PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

Ibis Würzburg City(イビス・ヴュルツブルク・シティ)

 

ホテルの宿泊記はあまり書きませんが、このホテルは特殊でした。

 

実に意外なことに、Würzburg のホテルに宿泊するのはこれが初めて。マイン川、カトリック司教座、バロック建築、フランケンワイン、大学町といろいろな顔を持つ都市ですが、規模は小さく、市街はコンパクト。旧市街の城壁は、ご多聞に漏れず壊され道路になっています。Würzburg はそれに沿って緑地を整備しており、旧市街はその緑地とマイン川で囲まれています。

 

さて世界的なホテルチェーンが進出する時の立地は、ある種のパターンがあります。不動産価格を抑えることはもちろん重要。ミッドレンジから下のホテルは、やや微妙な立地にあることが多いのです。

 欧州でみられる一つの典型は、市城壁の外で公共交通の便が良い場所。歴史的に鉄道や道路の整備が市街形成のずっと後であった欧州の都市では、バスターミナルや鉄道駅が都市中心部からやや離れており、こういう場所を見つけるのはそれほど難しくないはずです。周辺の土地利用は、ショッピングセンター、オフィス街などです。

 

Ibis Würzburg City もそのような立地。中央駅から徒歩15分ぐらい。緑地や環状道路の外。幹線道の結節点にあります。隣はシネマコンプレックス。大学地区と会議場が近いので、そちら方面へ用務がある人には便利です。

 

それだけだと安く滞在できること以外に魅力を感じません。しかしこの物件、マイン川の畔にあります。そして DB の鉄道路線は、音が何とか聞こえるぐらいの距離。Würzburg を知る人ならピンとくるかもしれませんが、Stein の畑を下から上まで遮るものがない立地なのです。

 

Stein はフランケンワインを象徴する畑であり、一番良い畑と目されます。Würzburg 北側の山塊、日当たりのよい斜面一面に広がる印象的な畑。良いワイン畑の多くは、このように見るからに堂々としたオーラを放ちます。

 

今年初めて知ったのですが、Würzburg 司教は収穫後の Stein のブドウを祝福するようです。以下は 9月 7日のツイートで、今年の収穫開始のすぐ後でしょう。

 

司教のかつての権力は強大で、マイン川対岸にある中世の要塞 Festung Marienburg は昔の居城。

 

要塞が時代にそぐわなくなり、市街の反対側に建てたのが、バロック宮殿の最高峰との呼び声が高い Residenz です。

 

さてこの Ibis ホテル、ドイツに13あるワイン生産の法定地方で一番の畑を望むわけです。その眺望を売りにしないのは実に不思議。フランケン地方におけるワインツーリズムはまだまだ未開拓なのでしょう。

 

実際のところ部屋の窓には網戸が張ってあり、Ibis はこの眺望を観光資源とは全く考えていないことがわかります。

逆に言うとこの地方のワインに関心がある客は、非常にお得に宿泊できます。

 

各階の部屋数が同じなので、すべて同じフロアプランだと予想されます。これは未確認なので注意が必要ですが、畑がよく見える部屋は ●06~●14 になります。

 

さてここまで条件がそろうと、このホテルで行うべきことはただ一つ。Stein を眺めながら、Stein を空ける以外ありません。幸いこの畑は 85 ha と広く、生産量はそこそこあるのでワインを探すのは容易です。

単一畑のワインですから、価格はそれなりに(最低15€ぐらい)します。部屋のゴブレットではなく、ワイングラスを用意したいところ。今回もグラスを持参するのを忘れていました。

 

9月も下旬に入り、夏は終わりですが、夕方の空気は最高でした。大気の流れ、匂い、陽の光と気温のゆっくりとした低下が複合して感じられ、この爽快さは南ドイツの夏に特有のものです。風の流れや陽当たりに工夫して、ゆったりと過ごす夏の夕べはこの土地ならではの生きる喜び。

 

部屋内部は普通の Ibis。面積は広め、大きめの机があり、バスタブは無し。

●06~●14 はすべて同じつくりでしょう。

次回 Würzburg に宿泊することがあっても、間違いなくここですね。ちなみに DB の路線もよく見えるので、鉄道ファンの宿泊にも向いています。