搭乗秩序の重要性
大型機にもなると定員500人を超えます。これだけの人数が短時間に狭い空間の指定位置に移動するのですから、秩序立てる方法が必要となります。航空会社は、
多人数の集中から生じる混乱の回避
運航定時性の確保
顧客満足度の向上
商品開発や収益への貢献
などの観点から、日々検討を続けているものと想像します。時代と共にサービス内容、サービスの販売方法、客層、人々の時間の感覚などが変化します。その時々で最良の方法を探すのは、競争の激しい業界ですから当たり前でしょう。
興味深いことに、サービス内容、サービスの販売方法、客層、時間の感覚などは、大手キャリアの間でほとんど差がないはずなのに、搭乗プロセスは各社で違いが大きくなってきました。
そこで今日は米国の三大手の搭乗プロセスを整理してみました。この三社はお国柄か、比較的はっきりと規則を提示するためです。
優先搭乗は重要に
優先搭乗の順番は10年前よりはるかに重要になりました。大きな原因は、手荷物預入れのオプション化です。航空大手も LCC との価格競争に巻き込まれ、サービス削減による低料金を客に提示せざる得なくなりました。手荷物運送の別料金化は導入しやすいのです。今ではエコノミークラスに(場合によってはビジネスクラスでも)、サービスをギリギリまで削減したライト運賃を設け、それを選択すると手荷物預入れは有料です。これが米国はもちろん、欧州でもスタンダードになりつつあります。
結果は容易に予想できます。旅客は制限いっぱいまでキャビンに荷物を持込むことになります。しかし大手の場合、手荷物以外にハンドバックやラップトップパソコン入れは別という抜け道があります。またゲートでのチェックは LCC とは比べようもなく甘いようです。それで旅客の手荷物がキャビンロッカーの容量を超えるわけです。収納できない手荷物は係員が機内に預かることになりますが、旅客にしてみれば、降機の際に余計な時間がかかります。そこで他の客より先にキャビンに搭乗し、自分の荷物のスペースを先んじて占有することが重要になったわけです。
アメリカン航空の場合
Boarding process − Travel information − American Airlines
-介助が必要な客、2歳以下の子供を同伴する家族は、ゲートで早期搭乗を依頼することができる。
*搭乗順番*
Group 搭乗券種別
ConciergeKey members ConciergeKey
Group 1 ファースト、任務下にある米国兵士(要ID)
エグゼクティブプラチナ、2クラス国際線のビジネス
Group 2 プラチナプロ、ワンワールドエメラルド
3クラス国際線のビジネス
Group 4 ゴールド、ワンワールドルビー、AirPass
プレミアムエコノミー、Citi エグゼクティブプラチナ
Priority Boarding購入者、資格がある会社の旅客
Group 5 (preferred boarding) メインキャビンエキストラ(除べーシックエコノミー)
幾つかの AAdvantage クレカ会員
Group 6 AAdvantage 会員
Group 7 Group 7
Group 8 Group 8、欧州南米線のベーシックエコノミー
Group 9 北米、中米のベーシックエコノミー
以上です。赤字が会員資格やそれに準ずる根拠(有料、無料)です。特徴は
非常に細かい
介助が必要な客、子供連れ客は現場で対応
ConciergeKey 会員の極端な優位性
ファーストクラス=平エメラルドを超えた会員資格
優遇措置を様々なレベルでサブスクリプションとして販売
などです。Group は 9まで用意されていますが、Group 7はおそらく予備。8~9はどちらかしか該当しないでしょう。実質的に ConciergeKey + 7 Groups =8段階に分割されることになり、JGC 会員の Group 3 は4番目です。自分の座席付近にはとりあえず荷物スペースを確保できそうです。
ユナイテッド航空の場合
前搭乗
一人旅行の子供、障害者、任務下の軍人、United Global Services 会員、2歳以下の子供を同伴する家族、1K 会員
