PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

フランスでは普通のバカンスに大胆な規制の実施

オリンピックも閉会式。メダル獲得ランキングでは、日本は中国、米国に次ぐ3位になりそうです。おそらく 4位は英国、5位はロシア籍選手団になりましょう。日本を除き、ベスト5の顔ぶれは 2008から変わりません。

 英国は人口(日本のおよそ半分)の割にオリンピックメダルの数が多く、メダル大国です。

 一つには世界中の優れた選手が英国籍を取得するからでしょう。英語を世界中に広げ、事実上のリンガフランカにしたおかげです。優れた人材が次々と英国へ移住するという現象は、トップ・アスリートの分野にとどまるはずがありません。英語のおかげでこの国は多くの分野で一流を保ちます。あるいは国家衰退を減速させています。

 

今の時代、世界中どこにいても英語ができると有利、英語ができないと不利なのは事実。しかし英語が母語だと幸運かというと、そんなことは絶対ないと思います。

 

あなたがイングランドに生を受け、平均的に生育し、職を探すとしましょう。あなたが希望するポストには、世界中からあなた以上に能力がある人間が殺到します。たとえ業務に直接関係する能力が同等であっても、あなたはモノリンガル、競争相手たちは多言語話者。あなたを採用する理由は、見つけにくいのではありませんか。

 一般に社会が高度化すればするほど、単純作業は機械が行うようになり、総合的かつ高度な能力が必要な仕事のみが残ります。有能な人間だけが働ける世界へと、社会の進化は止まりません。この結果、英国では就職は世界的競争になる一方です。

 

国が高いレベルなら、一人一人の住民はそれ相応の競争を強いられるのでした。

 

この社会構造ではアメリカが先行します。オーストラリア、ニュージーランド、カナダも多かれ少なかれ同様の成り立ちを持ちます。人口当たりのメダルの数なら、オーストラリア(日本の約5分の1)、ニュージーランド(日本の約25分の1)は凄まじいものがありますね。

 

18世紀-20世紀半ばまでは、この現象は国内で起きていました。例えば日本では明治以降、国中への義務教育の普及から、標準日本語の読み書き(+話す)ができる有能な人間が大都市、特に東京に集まるようになっています。これが国内ではなく、世界を舞台に起きているのが今の英国。

 日本人がボケっとしていても、なんとか生きていられるのは日本語の壁のおかげ。世界レベルで見ると英語以外の言語は、方言も含めてできると生き残りに有利です。

 一般に言語の習得では、その社会の常識に通じ、考え方を身につけないと実用になりません。方言は習俗の担い手になれる水準でないとあまり意味がなく、ハードルはかなり高いのですが、英語は様々な人たちが使うだけのことがあり、この角度からはおそらく世界一習得が簡単な言語。

 

英国のメダルの多さにそんなことを感じました。

 

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レスリングのゴールドメダリスト須﨑優衣は MAD city 出身。六実なので、松戸宿とは市域の反対側ですが...。

 

さて日本では帰省の是非が目下メディアの優良ネタですが、夏休みの旅行は2019年以前と比べると明らかに低調。ヨーロッパはどうかと調べてみると、フランスでは例年の調子が戻っているようです。

 フランスは 8月7-8日頃が 7月組と 8月組の入替えの時期で、ちょうど今バカンスの中間です。もともと費用と期間の点からバカンスは国内で過ごす国民が多く、日光を求める習性から南方の大渋滞は風物詩となっています。

 8月 7日正午には渋滞総延長が 1,051 km になりました。高速道路 A7 では 200 km を超える渋滞が発生、Lyon - Orange 下りは通過に普段の倍の時間がかかりました。

Vacances : un millier de kilomètres de bouchons - ladepeche.fr

A10 でも100 km クラスの渋滞になっており、A9、A75 でも詰まっています。この記事は、もはやパンデミック前と変わりません。言い換えると COVID-19 は、マクロな人の動きに限定的な影響しかもたらしていません。このことは人々の意識を変え、疫病終焉へ大きな一歩となりそうです。

 

例年と全く異なる点も見つかります。普通バカンスの季節は社会活動が低調ですが、今年はデモが活発でした。

Covid-19 : toujours plus de manifestants anti-passe sanitaire, malgré les vacances

ワクチン接種証明または 72時間前以降の陰性証明を行なった者だけがレストラン、美術館、映画館などに入場できるとする規制(pass sanitaire)に反対するデモが各地で発生しました。今年 6月9日より(彼らにしてみれば強引に)政府によって導入されています。7月31日土曜日には、フランス全土のデモ参加者が総計 200,000 人を超えたそうです。同時多発デモ自体は珍しくありませんが、バカンス中の大規模デモは異例。

 

le pass sanitaire の適用は順次拡大し、7月21日には50人以上集まる場所が規制対象になっています。

« Pass sanitaire » : toutes les réponses à vos questions | Gouvernement.fr

お市販のワクチンでは、Pfizer、Moderna、AstraZeneca の 2回目の接種後 7日経過しているか、Johnson & Johnson の接種後 4週間経過していないと、le pass sanitaire の対象となりません。つまりロシアと中国のワクチンは無効です。

 

反対派は多数であり、さんざんデモを行いましたが、8月5日 le pass sanitaire はバランスが取れていると Conseil Constitutionnel(日本語で憲法院)が判断を下しました。

Covid : feu vert du Conseil constitutionnel au pass sanitaire | Les Echos

これで少なくとも 9月30日までは、ワクチン未接種者は 3日に一度陰性証明を行わないと、その分社会生活が制限されます。日本だと導入へのハードルが想像もつかないほど高く感じられる政策ですが、フランスは実施してしまいました。

 確かにこの規制は大胆です。しかし文明生活ができないほどではありません。国の意志に従わなくても、わずかな手間で平等の権利を享受できます。期間も限られます。フランスの政治家は制度作りが上手だと感心しました。

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外国人が自由に移動できるにはまだ少し時間が必要なようです