PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

トルコとトルコ航空の名称変更

 

トルコの英名変更とトルコ航空の名称変更

トルコ航空は、数年前に日本名を英文会社名に合わせて、ターキッシュエアラインズに変更しました。トルコという名称は、明治維新以前から日本に名が知られている証拠であり、そもそも国として歴史が長いことを意味します。今独立国は200を超えますが、その頃から続いている国は30程度でしょう。しかも極東の国と交流があったわけです。国としての格の高さが日本語のトルコという名詞に表れており、国名表記の変更はデリケートな問題です。

 

ところでトルコは国連に対して、自国の名称に Turkey を使わず、Türkiye を使うよう要求しました。2022年6月初頭のニュースです。日本語のトルコもチュルキエに変えるかどうかはわかりません。

À l'ONU, la Turquie adopte dorénavant son nom turc "Türkiye"

個人的な感想を述べさせてもらえれば、エルドガンの措置は遅すぎました。米語の turkey (七面鳥=トルコから入ったため) にまつわるイメージは多様ですが、良くないモノばかり。アメリカが全てではないにしろ、Türkiye の発音は英語の Turkey から少々遠く、より近い音の採用を迫るのは根拠がある話です。

 

なお GW 中のトルコ航空では、トルコの紹介ビデオが流されましたが、Türkiye が連呼されていました。重要な広報です。

 

この国名呼称変更の要求を行った 2週間後、エルドガンはトルコ航空の国際的な名称の変更も迫りました。

Erdoğan orders Turkish Airlines name change to match native spelling in national rebrand | World | News | Express.co.uk

今後は Türkiye Hava Yolları となるそうです。個人的には良い変化だと思います。

 トルコ航空は新作ビデオを製作し、ウェブサイトで視聴可能にし、機内で上映しなければなりませんね。日本での正式名称についても、「ターキッシュエアラインズ」はありえない話になります。トルコ航空に戻すか、正式名称のカタカナ表記にするかのどちらかの処置がとられるはずです。数年前の社名変更は無意味でした。

 

Sakartvelo 

それではターキッシュエアラインズになぜ変更したのかと疑問が出てきますが、これは中華航空からチャイナエアラインへの変更と同じで、英語は広く使われるから覚えてもらうのに都合が良い以外の理由はありません。自国語へのこだわりを捨てて、経済、交流を活性にして売上を向上させる決断の是非はともかく、将来の国際情勢の変化を軽視しすぎという気がしました。

 

旧ソ連の構成国では、ロシア語地名が国際的に放置されている場合が多く、ウクライナへのロシア軍の侵略を機に、ウクライナの地名がロシア語からウクライナ語に変わりました。キエフはキーウになりました。これは本人たちが公式に声を上げたのではなく、周囲が「考えてみれば当然だ」と変更を主導した事例です。

 グルジアからジョージアへの変更もロシア語排除という点では同じですが、住民たち=政府が世界に対して要求した例です。個人的には英語を意識せず、Sakartvelo とした方が良かったと思います。ジョージアは世界中で覚えやすいという思惑が優先したものと思われます。小国ならではの心配ですが、アメリカの州と紛らわしく、ここは野心的に自分たちの言葉で押し通して欲しかったと思いました。

 

「日本」は独特な状況

実は近年 nippon も、英語、仏語で普通に見かける単語です。仏語の場合、形容詞として japonais の代わりに用いられることが多く、女性形は nipponne です。これはおそらく日本側が運動したのではなく、自然発生した社会現象です。現地語をそのまま使う方が、知的であり、新鮮であるという程度の感覚ですが、今後の遷移には注目すべきです。

 仏語ではスイスは Suisse であり、形容詞も suisse なのですが、helvétique という古い形容詞も良く用いられます。ただ文章語であり、修辞の上で用いられるのが通例。標準的な用語ではありません。現在のところ、nippon の用法もやや似ています。ただ頻度は高いように思われます。

 

All Nippon Airways は英語ではないという議論は、ANA の正式呼称がアナかエーエヌエーかという議論と同様に低レベルなのでした。