PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ゲームの要素が失われるマイレージプログラム(その 3)

 

アメリカン航空アドバンテージでは、上級会員資格すら支払金額基準となり、ゲーム性が消失したと書きましたが、これは言い過ぎでした。正確には「大多数の人にはゲーム性がなくなり、つまらないものとなった」です。

 

適度なキャッシュフローがある人には、2022年に以下のような楽しみ方が生まれます。

 

[I] アメリカン、ユナイテッド、デルタの「最上級」会員資格を全て揃える

 

JALANA の両方でダイヤモンド会員――解脱の epitome です。日本は赤青二極なので何とかなりますが、北米は三極あります。これまで三大手「最上」会員――エグゼクティブプラチナ、プレミア1K、ダイヤモンドメダリオン――の全てになることは大変でした。合計して年間 32 万マイル以上の搭乗が必要になります。これまで達成した人は、僅かなはずです。

 

状況は劇的に変貌を遂げています。来年からは搭乗せずにエグゼクティブプラチナになれます。アドバンテージ提携のクレジットカードを20万ドル利用すれば OK。

ご自宅で楽しくネットショッピング。あなたも楽々エグゼクティブプラチナ。もう空港に行く必要はありません。

とすっかりお手軽に。

 マイレージプラスの上級会員制度も支払金額基準になったので、搭乗を大幅削減できます。東京―ニューヨーク往復+大陸横断往復で 1K の基準、15,000 PQP(=15,000 ドルの決済と搭乗)は決着がつきます。バーツラン時代に比べるとこちらもすっかりお手軽になりました。

 飛行距離基準という因習が残るスカイマイルでは、125,000マイル搭乗しなくてはなりません。頭にペンペン草が生えた恐竜のようなデルタ航空。ここは従来通り乗るとしても、三年前の約4割の労力で北米三冠を達成できるようになります。

 

今までできなかったことが、お金でケリがつくようになり、手が届くようになる。アメリカ社会の健全な発展です。

 

少し気になるのは航空券の価格。1万マイル飛んで 1万ドル使えるなら、ドル消費は高効率な方です。プレミア 1Kとダイヤモンドメダリオンの達成では、頑張って10万ドルぐらいでしょう。結局エグゼクティブプラチナ達成が一番最後になります。10万ドルは別のことに費やすしかありません。手っ取り早く片づけたいなら、内輪のパーティーで Romanée Conti を3~4本開けますか。

 

[II] 年間20万ドルをユナイテッドの航空券購入に使う

 

「一年間に20万ドル航空券に使う。」と聞いて、何かの罰ゲーム?と思う旅行アディクトは割と冷静。[I] で書いたように、高価な予約クラスでも長距離路線なら、大雑把に言って 1万ドルで 1万マイルほどにしかなりません。原理主義者よろしく「航空会社のクレカは航空券の購入しかありえない」と凝り固まると、20万ドル消費(=エグゼクティブプラチナ達成のため)に20万マイルほど飛ぶことになります。目標なく飛ぶなら、絶対に飽きます。それなら滅多にお目にかかれない雲上会員 United Global Services 会員になるために費やしてみてはどうかという提案。

 United Global Services は招待制。基準非公開という御簾の向こうにあるサービスですが、支払金額が重視され、5万ドルが必要条件と噂されています。その程度のことでしかないなら、ドカンと20万ドル使ってやれば、必ず招待が降ってくることでしょう。それがアメリカン航空のクレジットカード経由でも。

 ユナイテッドが、ここまで人を食った自社会員を Global Services に招待するのは見ものです。身辺調査が入る可能性に備えて、ユナイテッドグローバルサービスへの道17などと、ソーシャルメディアでシリーズ化せず、コソコソ行いましょう。

 

エグゼクティブプラチナを維持するために、United Global Services 会員になる。United Global Services 会員になるために、アメリカンのクレカを使いまくる。倒錯しています。その辺が面白いと思えるかどうかが鍵です。

 

少々脱線しますが、日本でも似たゲームができます。ANAカードで JAL の航空券を買い、JMB ダイヤモンド会員になりましょう。HND-JFKHND-LHRJAL ファーストクラス往復だけで達成すれば、600万円を超えそうです。その支払いは AMC ダイヤモンド達成を楽にします。

 さらにスケールは小さくなりますが、昨年 SFC を獲得し、今年は JGC 修行なので支払は SFC のクレカだ、などと倒錯の世界を楽しんでいる人なら大勢いることでしょう。JAL 航空券は必ず SFCANA 航空券は必ず JGC のクレカで買うという御仁もいらっしゃるのではないかと思います。周囲から唐変木だと称えられているのではないでしょうか。

 この種のパターンがネタに使えるなら Pechedenfer も応用したいのですが、全く思いつきません。

 

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 [III] エグゼクティブプラチナは United Global Services、Delta 360°より価値が高い

 

お金の話になると、アメリカはスケールが大きくて清々しい限りです。20万ドルの話にもどります。

 United Global Services といえども一年に 20万ドルは過度な支払いだと思われます。ユナイテッドに貢ぐのは半分にし、残りの半分はデルタに乗って Delta 360° を獲得する方が良いのでは?10万ドルでも噂の2倍です。ドル本位制にドンドン傾く北米航空会社なので、会員資格ぐらいくれることでしょう。

 ゲーム展開の途中で何が起こるか想像してみてましょう。おそらくエグゼクティブプラチナへの道半ばにして、United Global Services と Delta 360° が次々解脱します。これは 「エグゼクティブプラチナは、United Global Services と Delta 360° を合わせたよりも価値が高い」という命題を証明することになります....本当?

 これも倒錯しているとは言え、アメリカン航空のファンなら一度はチャレンジしてみたいゲームです。

 

[IV] ConciergeKey, United Global Services, Delta 360°同時達成

 

クレカ利用によるエグゼクティブプラチナ達成からは離れますが、支払い基準20万ドルの妥当性を評価するための挑戦です。アドバンテージ提携クレカを20万ドル使って、招待制会員資格の三冠、つまり「真の三冠」は可能でしょうか。全く分かりません。公平に金をばらまくと、各社で年間6万6千666ドルの航空券購入とその搭乗。三解脱は微妙な感じがします。

 もちろん払っただけではなく、搭乗することが必要条件になります。体力と時間の負担もそこそこ大きく、結果は不確実性に満ちているとなると、ゲームそのもの。虻蜂取らずになっても、エグゼクティブプラチナ、プレミア 1K、ダイヤモンドメダリオンは獲得できるので、最低限の保険はあります。Flyertalk 向けのネタ作りに最適。

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まとめると...

 

一般的に言って、ゲームになるか否かは参加のコストと報償の価値で決まります。数千万ドルの金融資産を有し、年間のキャッシュフローが40~80万ドルぐらいの人がチャーターで世界中を飛び回るのは少々浪費が過ぎます。ファーストクラスのキャビンを一般人と共にする方が現実的でしょう。この付近の階層が上記ゲームのプレイヤーになります。数字がもう少し膨らみビリオネアになると、ファーストクラスで節約なんてあまり意味を持ちません。三大手の顧客プログラムは場違い。ゲームを楽しむのは難しいと思います。

 

パンデミック以前、北米三大手の上級会員制は(業務で)10万マイル飛ぶ時間を割き、(媒介者として)料金を支払える人達のゲームでした。アメリカン航空はこのプレーヤー達にもっと金を払うよう仕掛ける一方、暇が有り余っており、年間キャッシュフローが50万ドル程度ある連中を新しいプレーヤーとして歓迎するのです。新プレーヤーは階層が違うので、マーケティングも必要。ビジネスとしては挑戦です。