来年1月、京都にホテルオークラが開業するそうです。場所は岡崎の東本願寺別院の境内で、施設名は「ホテルオークラ京都 岡崎別邸」になるということです。底地はお寺のもので、定期借地なのでしょうか。Google Map でストリートビューを覗いてみると、確かに寺の敷地内で、丸太町通りの北側。正面は広く丸太町通りに面しており、背面はお寺の境内。絶妙な立地になりそうです。東本願寺の立場からは、現代における宿坊のあり方を提案したのですか?
まだ開業日は具体化していない模様です。
4階建て60室で延べ床面積 55,000 平方メートルですから、高級ホテルには違いありません。標準的な部屋で40平方メートルと発表されており、標準的な宿泊料金は 10万円程度になりそうです。
オークラブランドは市役所隣の京都ホテルオークラに続いて2つ目。あちらは相変わらず京都ホテルの運営だし、市民の間でも京都ホテルの方が通りが良いと思います。オークラがプロパーなホテルを新規開業するにあたり、状況は一層紛らわしくなります。市役所隣のホテルには、ますます京都ホテルの旧名称が好んで使われるようになるかもしれません。
21世紀になって京都の有力ホテルは、看板を架け替えたところが多いのです。建て直しの有無、運営主体の交代を問わず看板が変わったホテルを挙げると、
京都パークホテル ⇨ ハイアットリージェンシー京都
京都グランドホテル ⇨ リーガロイヤルホテル京都
ホテルフジタ京都 ⇨ ザ・リッツ・カールトン京都
京都国際ホテル ⇨ ホテル・ザ・ミツイ・キョウト
ぐらいはすぐ思い当たります。京都ホテルはバブル末期に建替えが始まりました。以後の不況で経営が悪化し、3つの系列ホテル(志賀高原ホテル、たかつき京都ホテル、いばらき京都ホテル)は消滅し、株式も30%以上オークラに渡りましたが、経営と運営はとりあえず変わっていません。
ホテルフジタと国際ホテルは、それぞれ2011年、2014年まで営業していました。ともに末期に宿泊したことがありますが、昭和時代(1924年12月~1989年1月)のシティホテルで、レトロそのもの。悪く言うと完全に時代から取り残されていました。京都は都市全体がそんな要素を多分に持つため、それでもやっていけるという状況は理解できます。宿泊料金も安く、1泊1万円台半ば。それでスイートにアップグレードしてもらったり、いいような悪いような思いもしました。
現在これら2つのホテルは建替えられ、一泊最低10万円弱。客単価は 6倍になっています。客室面積が倍になったとしても 3倍で貸すようになったわけですから、ビジネスとして考えると、旧ホテルの経営は非常にまずかったわけです。
バブル以降の不況期にすっかり消費が様変わりしてから、宿泊料金はほとんど変わっていなかったのです。実は物価もほとんど変わらず、所得もほとんど変わっていません。25年間この調子の日本。
実際に数値を比較すると一目瞭然です。1994年と2019年の一人当たりのGDP を比較すると、
中華人民共和国 21.7倍
インド 6.07倍
タイ 3.13倍
シンガポール 3.03倍
ベトナム 2.89倍
アメリカ 2.36倍
イギリス 2.15倍
フランス 1.72倍
ドイツ 1.72倍
日本 1.02倍
と、日本は 2%しか増えていません。年次のグラフを見たらわかりますが、景気の循環を受けて数十%上下するものの成長傾向は見られないのがこの4半世紀です。ざっくり言って、他国の経済は 2~3倍に膨らんでいます。海外旅行は、他国の旅行者との比較では 25年前の半分から三分の一の予算で行うしかない状況。日本人は貧乏になったとはっきり自覚した方が良さそうです。
現在はパンデミックで特殊な状況というものの、京都の観光業や不動産業は国際水準かそれ以上の成長を遂げようとしています。この都市のビジネスのやり方は独特ですが、京都の不動産の成長とそれを支える京都ブランドの活用法は、日本の多くの産業が参考にできる気がします。