PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

Fernwehを誘起するもの

現地に行かなくてもその土地の文物に触れられるのは、先進国に住む利点。さらに現代ではその地へも簡単に行けるようになってしまいました。その移動の手軽さが突如消失する一方、文物の方は相変わらず入ってくるのが、今日の疫病禍。すると不思議なことに、文物に触れるとその地に無性に行きたくなります。こういうことが世界中で起きていると思うと、とても不思議な気がします。

 

たとえば最近東京で購入した Mercurey 1er Cru, Clos des Myglands 2018。Faiveley の単独所有畑として La Framboisière と並び、Mercurey のトップクラスの畑です。

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最近の Faiveley の Mercurey は、Côte d'Or を思わせるような、しっかりと幅を持ったワインに仕上げられることが多く、2018も果実味が十分で、タンニンの輪郭がはっきりしていました。確かに Mercurey rouge なのですが、もっと線が細くて、柔らかい方が特徴が出るように思います。例えばこのワインの 2002 は、これより軽いながらも傑出していました。サラリーマンのロマネコンティと称した方*がいらっしゃたようですが、確かに球体が自然と思い浮かび、比類ないワインでした。

 Mercurey は愛らしいのですが、こういう「完璧」を感じさせる赤ワインに時々出会います。 ただし多くはフランス国内で消費されるようで、個人的な経験ではパリでよく出会います。4年前、Louis Max の Clos de la Marche でも Clos des Myglands 2002 に近い感動を受けたことがあります。それは 12e arrondissement の Nicolas で購入したものでした。

 世界市場を意識しているだろう2018年の Clos des Myglands。こういうワインに出会うと、「パリなら街角でも思うようなワインに出会うのに」とふと思うのです。

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*:ワインは面白くて、発言でその人の体験が見えることがあります。この方は Le Romanée Conti のきっちり熟成した(=このワインの場合、これが非常に大切で、それに比べると現実離れした価格はさしたる問題ではありません。)ボトルを体験したことがあるようです。なお Mercurey の赤ワインは年を取ると美点が失われます。好みは人それぞれと言うものの、市場に出たらあまり待たない方が良い結果になると思います。

 

断捨離系の片づけも鬼門です。旅の記念品で特に無料だったもの。記念には違いありませんが、普段だったらすんなり捨てられます。それが、そこへ行こうにも行けない今だと廃棄のハードルが高くなります。

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せっかく立派に再建されたオペラハウスですが、営業はままなりません。一日当たりの死者発生の記録を出しているドイツには渡航自体が難しく、劇場はさらにハードルが高くなります。現在閉鎖されているのは当然として、通常上演なんて先の先。

 Berlin は無理でも、Bregenz のオペラ祭なら屋外。湖上なので、感染防止には非常に有利です。今年は中止だったようですが、2021の夏には感染防止対策を徹底して何が何でも実行するはずです。って Bregenz はオーストリアでした。

 

国内旅行もかなり風向きが怪しくなって来ました。

 

内外で人気の観光地北海道では、相当な勢いで感染者が増えています。海外に行けない日本人の殺到とはなりにくい状況。

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木彫りの野獣は北海道土産の定番。最近はヒグマ+鮭ではなく、トラが流行なのですか?

去年までは大雪を見に来るという奇特なアジア圏の客のインバンド需要も凄かったようですが、国内からの旅行客は夏がシーズン。冬は空いているでしょう。感染につながりやすいアクティビティを避ければ、冬の北海道はよいかもしれません。でも感染が活発で、臆病者は二の足を踏みます。雪まつりはどうなるのでしたっけ。

 

大阪も北海道と並んで感染者が多いと評判ですが、東京も仲間外れではありません。どこが多いと自慢できそうにもありません。流行地から流行地への移動なら、普段しっかり感染防止に努めている人が旅先でも同様に行動するなら、差し支えないはずです。

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今も昔も大阪には面白いことがいっぱいあるのでしょう。

 

国内だと何とか「行ける」ので、今のところFernwehも起きません。しかし例えば2週間後に日本人全体の意識がどうなっているか全く読めません。失ってみて初めて執着するものは多いことに気づきます。

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Fernwehtrum