バス代わりの飛行機

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

自分以外の客

 

久々に出会った(おそらく)理解しやすいドイツのジョーク。Posaune はトロンボーンです。

異文化の受容において「喜び」と「悲しみ」に比べて、「笑い」は難しいとされますが、一定の傾向を把握すれば問題ないと思います。ドイツのジョークのパターンの一つは、人畜無害で間が抜けた人物たちによる多少「突拍子もない」言動とその結末で構成されます。全体を通じた「とぼけた」感じがたまりません。独語文の枠構造のように最初の方と最後が緊密に対応しており、内側の内容が無茶苦茶という構造もよく見られます。ちなみにこのジョークのソースは、バイエルン放送の古典音楽のツイッターアカウント。超真面目なアカウントで挿入されるジョークという点も効果的。

 

さて本日のテーマは、サービス業者の選択における顧客層の重要性。ホテルや航空会社はサービス産業ですが、提供者ー受容者の二者間の関係だけではなく、他の受容者が業者の選択に大きな影響をおよぼします。

 

「ブランド」ホテルチェーンでは珍しくないかも

人種差別主義者のカップル(ビキニの女と連れの男)とホテル上級会員の間に起きた宿泊予約客間の暴行事件。舞台はヒルトン、リオデジャネイロのチェックイン・ロビー。

https://twitter.com/monty_sexton/status/1477181245750755331

https://twitter.com/monty_sexton/status/1478835261291343881

One Mile at a Time と Loyaltylobby でほぼ同時に説明記事が出ていたので、詳しくはそちらに譲ります。

Hilton Honors Diamond Check-In Turns Violent - One Mile at a Time

Drunken Rage At Hilton Copacabana In Rio De Janeiro - LoyaltyLobby

かいつまんで言うと、チェックインで前に並んでいたカップルが、後から来たダイヤモンド会員が優先されたことを Queue jumper と勘違いしたのか、その会員に向かって人種差別的な言葉を吐き、襲いかかったという話です。そのダイヤモンド会員は、反撃してカップルの男を殴り倒してしまいます。

 

この事件、巨大国際チェーンのホテルをよく使い、現場を知る人は驚かないのではありませんか。米系のチェーンで顕著ですが、この10年のイノベーションの結果、会社は大きな成長を遂げる一方で客層は低下。このビデオも、実はあちこちで起こっている事件の一例だという気がします。このポストでも暴力沙汰より、「高級」ホテルのロビーにてビキニ姿で暴れる滑稽さに注目する人が多いのではないでしょうか。

 

セキュリティは、ホテルサービスで最重要事項。この物件は水準に達しているとは言えないようです。

 

巨大ホテルチェーンの行く末

ホテルは非日常を提供する場所でした。そのため敷居の高さを維持し、イメージを保っていたのです。多頻度利用客にゴールド、ダイヤモンドなどとラベルを貼り、自分の価値が高まったと客に勘違いさせるまでは同じだとしても、

 

1. 個々の客に等しく宿泊+朝食料金の商品を販売、多頻度利用客は割引というモデル

2. 多頻度利用客には朝食無料というモデル

 

では後者の方が圧倒的に客が呼べること(タダ飯、食べ放題になびく者は多く、一人当たりが落とす金を減少させても、利用人数はそれ以上に増大すること)、

 

1. 空室の維持経費も回収できる料金で特別室を提供、特別たるイメージを保持する

2. 多頻度利用客には空きのある限りどんな部屋も提供、部屋の稼働率を高める

 

では特別室の虚像を保持する努力を怠らない限り、2.の方が売上げ全体に貢献すること(スイートという言葉になびく者達を、集団の大きさと利用頻度で考えよということ)

 

等々に着目し、巨大ホテルチェーンは客の取扱い法を標準化しました。大成功だったようで、マリオットは著しく成長できました。

 

株主は大喜びですが、現場はどう変化したかというと、それまでの客層の下の層が常に増えます。非日常性の基準が、生活に余裕がない層のそれへと次々遷移します。逆にそれまでの客層は次々逃避します。つまり客層は単調に低下します。ある点を過ぎると可処分所得の分布の関係から、尻つぼみにならざる得ないビジネスモデルに見えます。

 持続性の欠如が即、致命的な問題となるかというとそうでもありません。成長が3カ月しか見込めないなら、まともな株主から見放されますが、10年可能なら評価されます。最終的にはブランドが毀損、破壊されますが、英米流の考え方では暖簾は売買、償却されるもの。

 

アメリカらしい自由で大胆なビジネスだと感心できます。そしてその点に気づいた者は積極的に投資しても、本来の客になるはずありません。利益を上げる少数とその養分になる大多数という階層社会がぼんやり見えてきます。実にアメリカ的。

 

ヒルトンは典型的であり、たまたま発覚しただけで、米系巨大ホテルチェーンは似たような状況でしょう。マリオット系ホテルの食べ放題の朝食会場で、清掃されないテーブルの席取りに殺気だった客たちを見た経験を持つ方は多いことと思います。

 あと何年かしたら、行き詰りそうです。他の客の行状に呆れる者が、一番巨大な階層を過ぎるのが臨界点。その前に経営陣は新しいビジネスモデルを構築することでしょう。

 

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JALANA

何事も日本社会の営みはこういう風にはなりません。しかし相変わらず客層は重要です。例えば JALANA。もちろんどちらの客層が良いとか、好ましいとか言うつもりはないし、判断出来るものではありません。しかし多くの利用客が

 

私もあんな態度が取れるようになりたい

共感できる客が多い

あんな風になりたくない

あんなのと一緒にされたくない

 

と他の客に対して思ったり、感じることはあるはずです。その結果どちらでも利用可能な場合、片方を優先する者が多くなります。その蓄積が顧客層の違いを産みます。

 例えば JAL の顧客層は高齢化しているなどと言われます。統計は逆だったりするのですが、これは国内線利用客に年寄りが多いためと想像します。JGCSFC を比較すると、前者の方が年齢別会員分布は高くなるはずです。根拠は JMB-JGC の若年者優遇措置。

 類は友を呼ぶ式に違いが固定化したのだろうと、JALANA を利用する多くの人が想像すると思います。これこそ客層を意識して業者を選択する者が多いことの証左です。

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外航へ走る日本人たちにも同じ原理が働いていると思います。私 Pechedenfer も多分そこに分類されてしまいますが、JALANA の客層に異質なものを感じ、それが負担なのでしょう。全ては感じ方や心の持ち様で、明快な例を示すことは難しいのですが、漠然とした傾向を否定するのも困難。外航の会員が国内不適合者と揶揄されるのは、故無きことではありません。

 多数派集団には不適合でも、受入れてくれる集団が存在することは良いことです。この観点からは、航空自由化を全面的に歓迎します。