PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

サービス簡略化と客が少ないことがコロナ禍のポジティブな効果

昨年と同様、世界各地で年中行事が中止になっています。ドイツでは至る所で abgesagt (=取り止め) が猛威を振るっています。

 

感染に左右されるとは思えない山間部の農事暦も、何故か取り止め。

Viehscheid in Bad Hindelang: Almabtrieb im Allgäu

Bad Hindelang という独墺国境にある自治体で、夏の間アルプスで放牧していた牛(1,000頭)を一斉に戻すという行事らしいのです。牛追いですから、当然人より牛が多いはずで、感染拡大の要因があるとは思えません。ところが自治体の説明では市場に122のスタンドが立ち、メリーゴーランドが設置されるとなっていました。このオマケ部分には、確かに問題があります。

 本来 9月11日に予定されていました。

Viehscheid 2021 in Bad Hindelang | Bad Hindelang - Ortsmitte | Bad Hindelang

ヒトに感染症が蔓延しても、冬のアルプスに牛を放置するわけにはいかないでしょう。牛の移動を見世物にして、観光収入に変える営みが中止になると思われます。

 何にでも理由をつけてバカ騒ぎするドイツ社会が嫌いで、牛の集団移動とか、特徴的な牧畜に興味がある方は、むしろ落ち着いて観察できます。

 

こんな風にコロナ禍における様々な制限を逆手に取る発想は、この厳しい環境を生き抜くために重要。

 

羽田の DP ラウンジも緊急事態宣言を受けて、飲食が地味になり、客も少なくなりました。その結果、機能の核となる部分が際立っています。

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落ち着いて搭乗を待つためには、シートに腰かけた時にどういう空間が得られるかが決定的に重要です。このラウンジは他の JAL ラウンジ同様、家具がチープなのが雰囲気を損ねますが、照明のレベルとか、内装の色調には問題ありません。

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飲み食いにがっつく客も目に入らず(=ノイズが耳に入らず)、いつもより快適。

 

JAL らしい小技は退屈さを避ける効果があり、この力量は安定しています。

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非常事態宣言のおかげで、食物や飲料への期待はゼロです。そして長くいるわけでもなく、あわただしく過ごすわけでもないという執着の無さが、心のゆとりになることに気がつきました。空港ラウンジは、やはり時間調整の間。

 

JAL は、国内線での機材の運用がコロナ禍以前より大胆になっているように思えます。一つの路線で便数も搭乗客数も大きく変動するからでしょう。

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今回の羽田-伊丹往復では、機材は共に B737-800。クラス J は新しいシート。Wifi も普通につながります。伊丹に着くと A350 が駐機していました。以前500席のB777-200で運行していた沖縄便の後継でしょうか。撮影もせず、確認もしませんでした。

 

機内誌 SKYWARD の特集は、パリと北海道。パリは日本人シェフへのインタビュー。北海道は十勝の牧畜農家の取材。

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乳牛と言えば、カウベルをぶら下げたジャージー牛と、家畜につきものの悪臭を思い浮かべます。十勝ではアルプスの周辺で広く見られる大きなカウベルはつけないようですね。

 

ブロガーには、際限なくネタを提供するパリはありがたい存在です。たとえば、私 Pechedenfer も今月書いています。

特別記事:パリについて知っておいた方が良いこと - バス代わりの飛行機

 そんなパリも SKYWARD にかかると全然その手のことが記事になりません。あれもパリ、これもパリなのでしょう。

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機内はまだオリンピック+パラリンピックの雰囲気でした。縁に付着したコーヒー滴は、客室乗務員の技術の問題。

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この冷熱両用の紙コップは、2020年夏に向け製作して一年間倉庫で眠っていたのでしょうか。

 

本日の目的地は、旧京都大学附属農場。再開発後にできたスタバでした。京都大学の施設は西日本中に散らばっています。かつての農場の所在地は、「ほとんど京都のとこ」と自称されることも多い大阪府高槻市

 さて印象的な場所に開店するスタバが増えています。ここでは中から外を眺めた時の開放感を期待したのですが、ちょっと当てが外れました。

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とは言うものの、広々とした公園で駐車場とのインターフェースの役を果たす使いやすい店です。

 

店の前にある石のベンチはスタバ仕様。

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農場時代の建造物は、リノベでピカピカになっていました。コロナ禍の観光にはおあつらえ向けの広い原っぱ。視野に人影なし。感染リスクは相当下がりますね。普段はそそられない、ただ広いだけの空間を訪問する気になったのはコロナのおかげです。

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この開放感は秀逸。人工構造物が適当に視野に入ることも関西らしくて結構至極。

 

旧農場本館には、食堂が設けられています。都市公園を整備する時、最新デザインの食堂を建てるのではなく、残っていた古い建物を食堂に使うのが当世風。

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整備が終わった区域から順次一般公開したはずですが、全体が安満遺跡公園(安満=あま。アンマンにあらず。)という名になりました。遺跡保存、防災拠点、子育て支援など多彩な顔を持ちます。ハイブリッドな公園。市民、特に徒歩で来る住民にはうれしい施設になっていそうです。旅行者には、たまたま近くにいて、他にすることが無いなら寄っても良いかなという感じ。

 隣接する土地に大阪医科薬科大学の薬学部が、同じ市内の阿武山から移ってくるようです。公園をトレーニング、ジョギングで利用する学生が増えそうです。

 コンセプトが一義ではないため、ぼんやり感がつきまといますが、公園内にミシュランの三つ星だとか、食べログの百名店が存在するとなると状況は激変するでしょう。店も公園も単独で存在するより価値が上がります。フランスでは普通の発想ですが、日本の自治体はおそらくそういう視点を持ちません。ここは濱田先生にご活躍頂く場のようです。長らく市内から失われていた「宴会ができる都市ホテル」も新開業したことですし、次は「高槻産農作物をなるべく利用」などと注文を付けずにスターシェフを口説き落としてはいかがでしょうか。