バス代わりの飛行機

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

機内ではとりあえずシャンパン?(その2)

 

2021年、Champagne は売りに売れて、3億2200万本。収益と輸出の販売高の2点について新記録を達成しました。

Champagne : 322 millions de bouteilles vendues en 2021, nouveau record pour l'export

世の異変に消費動向が敏感に反応するのが嗜好品の運命ですが、COVID の結果はこんなもの。 Champagne はフォルトゥーナも籠絡したようです。

 

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使ってみましたMummグラス。心構えとか気分とかいうレベルでは、ソーテルヌかシェリーに似ています。グラスによって気分が変わることも Champagne の魅力。

 

騎士団

Champagne の騎士団(confréries)で最も有名なのは、おそらく L'Ordre des Côteaux de Champagne。Champagne の伝道、発展に寄与した人に称号を授与します。メンバーは約3,000人。称号には階級があり、下から Chevalier ou Dames-Chevalier、Officier、Chambellan となっています。さらに上には Commandeur などがありますが、一般人は Chambellan どまりです。日本でも叙任された人はかなりいて、Pechedenfer の知り合いにもいます。日本の場合、多くは輸入業者のようです。他にはライターなども対象に。

 2000年前後には金融界のトレーダーが良く叙任されていたようです。理由はおそらく「パーティーで大量に消費した(=普及に貢献した)」でしょう。皆さんもフォロアーが数万人を数える Champagne の話題専門の SNS アカントを運営して、日本語環境でその筋の人として認識されれば、叙任は遠くありません。

 

さてこの騎士団、結構な使い出があります。「騎士」たちは率先して Champagne の使徒の役割を果たします。使徒という比喩が格好つけ過ぎなら、宣教師、使者、アンバサダー、スポークスマン、パシリでも結構です。

 

L'Ordre des Côteaux de Champagne には日本語のページが存在します。

シャンパーニュ騎士団日本支部 ORDRE DES COTEAUX DE CHAMPAGNE

普通の製品を販売する人間たちとは、宣伝活動の次元が異なることが理解できると思います。

 

世界中で「騎士」たちは、グラス形状の遷移を助けたようです。しかも無自覚に。実例は昔記事にしました。

シャンパンのグラスとサービス - バス代わりの飛行機

事ある毎に「騎士」を Champagne で教育、あるいは遠隔操作し、Champagne の意に沿ってそれぞれの周囲に影響を及ぼすよう仕向けます。使徒と言うより世界中に放った手先ですね。しかし手先でも大成功すれば Légion d'honneur が待っているし、叙勲には騎士団の推薦が大きな意味を持つことでしょう、

 

広告

Champagne では宣伝は多次元で行われ、複合的です。

 「騎士」たちの前方展開は宣伝活動の重要な一部です。

 映画でよく取り上げられ、印象的、象徴的に用いられます。ストーリーの展開に欠かせない小道具なのです。英国らしさで売るはずの 007シリーズですらよい例です。

 F1の公式飲料になっています。

 「豊かな生活シーン」を必要とする多種多様な広告が頼まなくても使ってくれます。

 

トヨタプリウスは、ハリウッドの俳優たちが揃って利用するようになり、販路が爆発的に広がったと聞きますが、Champagne は普段がそんな感じ。こういうポジションですから、いわゆる広告は他の製品ほどには意味を持ちません。

 

ターゲット

市場の開拓による Champagne 成長のカギは、流行を作り、新しい習慣として定着させることでしょう。ハレの場で「定番」となることです。次のような流れはあるし、近未来も少し見えて来ます。

 

東洋の食文化に寄り添うテーブルの「付き物」として

最右翼は寿司です。アメリカを経て、欧州、アジア諸国で「イメージの良い」食べ物として定着、しかもパーティ向けでもある握り寿司、巻き寿司。(Maki:この語は普通複数で用いられ、輪切りが想起されます。)この状況は Champagne の格好のターゲット。

Que boire avec des sushis, saké, vin blanc, champagne... ?

