PECHEDENFERのブログ

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クレジットカードに付帯する上級会員資格(その 1)

クレジットカードに航空会社の会員プログラム(FFP)の上級会員資格かその特典の一部が付帯することがあります。

 日本では JALグローバルクラブ JGC とスーパーフライヤーズカード SFC が代表的です。これらの商品は変わり種で、クレジットカードにもかかわらず入会にあたって FFP 会員資格が要求されます。もちろん支払能力に関わる信用はこれとは別に必要です。

 

どういうカードがあるか

その他は普通のクレジットカードですが、特典の魅力のため年会費が高くなる傾向があります。商品を考案する立場では当然ですが、掛け金の高い保険の加入、定期刊行物の購読、レストランでの席の優先確保、ホテルでの部屋のアップグレード、プライオリティパスなどもセットにしてより高価な商品を消費者に提供したいわけです。もしこれらのサービスを単品で売ると、アイテムによっては買う人間が何分の一かになってしまいそうなので抱き合わせ販売。競争力のない商品も強引に売って収益をあげます。

 

日本在住で加入できるクレジットカードには、以下のようなものがあります。JGCSFCを合わせると、9 種類の「上級」会員資格が(利用頻度ではなく)金で得られます。

 

デルタスカイマイルアメリカン・エキスプレス・カード

税込年会費13,200円 デルタ航空スカイマイル シルバーメダリオン

2年目以降は100万円以上のクレジットカード利用実績が必要。

 

デルタスカイマイルアメリカン・エキスプレス・ゴールド・カード

税込年会費28,600円 デルタ航空スカイマイル ゴールドメダリオン

2年目以降は150万円以上のクレジットカード利用実績が必要。100万円以上150万円未満の利用ではシルバーメダリオンに。

 

VISAベトナムエアラインズカード

税込年会費5,500円(初年度無料) ベトナム航空ロータスマイル チタニウム

 

VISAベトナムエアラインズゴールドカード

税込年会費44,000円(初年度無料) ベトナム航空ロータスマイル ゴールド

 

アメリカンエキスプレスセンチュリオンカード

税込385,000円(入会金500,000円)エミレーツ航空スカイワーズ ゴールド

 

Mastercard ラクジャリーカード ブラック

税込年会費110,000円 ハワイアン航空ハワイアンマイルズ プアラニゴールド

 

Mastercard ラクジャリーカード ゴールド

税込年会費220,000円 ハワイアン航空ハワイアンマイルズ プアラニプラチナ

 

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これを保持し続けていれば、スカイワーズのゴールド会員になっていました。年会費払うより旅行を選ぶのも、このカード会員であることに価値を見出すのもあなた次第。

 

功利で考えると

JGCSFC を含めて、こうしたクレジットカードを持つ価値はしばしば議論されます。年会費が高いので「元が取れるのか?」という疑問を持つわけです。

 FFP 上級会員の特典は、高い航空券を購入したり追加料金で全て得られます。したがってこういう事に関心を寄せる人は、「安い航空券しか買わないけれど、支払いを増やさずに高い航空券に含まれるサービスも受けたい」という発想をしています。図々しいとも言えるし、立派な締まり屋だとも言えます。ケチ臭いと蔑視するのは簡単ですが、私の知る限り、金持ちは何らかの節約にこだわりがあります。馬鹿デカい屋敷に住んでいるけれど、家人が消し忘れた電灯は見つけ次第必ず消すというエネルギー節約型はその典型。支払いを節約したければサービスを簡単にすればよい、エネルギーを節約したければ小さな家に住めばよいのです。発想と行動のパターンは酷似しています。

 

クレジットカード年会費はサービス料金の前払いです。基本機能の決済を見ても、振込手数料を定額前払いしていることと変わりません。それに加えて保険仲介も行うのが普通です。これらがクレカの2大機能。「元が取れるのか?」はそれらと同じ線で考えれば、おのずと結論が出ます。

 個人のおかれた条件で多少異なりますが、決済に利用しないクレジットカードの維持は無駄。クレカを作り過ぎると何に金を払っているのかわからなくなります。一方、文明的で効率的な生活をする以上、クレジットカードは必要。どこかに最適解が存在するのです。上級会員資格付帯と会費のバランスを考える時でも同じです。

 

上級会員資格やその特典を売りにするクレジットカードでは、以下の条件の全てに当てはまる場合、年会費を最大限生かすことになるでしょう。

 

(1) クレジットカードを一つしか持たない

 自動車を運転しない、所持しない人間が自動車保険を掛けますか?クレジットカードはだいたい保険が付いており、その掛け金は年会費として徴収されます。利用度が低いクレジットカードは大いなる無駄。できる限りクレカは一つにすべきなのです。

 いろいろなカードを比較して、一つを選ぶ時に上級会員資格という特典を考慮すると考える方が素直です。目的に応じてクレカを 2枚持つ人も多いと思いますが、保険はそれなりに無駄。これは FFP とは関係なく、クレジットカード全般について言えます。

 

(2) その航空会社をほどほどに利用する

上級会員資格やその特典というサービスの対価は年度初めに前払いすることになります。したがって実際に搭乗しないと損です。

 ほとんどの人が上級会員の特典のうち、ラウンジ利用に関心があるようです。航空会社も顧客が利用する度に経費が発生する部分なので、金額や損益分岐点の見積りをしたくなるのは当然です。アメリカの航空会社では有料で利用できますが、国際線で40 USD/回程度です。航空会社の経費は 20 USD/回程度。JALANAの国内線ラウンジでは、概ねその半額でしょう。利用するクレジットカードが、上級会員資格が付帯しない普通のカードからいくら高くなっているか、一年で何回ラウンジを利用するか計算、比較すれば良いと思います。

 上級会員特典の預入荷物無料追加についても、同様に計算します。

 その航空会社を頻繁に利用すると正規ルートで上級会員になり、クレカの付帯資格は意味が無くなります。JGC で一番クレカを効率よく使うのは、サファイアにはギリギリ到達しない JAL 高頻度利用客だとも言えます。

 

(3) 体重が120 kg 以上ある

ラウンジ利用が前提なら真面目な議論です。航空会社で利用に比例して経費がかかるのは消耗品。ラウンジの消耗品の大部分を占めるのは飲食でしょう。容量が大きな人間の方が大量に消費するのは当たり前。単純に考えると、体重120 kgの人は体重60 kg の人の2倍(注)の飲み食いが必要です。投薬でも、給餌でも、カロリー摂取でも同じことです。一方、機内食は体重に比例して量は増えず、標準的な摂取カロリーをもとに考案されます。体重が多い人は、機内食では足りないのです。ラウンジ飯は「恒常性維持」のために必要なカロリーになります。ラウンジが無ければ、空港内の別の飲食店を利用する必要があります。体重の小さい人間に比べて、施設利用の価値が高いのです。

 120 kgという基準にそれほど意味はありません。機内食が想定する体重の約2倍で、エコノミークラスのシートに無理なく収まりそうな体重を想定しました。

注:カロリーに関しては、実際には1.5倍ぐらい。

 

(4) 航空会社の上級会員という「飛び切りの」ステータスを保持したい

マスターカードではありませんが、これはプライスレス。自分の価値が高くなるという誤解がどこまで膨らむかによって変わります。医師、弁護士、議員、売れている芸能人などと実社会で地位がある人には、この意味では上級会員資格の価値は大きくありません。逆にソーシャルメディアなどで自分を大きく見せたい人には、高い価値を持ちます。