PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ゲームの要素が失われるマイレージプログラム(その 2)


初歩的なお話ですが、ロイヤルティプログラムは有償利用の実績に応じて、次のようなサービスを特別に提供するという原理で機能します。

 [1] 利用に関係ない景品、有価証券などの提供、次回以降の利用での料金の割引、自社事業の商品、サービスの無料提供

 [2] 次回以降の利用時における付加サービスの無料提供

航空会社のプログラムでは、[1]の代表例が特典航空券の提供、[2]の代表例が上級会員制度です。

 

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航空会社の顧客プログラムでは、顧客の「優良度」を測る物差しは長らく飛行距離でした。特典も搭乗実績もマイルが単位。それに加えて利用回数も使われてました。今では物差しが大きく分けて4つあり、それは

 

距離(実距離、ゾーン)

搭乗回数

距離(実距離、ゾーン)+ 搭乗クラスの組合せ

金額の関数としてのポイント

 

です。特典供与可能性を定量化する数値、上顧客認定を受けるための搭乗実績、特典の価値は全てマイルという単位が多いのですが、それぞれ物差しが微妙に異なるのが普通です。

 

プログラムがゲーム性を帯びるか否かは、物差しに大きく依存します。それに加えて、特典の多彩さも重要な要素です。特にプログラムの提携先の性格が全然違う場合(e.g. Executive Club & HHonors)や、提携先が多い場合 (e.g. 航空連合) 時々嘘のようなメリットが得られます。

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この記事では各社の物差しをまとめてみました。視点はゲーム性が高いかどうかです。以下では(1) がもっとも良くて、数字が大きいほど遊びの余地がないことになります。

 

①特典マイルの計算、②搭乗実績の計算

 (1) ゾーン制*、回数制

 (2) 距離制*

 (3) ゾーン・予約クラス、ゾーン・搭乗クラス**

 (4) 距離・予約クラス、距離・搭乗クラス**

 (5) 支払金額制

 

③無料航空券交換におけるマイルの変換

 (4) ゾーン・搭乗クラス

 (5) 金額換算(支払金額制の逆変換)

 

提携の質と量

 (1) 三大航空連合加盟***

 (4) 2社間提携

 (5) 航空会社無提携

*:①と②では、純粋な距離制とゾーン制の例はほとんどありません。私の知る例では、ユナイテッド航空のミリオンマイルプログラムが距離制であることぐらい。

**:予約クラスは、2つ以上のキャビンクラスが予約クラスによって細分される場合、搭乗クラスは、エコノミークラスだけ細分されている場合として区別しました。

***:三大航空連合加盟するぐらいの会社だと、普通2社間提携もあり、国際ホテルチェーンとも提携していることが普通です。(4) との間には大きなギャップがあります。

 

実際にはどのプログラムも複雑なので、大雑把な分類しかできません。各社のプログラムは以下の通り。

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表は拡大すると読めます

金額制は騒がれているほどには多くありません、しかしながら、①特典用のマイル・ポイントを貯める段階、②上級会員資格のための搭乗実績を測る段階、③特典に変換する段階の全てに金額制は採用されています。ニュージーランド航空の③特典に換える段階の金額制は、デルタ航空が①について支払い金額制を言い出す数年前にはありました。

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地上に降りてみると、小売り業者も顧客プログラムを持ちます。店舗での物品購入では①金額に応じてポイントが獲得され、ポイントは③金額換算されて、次回以降の来店で利用できます。①ポイント獲得も③特典利用も金額制のパターンですね。自分で買い物をする方ならプログラムに面白さがほとんどないことはご存じでしょう。過払い金の還付を受けている程度ですから、当然です。

 

餃子の王将では、一会計で500円毎にスタンプが1つ得られます。スタンプの数に応じてクーポン券(金券)、上級会員(=ぎょうざ倶楽部5%会員と7%会員)資格、オリジナル景品が獲得できます。これは支払い金額制で①特典マイルや②搭乗実績を獲得し、特典マイルを③金額換算で利用することに相当します。このプログラムがどのぐらい面白いか/つまらないかは、王将を利用する方ならご存じだと思います。

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航空会社の顧客プログラムは、イオンや王将と同じ方向に向かっているようです。アメリカン航空point of no return を超えましたが、シンガポール航空ANA にように模索中と思われる会社は結構あります。レガシーキャリアにもその顧客にも、これからの道は険しそうです。