コラージュ食文化をフランス流に完成し、世界中に拡散するパターンです。フランスの場合、起源論争は無粋極まりなく、これはこれ、あれはあれとして世界に受容されます。

 

寿司シャンは、日本人の味覚では大抵勧められない組合せになりますが、それはスタイルとして尊重、無視するところがミソ。他の流儀と衝突しないが Champagne のやり方。そして気がつくと世界スタンダードを奪われています。

 

外国(特に東洋)の祭りの「付き物」として

すでに(欧州における)中国の春節では、仕掛けられています。

3 étiquettes de vins qui prennent le Nouvel An chinois par les cornes

牛とか虎はラベルなどに入れても趣がありますが、来年のうさぎはどうなることでしょう。

 華やかな場にふさわしい酒という名声を確立しているので、祭りは簡単に進出できるマーケット。日本だとチャイナタウンの春節はもちろん、札幌雪祭り仙台七夕まつり時代祭阿波踊り、各地の花火大会はいつ狙われてもおかしくありません。祭りの当事者は(伝統に縛られ)攻略困難でも、祭りに集まる客の数を考えれば新しい市場として魅力的です。

 

年中行事の「付き物」として

地味な年中行事も、安全とは限りません。空隙に新参者は進出しやすいのです。定番飲料を持たない節分など、Champagne が簡単に定着しそうな気がします。酒なら何でもありの花見では、すでに Champagne は大きな顔をしています。この系統では雪見酒は、燗でもOKな日本酒が定着しているので入りにくく、月見シャンですかね。成人式シャンもかなり有望。

 

世界的なイベントでの「付き物」として

古くからあるのは F1 です。酒なので純然たるスポーツ大会は微妙ですが、市場開発の余地は極めて大きく、宣伝効果にも素晴らしいものがあります。欧州各国では自国の発泡酒で祝うことが増え、背を向けられた感じです。やはりターゲットは東洋になるでしょう。コミケ・シャン?

 

手が届く非日常の「付き物」として

国際線のキャビンがまさにそれ。「豪華」客船やプライベートヨットによるクルーズもおなじみ。新しい非日常が出現すれば、Champagne が所望されるという状態はまだ続くでしょう。Marriott が始めるクルーズの大衆化も観察してみましょう。

 

場違いな「付き物」として

朝シャンとか、ハイティーシャンとか、いったいどういうこと?という場でも活躍していますね。

 

場と Champagne の新しい組合せは、流行の先端を開拓する気がしませんか?これこそ Champagne が築き上げたブランド力。誰かが仕掛ければ、後を追うものが必ず出現します。Pechedenfer はこっそりやりますが、花火に Champagne は素敵です。「月下独酌は Champagne だった」とか、コピーにもなります。

 

彼らの仕掛け方は分かりますね。雑誌記事にさり気ない写真を入れたり、「騎士」を上手に送り込んだりして、場と Champagne の関係を世の中に刷り込みます。またプロ(ライター、スターシェフ etc. )を場に招待して、報道させるなんて、サブリミナム効果が働きそうです。こういう見え隠れするような方法が得意なようです。

 

そして Champagne と共に登場する「引き立て役」は多種多様。キャヴィア、フォアグラと言った古臭い相方と一緒にジリ貧になることはなく、高級チョコレート、マロングラッセなどというスイーツの他、花束、宝飾品などハレを意識できる相方の開拓は幅広く行われています。もはや誰が仕掛けているか分かりません。それは問題にならないと思います。

 

かくも多彩な方向を向いたブランド形成の努力。環境に最適化して栄華を誇るより、様々な環境である程度活動できるよう進化して、環境の激変に備えます。動物の進化になぞるとゾウと昆虫で、ゾウを選択することはないのが Champagne。一方で消費者層を見誤ることなく変化を遂げ、成長することにも長けています。

 

Champagne を取り巻く状況をみると、ブドウの過剰生産による質の低下を嘆くより、そのおかげで価格が抑制されている点を利用する方が良い人生になりそうです。