皆さんは航空会社の業務に協力しますか。オーバーブッキングで便変更に手を挙げるとか、アンケートへの回答は割合身近ですね。しかし現場の点検は、珍しいのではないでしょうか。
サービスの基本とは
航空会社のサービスでも、客が接する場所の清掃が行き届いていること、必須の案内が確実に行われていることは基本となります。スカイトラックスの人気投票よりはるかに重要で、会社にしてみれば現場の定期的な点検が必要です。ごく一般的には、この種の「重要だけれどもスキルが不要な」点検は社内で行います。しかし横の結束が固い航空業界。社内の人間による検査点検は、有名無実になる恐れがあります。
社内検査なら、時々の余剰人員を業務に回せるのでコスト発生はほとんどありませんが、外部委託なら客に接する全場面に毎月~毎週検査が入るので、費用が馬鹿になりません。
あくまで想像ですが、こうした状況を受けて KLM とエールフランスが考え出したシステムが、クオリティ―オブザーバー QO。搭乗客が、業務目線で現場を点検します。従業員が「にわか検査員」を丸め込むのには限界があります。もっとも懸念される従業員の連帯による骨抜きは防げます。
AF-KLM は KANTAR という会社に外部委託していますが、ほとんどはシステムの開発と管理。検査員は客から適当に選びます。これも想像ですが、客のセレクションについては、ダメな条件が存在し、それに該当しない客をランダムに選び、もし QO が首尾よく完了すれば、以後その人間はリザーブ要員。いずれにしても検査員の人件費がゼロというのは、魅力的ですね。
空港ラウンジで床の写真を撮っている上級会員
Pechedenfer はかれこれ3回実施しました。スマホの持ち歩きが要求され、業務はダウンロードしたアプリを利用します。場合によっては写真撮影が必要です。人は写らないようにしろとか、なかなかうるさいのですが、いらぬサービス精神を発揮すると、ゴミを見つけて証拠写真を撮影することになります。
パリのエールフランスラウンジで床の写真を撮っている人がいたら、間違いなく QO のにわか検査員です。
さてパンデミックになって以来、AF-KLM にも搭乗する機会がなく、スマホのアプリも立ち上げることが無かったのですが、メールは相変わらず一年に一度ぐらい届きます。KANTAR が過去にまともな報告を行った者を名簿にしていることは間違いありません。そしてリザーブ要員の関心の維持には余念がありません。
チェックイン、ラウンジ、搭乗、機内サービス(特にアナウンス、セキュリティ関係)の点検は非常に忙しく、2時間ぐらいのフライトなら休む余裕はありません。大真面目に検査です。それで謝礼は Flying Blue の 500 マイル(と Air France Shopping で現金払いに限り -20% OFF)だけなのですから、AF は経費大幅削減、KANTAR は相当儲けられます。
QO の改革は客の負担軽減
さて今週届いたメールは QO の改革のアナウンス。大きな変更点は2点。
・アプリは廃止。QO はウェブサイトにアクセスして行う。
・検査は、地上から搭乗までか、機内から降機までかのどちらかになる。
やはり検査項目が多すぎるという声があったようです。Pechedenfer のようにブログに書いて溜飲を下げる QO 検査員ばかりではないので、苦言がある程度届いていたのでしょう。その辺の事情は
"... Par ailleurs, vous nous avez suggéré de réduire le questionnaire jugé trop long..."
と控えめに表現されています。Pechedenfer は、こんなことを言った覚えはありません。英語と同じで敬称二人称は単複同じ形。数の支配が現れないと自分が指されているのか、立場の違いを表しただけなのかは区別がつきません。
つまり(ほとんど)無償労働する客の負担が軽減されました。報酬マイルがそれに応じて減らされたらオランダ的でしたが、さすがにそれはありません。
マイル以上のメリット?あるいはデメリット?
検査員の目線になると、普段は全く気がつかなかったことが次々に見つかります。もちろん「悪い点」ばかりです。興味深いのですが、これまで自分が漠然と「良い」と思っていたのに、客観的、具体的、広範に欠点を見せられ、心情的には「何だかな。」となります。
しかし良い点、悪い点を冷静に理解できた方が、良い顧客になることも確かです。こうして個人的には距離は置きつつも、特別な会社になっていくエールフランス。
たまには KLM のあら探しもしてみたいものですが、フランス語を使っているうちは無理という気がします。