PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

コロナ後の FFP 改悪予想

マイレージプログラムといえば改悪がつきものですが、現在はコロナ禍のため下火です。経営を維持している会社では、会員プログラムに手をつけるどころではなく、顧客引き留めに必死。一方、破綻して大ナタを振われたマレーシア航空は、失うものは何も無いと大改革を成し遂げました。

 

COVIDの流行も永遠ではなく、そのうち落ち着くでしょう。航空需要が戻れば、各社が停滞していた改革に手を付けるのは確実。プログラムの改悪ブームがほどなく訪れます。

 潮流から未来を占うと、改革の方向は次の3つ。

 

[1] 支払い金額制への移行

特典航空券に関する部分。特典に交換できるマイルが飛行距離ではなく、会社に支払った金額を基準に計算されます。距離制から金額制への遷移は、世界中で不可逆的に進行中。逆過程はありません。

 欧州では (1) Flying Blue、(2) Miles & More、(3) Executive Club の3つのプログラムが会員数1,000 万人以上と大きいのですが、エールフランス、KLM などの (1) はすでに支払金額制を導入済み。ルフトハンザ、スイス航空、オーストリア航空、LOT ポーランドなどの (2) は、今年1月の導入予定がCOVIDのせいで一年間延期。一方、ブリティッシュエアウェイズ、イベリア航空の (3) は Avios という単位を用いるものの、基本は飛行距離に予約クラスによる換算比率を乗じた数値を用いています。

 アメリカではすでに大手3社が金額制に変更済。アジアではマレーシア航空が4月から変わります。欧州では他にも Air Europa の SUMA が金額制です。

 

距離制から金額制へ移行すると、大雑把に言って得られるマイルは3割~7割程度に減ります。Pechedenferは、金額制導入前の Flying Blue で年間40,000マイル以上獲得していましたが、改悪後は年間 5,000マイル以下になりました。主な原因は今まで安いチケットばかり買っていたことではなく、長距離便の利用を止めたことです。プログラム改革が会社にとって都合が良いかどうか、よくわかりません。

 北米と欧州の会員が多いブリティッシュエアウエイズも、結局金額制を導入せざる得ないと思います。アラスカ航空もしかり。会員は心の準備が必要なようです。

 

[2] 搭乗実績へのポイント制の導入と、予約クラスによるポイント区分の細分化

上級会員制に関する部分。ブリティッシュエアウェイズは、距離区分と搭乗キャビンによって決まる tier points で搭乗実績を量ります。1991年に導入された方法で、30年の歴史を持ちます。

 マイレージプログラムは1980年代が興隆期ですが、当初は搭乗実績を量るのも飛行距離が基本。そこへ搭乗キャビンによる換算レート、さらには予約クラスによる換算レートを導入し、限界まで複雑になったところでちゃぶ台返しのごとく距離区分と搭乗キャビンによる単純なポイント制へ移行したのが Flying Blue。Executive Club の tier points が、4距離区分x6クラスに対して、Flying Blue では5距離区分x4クラスと少し単純化しました。Miles & More は単純化を徹底し、2距離区分x4クラスしかありません。マレーシア航空も4月からこの制度。ポイント制への遷移も大きな流れとなりつつあります。

 

レガシーキャリア大手は LCC との競争から学んだようで、同じキャビンでもいろいろなサービスを削った航空券を用意するのが普通になりました。どんどん削ると、マイルや搭乗実績もなくなります。一方ビジネス客は、割高になる変更可能な航空券を相変わらず購入するわけです。これらの搭乗に差をつけることは、収益に貢献するはずです。

 すでにブリティッシュエアウエイズは、エコノミークラスを予約クラス別に3種類に区別しています。最近 FFP を改革したカンタスではさらに細かくなっており、エコノミー、プレミアムエコノミー、ビジネスクラスがそれぞれ3段階に区分されています。

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先進のカンタス Frequent Flyer

 


ビジネスクラスでマイル積算率が100%を切る航空券は、JALANAAir Franceを初めとして、結構販売されています。カタール航空もラウンジアクセスをサービスから除いた格安ビジネスクラスを販売するようになりました。このような料金の細分化が、搭乗実績へ反映されるのは避けられません。

 

Flying Blue も Miles & More も単純になったばかりなのに、複雑化への道が見えてくるようで、気分はあまりよくありません。

 

[3] 自社搭乗の優遇、アライアンスの排他性低下

特典航空券と上級会員制の双方に関する部分。上のカンタス航空の一覧表は羽田-シドニーの片道搭乗で得られる Qantas Points (特典用のポイント)と Status Credits (会員レベル決定のためのポイント)ですが、同じ区間JAL の利用で検索してみると以下のようになります。

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Frequent Flyer では自社利用の半分以下の評価になる JAL の利用

 

お判りでしょうか。得られる Qantas Points は4割~7割程度、Status Credits は半分以下に抑えられています。同じアライアンスの提携会社での利用は、自社利用と同じ評価になることが多かったのですが、カンタスのように自社利用を露骨に優遇するところが増えています。

 

逆に一部の会員レベル(シルバー、ゴールド、プラチナ)について、アライアンス外の他社利用拡充を行ったのが Flying Blue。その場合でも最上級の会員レベル(ultimate)は、自社(AF, KLM)の利用のみがカウントされます。フィンエア、カンタスでも近年導入した最上級の会員レベルでも自社利用が極端に重視されます。対象となる提携会社の増加と自社優遇の二つの動きは真逆ですが、どちらの場合も脱アライアンスへ向かいます。

 

どのプログラムでも起こりうる話ですが、特に Executive Club の日本での利用では、上級会員の維持が突然困難になる危険性が高いようです。例えばワンワールド他社便の利用で tier points が半分しか積算されなくなり、ビジネスクラスが予約クラスに応じて細分化されると、ゴールド会員でさえ維持が難しくなります。世界的に見ると、この種の改革はプログラム改悪を穏やかに行ったように見えます。一方で Aer Lingus の搭乗が BA 搭乗と同様に扱われるようになるかも知れません。

 上級会員制度に関して日本での Executive Club は特異的に楽になっています。こういう恩恵に関しては、小さな改革が大きなショックを引き起こすことはよくあります。これが目下恐れるところです。