優遇とか、機内無料WiFi の利用とか、年一回の利用で卒業後に会員グレードをアップするとか、予約変更への優遇などです。

 

カタール航空を利用できる学生を想定すると、良い所を突いたと素直に思いました。良い所というのは、カタール航空には負担にならず、経費は上昇せず、客はありがたがり、効果は高いというスイートスポットです。

 

スチューデントクラブへの入会条件はしっかりしていて、

学位を取得するために勉強している、認定された高等教育機関(大学または短大)に入学した18歳~30歳までの人間

でないといけません。語学留学とか、科目聴講、サマーカレッジではダメでしょう。また年齢的に MBA も対象外になる可能性が高くなります。卒業予定日を通知し、変更があればそれも届けなくてはならないとか、最長で7年間だとか、奨学金ほどではないものの、真面目な学生事業です。

 

なおカードは発行されることなく、電子的に存在します。会員学生が学業もそこそこに修行なんて始めたらどうするのでしょうか。STUDENT CLUB PLATINUM になっても、ご自慢の金属カードは発行しないのでしょうか。

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カード見本の会員氏名は John Smith。ブリティッシュエアウエイズのデフォルトの会員名と同じです。英語圏の人気者 John Smith。一度お目にかかりたいものです。

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John Smith は学生だったようです。

 

利用者の身になると、極端に有利というわけではありませんが、あると心強い特典ばかりだし、それなら入会してカタールを使ってみようかという気になってもおかしくありません。そこがカタールの狙い目。甘い罠。感受性の強い若者のこと、刷り込みができれば以後10年以上も何となく選んでしまう可能性が出てきます。朝食のマーマイトのようなものですね。

 

他の航空会社もこういう学生向けプログラムを充実させるべきなのではないでしょうか。個性が強烈で、留学生の往来に良い場所を占めるキャセイパシフィックでは、効果絶大になりそうです。またカタール航空と同様、利用の大部分が国際線接続であるシンガポール航空とか、アイスランド航空などもよいプログラムを作れそうです。

 

国内に目を向ければ、JAL も学生向けのプログラムを持っています。スカイメイトは性格が異なるので別として、Club EST とか、navi とかクレジットカードを中心とした商品開発に特徴があります。その先にはおぼろげながら JGC が見えるような感じ。日本人だったら当然日本の航空会社を使うので、ANA との競争だけ考えればよいということなのでしょうか。他の手も見せて欲しい気がします。