PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

旅行ができないと...酒?

これは「ライフタイムアルコール中毒への道(その○○)」ですね。外に出られないから、家で飲んだくれていた一年だったということのようです。そんな話なので、アルコール飲料に関心のない人は次の記事をお待ちください。

 

国境を越えることは難しい一年でしたが、家にいても遠隔地の文物が問題なく入手できました。21世紀の素晴らしさを実感した一年でもありました。

 「外国のワイン」にパンデミックの影響はほとんどありません。

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左が保管用ですね。

コレクションアイテムも、細々と購入しました。実際のところ開けたくなる頃には、(もしその時点で同じものを入手することを考えると)値段が法外なものになっていて、開ける気をなくすことは分かっています。しかし止められません。

 

生誕とか、結婚とか、出産とか、JGC 解脱とか、メタル昇格とか、ファイブスター達成とかいう記念すべき年のワインならともかく、長期保管用の購入はほどほどにしたいもの。もっと気軽に味わえる「良いワイン」に資金を向けるべき。明るい人生を送るコツです。そんなことまで意識せざる得ないパンデミックの中、箱の中に積んで販売されているという基準で先月 Médoc の Cru Classé を探しました。意外に種類が限られます。先月これ以外に見かけたのは Château Lagrange ぐらい。

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このクラスのワインを楽しむのは、流行を占うにも重要

Premier Cru Classé のワインが、床に置かれた木箱の中で平積販売されていた頃の景気の良さは完全に過去のもの。かつては Romanée Conti ですら、店頭平積み販売がありました。1本なら BMW 1er か 2erの新車、1ケースならロールスロイスの新車ほどに高騰してしまいましたね、このワイン。ま、わたくしには関係ない事象ですけど。

 流通最適化(高価なワイン=マニア向け=輸入元直売)の影響もありそうですが、派手さがない今の状況はお寒い限り。

 

こんな風にすぐ昔話と愚痴になるのが、ワインの世界。ある程度キャリアが長くなると、老人トークしかできなくなります。冷静に考えればワイン愛好家が時代に遅れるのは必然です。発酵食品は若い頃に覚えた味が一生影響する一方で、ワインの味わいは世界中でゆっくりと推移するからです。

 石灰を感じさせる強烈なミネラル、たっぷりとした固い酸に貧弱な果実味、楽しむには慣れが必要なシャンパーニュなんて今は造れません。愛好家としての年月が昔話と愚痴に表れるなんて、何とも野暮ったい世界です。

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ただ変わらないことは変わらないというか、経験が役立つこともあります。

 

Louis Jadot 社が日本市場専用にブドウをアセンブルした Cuvée、Bourgogne Songes de Bacchus。Pinot Noir と Chardonnay があります。人気が今一つだったのか、2016年を最後に造っていないようです。

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この Cuvée は Côte de Beaune のあちこちの 1級区画と村名区画のブドウを 50%使っており(=Louis Jadot お得意の一級畑マルチブレンドの廉価版?)、レギュラー版の Bourgogne Pinot Noir より10~20%高い価格でほぼ同時に市場に出ました。何回か試したのですが、いつも薄ぺっらく感じ(=固くて開かない)、癖があり(=丁子や甘草の香りが強く=全く悪いことではない!)、魅力を感じにくいワインでした。

 しかしながらこれらの問題は若い Côte d’Or 一級畑ワインの欠点そのものだったので、待ってみる価値があるとも思っていました。特級畑は若いなりに飲みやすさがあるのですが、一級畑は昔からそうでないものが多く、そうしたワインの魅力を引き出すには熟成しかありません。

 Songes de Bacchus はかなり売れ残っているようで、レギュラー版が2019になろうとしているのに、まだ 2016 が簡単に入手できます。この間にブルゴーニュワインの価格が上昇したので、店頭では同じ値段で並んでいることすら見るようになりました。

 

「買い」の状況です。ミレジムとして 2016 はフレッシュな酸がしっかりしていて、魅力が出始めていることでしょう。そして近所の店でたまたまセールを行っていたので、半ダース購入しました。

 一本開けたところ、期待通りの変貌。今だったら「1級畑ブドウ50%使用」という宣伝文句と釣り合います。少し置けば、格段によくなるワインだったのです。熟成香(=bouquet)はもっと豊かになりそうなので、まだまだ保持です。

 

Bourgogne については 2018 年を非常に高く評価する人が多く、1959年と瓜二つという意見も見ました。発言者が80歳以上でないと信用しなくてもよいと思いますが、熟成に恐ろしく時間がかかりそうな予感はします。世間の評点に踊らされず、ほどほどに熟成する良質な広域ワイン~村名ワインを狙うのが良さそうです。いろいろなワインを買い、ストックしておくと長い間楽しめます。コレクションアイテムから離れて、中期消費用にワインを見ていくのも良いかもと、いつまでたっても航空券が買えない Pechedenfer は思うのでした。