PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

顧客プログラムのブロック化

 

BA エグゼクティブクラブからも連絡

BA からのメールは、カタール航空との顧客プログラムのリンクのお知らせ。リンクできるプログラム双方から届いたわけです。

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ログインが必要な BA のサイトを見ると、他社アカウントとの結合に関するページが現れます。これを行うと、Avios をアカウント間で融通できるようになります。それ以上のメリットはなさそうです。

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同じ IAG 傘下にあり、ワンワールド加盟会社である IB のイベリアプラスとの間では数年前から Avios 移動が可能でした。スペインのグルーポンでイベリアプラスの Avios を安く購入、これをエグゼクティブクラブに移動し、JAL 国内線の特典航空券に換えるという「ルート」は日本のエグゼクティブクラブの会員にはよく知られていました。

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今回新たに QR の Privilege Club が加わりました。

 

航空連合を下地にしたブロック形成

航空会社の FFP(顧客プログラム)を充実させるためには、提携が手早く効果的。三大航空連合内では、すでに全加盟会社で特典を共通化しています。これとは別に、二社間の個別提携は古くからあります。AA と JL は1990年代からプログラムの提携を行っています。

 

最近の流行は小規模のブロック形成。三大航空連合に属する会社なら、連合内でメンバーを集めるのは当然です。それ以外に関連 LCC やら、資本関係のある会社を巻き込んでチームを組めることは大きなメリット。ブロック形成には2つの方法があります。

 

大陸式とイギリス式

一つの方法は FFP の統合です。AF (仏) と KLM (蘭) の経営統合時に発足したフライングブルーはまさにそれで、現在

AF (仏), KL (蘭), KQ (ケニア), RO (ルーマニア), SB (仏), HV (蘭) 

から構成されます。HV LCC。国籍を見ると寄せ集めです。

 他の良い例はマイルズ&モア。LH (独) が 1993 年に創始したプログラムで、現メンバーは、

LH (独), OS (墺), LX (瑞), SN (ベルギー), OU (クロアチア), LO (ポーランド), LG (ルクセンブルグ), EN (伊), EW (独)

と大所帯。大雑把に言って、オランダを除く大ドイツ圏の航空会社にベルギーやクロアチアを入れた形になっています。

 

FFP 統合は会員には利用機会の拡大になります。ただしマイル利用の基準は、渋めに設定せざる得ないでしょう。

 

もう一つの方法は IAG が進めている「マイル」の共通化。Avios は BA が始めたプログラムの通貨で、これを使う FFP を増やそうとしているのは間違いありません。現在 Avios を採用する会社は、

BA (英), IB (西), QR (カタール), EI (アイルランド), VY (西)

この場合、個々の会社は独自の FFP を持ち、会員へのサービスは違います。会社のコスト削減は限られますが、独自性は保てるので調整は比較的簡単ではないかと想像します。一方会員にとっては、プログラム間で通貨が相互に流通できなければほとんどメリットがありません。

 IAG は現在それを推進しているようです。BA, IB, QR 間では実現しました。会員のメリットは、自社会員としての特典枠が(どこかに十分な Avios があれば)すぐに使えることです。一方で FFP の統合と異なり、上級会員制度は独立したままで、ほとんど影響ないはずです。

 

この2つの流儀は、国家の在り方と対照させると面白いと思います。大陸の発想では一つの制度(+例外)の下での統合が重要なのに対して、イングランドの発想では統合の程度は連続的。ウェールズスコットランドイングランドとは別の国のままですが、他方でコモンウェルスのように独立後の植民地をつないでおく制度もよく機能しています。それぞれの FFP ブロックが向う方向が見えるようです。

 

今後は?

プログラムの魅力を向上させるには、利用機会の拡大は効果的です。しかし大陸式では、マイルの価値は渋めにならざる得ません。低い還元率で広く使えるか、高い還元率で狭く使えるかの選択です。三大航空連合加盟会社の FFP の場合、連合内にも共通特典はあり、2段構えなので、個人的には各 FFP は「高い還元率で狭く使える」の方がメリハリがあり、好ましく感じられます。

 

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イギリス式では FFP通化はまだ端緒についたばかり。Avios を FFP 間で移行可能になるのが前提。LCCVY では困難な点もありそうですが、EI だけでも移行可能になれば、(ワンワールド非加盟なので)非常に良くなります。

 会社としては Avios 管理を一括して行い、コスト削減と利益拡大を図ることも考えているのでしょう。

 上級会員を自社上級会員として迎えるかどうかという問題もあります。BA, IB, QR ワンワールドに加盟しているので、その枠組内で共通のサービスを行っているのですが、それを超えることになります。この場合もワンワールド非加盟の EI が入ってくれると、大変魅力的なグループになります。

 また Avios ブロックのメンバーは、フライングブルーとマイルズ&モアに比べると少ないので、Avios 採用のニュースも欲しい所です。

 

FFP は会員サービスの変更(=改悪)ばかり騒がれますが、提携、統合にはそれ以上に注目が必要だと思いました。