Group 1
プラチナ会員、ゴールド会員、スターアライアンスゴールド会員、ポラリス, ファースト, ビジネスの搭乗客
Group 2
シルバー会員、スターアライアンスシルバー会員、Premier AcessやPriority Boading購入者、United Explorer, Club, Presidential Plus, Awards Card会員
Group 3-5
エコノミープラス、エコノミー、ベーシックエコノミーの搭乗客
となります。赤字が会員資格やそれに準ずる根拠(有料、無料)です。特徴は、
比較的大雑把
キャビンクラスに対して、会員の優位性が高い
1K 会員は他社の相当会員に比べ、かなり優先度が高い
などです。搭乗は実際に6段階で行われることが多そうです。SFC 会員を含めスターアライアンスゴールドはそのうち2番目の搭乗であるため、かなり優位です。JGC + SFC 両持ちの方は、優先搭乗に限って言えばユナイテッドの利用の方が良さそうな気がします。それどころかユナイテッド利用のスターアライアンスゴールドは、アメリカン利用時の平エメラルドより優遇されていそうです。
デルタ航空の場合
搭乗ゾーン 資格
前搭乗 介助や搭乗に時間を要する客
任務下にある米国兵士(要ID)
デルタワンまたはファースト デルタワン会員、ファーストクラス
ダイヤモンド ダイヤモンド会員
プレミアムセレクト プレミアムセレクト客
車椅子移動で早期アクセスが必要な客
コンフォート+ コンフォート+客
スカイプライオリティ プラチナ会員、ゴールド会員、
FBプラチナ, ゴールド会員、VAゴールド会員
スカイチームエリートプラス会員
LATAM ブラックシグナチャー, ブラック, プラチナ
WestJet プラチナ, ゴールドエリート
メインキャビン1 シルバー会員、デルタコーポレート客
デルタクレカ(ゴールド, プラチナ, リザーブ)会員
デルタアメックス会員、FBシルバー会員
VAシルバー会員、スカイチームエリート会員
LATAMゴールド+会員、WestJetシルバーエリート会員
メインキャビン2 メインキャビン客
メインキャビン3 メインキャビンを T, X, V で予約した客
ベーシックエコノミー ベーシックエコノミー客(予約クラスE)
です。FB は Air France - KLM のフライングブルー、VA は Virgin Atlantic のフライングクラブで、赤字が会員資格やそれに準ずる根拠(有料、無料)です。特徴は、
従来のエコノミークラスを支払金額別に3段階
エコノミークラスの前に会員がそのレベルに応じて優先搭乗
コンフォート+はさらに優先
プレミアムセレクトはさらに優先
ダイヤモンド会員はその上
ファーストクラスに並ぶのはデルタワン会員
です。複雑ですが、アメリカンより分かりやすく感じました。
現在デルタ航空のキャビンは上から
ファースト (他社のビジネスクラス)
デルタプレミアムセレクト (他社のプレミアムエコノミー)
デルタコンフォート+ (他社のバルクヘッドや非常口席)
メインキャビン=エコノミークラス
となっています。優先搭乗では、プレミアムエコノミーレベルのキャビンの客はかなり優遇されていることになります。バルクヘッド程度の搭乗がスカイチームエリートプラスと同じレベルで扱われます。エコノミークラスのカテゴリーで余計に金を払っても良いという客は、三社の中では最も優遇されています。
どのキャビンクラスがどの会員レベルに並ぶかという問題は、会社より大きく異なります。米国ではありませんが、エールフランス欧州便ではビジネスクラスと最上級会員(Ultimate, Club2000)が並び、FBプラチナ, ゴールドを含むスカイチームエリートプラスはその次、エコノミークラスの直前です。シンガポール航空もスターアライアンスゴールドは、ビジネスクラス搭乗の後に案内されることが多かったように記憶しています。
米国の大手3社も横並びだとよく言われますが、優先搭乗一つとっても好き嫌いがはっきりしそうな程度に違います。