バス代わりの飛行機

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

う・な・ぎの柏

千葉県は大雑把に言って、下総、上総、安房が一つに束ねられて成立しました。大雑把と言ったわけは、下総は国境の引き直しが結構あり、律令制の初期からずいぶん縮小しています。有名な話ですが、墨田区江戸川区葛飾区にあたる土地は江戸幕府により下総国から武蔵国編入されました。北の部分と北西の部分は現在、栃木県や茨城県

 

江戸幕府以前は、現在の利根川手賀沼印旛沼霞ヶ浦を中心に湿地帯が広がっていたようです。つまり下総とは巨大な水たまり。食料増産に躍起だった江戸幕府のおかげで、広大な水田に変わりました。ラムサール条約の300年以上も前の話。日本史上最大規模の環境破壊です。

 明治維新後は、丘陵地の農地化も進められました。そして高度成長期以降、低地も丘陵も、農地も藪もどんどん宅地に変わっています。開拓だ、土地利用だという人間が集まり、仕方がないのかもしれませんが、伝統という点で個性を見つけるのが難しくなっているようにも感じられます。

 

それでも土地自身が昔を記憶しているように見えることがあります。例えば、うなぎ屋。柏、我孫子、佐倉、成田、佐原にかけて、うなぎ屋が質量ともに充実しています。低湿地帯からその畔の部分にあたるのではないでしょうか。

 

半年ほど前に松戸宿を取り上げましたが、今度は鰻を求めて下総国はさらに奥地へと分け入ります。当ブログとの接点は、柏飛行場とか下総航空基地ぐらいしか思い浮かばない柏の探訪です。

 

最初は柏駅西口から徒歩 5分ぐらいにある大和田。国道6号に面しています。昼飯時に到着したら、隣のラーメン屋(王道家)ほどではないものの、待っている人がいます。

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この店のポリシーは

・養殖うなぎ坂東太郎を使用

・注文を受けてから鰻を捌き始める。

・米も鰻重を出す時間を見計らって炊き始める

・店内は予約不可。持ち帰りは予約可。

でした。昼飯時に一巡目で店が一杯になると、その次にうな重にありつけるのは、90分~100分後になります。まさにそういう巡り合わせでしたが、心の準備はできています。

 待合用椅子が数客用意されていて、昔の柏の写真集なども置いてあります。手に取る客は皆無。(おそらく地元の)女性客が、予約したうな重を受け取りに次々と来ます。下総マダムのうなぎ屋利用術に感心しました。長時間待つのは、比較的遠方から来た客でしょう。

 

50分ほど待ち、幸運にも窓際の席に案内されました。撮影にはおあつらえ向け。

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着席後も延々と待たされますが、これぞうなぎ屋。のんびり待つのが嗜み。

 

問題の大串うな重。見た目にもタレが少なく、焼き色は浅め。

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臭みの無い鰻で、非常に上品な油です。それに合わせてタレも上品に仕上げてあります。普通のうな丼、うな重と同じ系統の甘いタレですが、大変薄く感じます。米は確かにピンポイントを狙って炊き上げたという感じです。おそらく下総の米ですが、重々しくなっていません。

 鍵となるのは、銚子で養殖される坂東太郎。うな丼、うな重は代表的な B級グルメですが、この鰻は高級料理に脱皮しようとしているかのようです。ここまで澄んだ味わいだと、いろいろな調理法がありそうです。この鰻を扱う店が増えると面白いなと思いました。

 この鰻屋は、鰻好きには外せないと思います。

 

次はしんきょう東武アーバンパークライン船橋に向かって2つ目の増尾駅で下車、徒歩2分ぐらいの場所にあります。

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駅近ですが、そもそも住宅地であり、古そうな商店街の裏手です。建物は古く、不動産に経費はかかっていない模様。この店は生産量が小さいブランド鰻、大井川共水うなぎを扱う数少ない店の一つ。坂東太郎を出す大和田もそうですが、ブランド鰻を扱う店は真面目でプロとしてのこだわりが半端ではありません。経費がかからない出店は、大変良いことです。

 昼飯時に行くと、炭で焼く鰻の煙を外に出して「旨そうな匂い」を漂わせる古典的な店。町の自慢ではないでしょうか。

 

客が注文してから鰻を捌き始めます。オープンキッチンです。運が良ければ、炭の火起しも見られます。

 それなりの時間を待たされるのは当たり前ですが、そういう点がメニューや店頭に簡単明瞭に述べられています。あくまで客本位。プロの矜持ですね。

 常連は、酒をちびりちびりやって待つのでしょう。神亀を取り揃えています。しかし放心して待つのが Pechedenfer 流。ドキドキ...もしませんし、時間の観念も意識から消えています。

 

到着した共水うなぎうな重。米は土鍋炊き。

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小ぶりのものしか入荷しなかったので一尾半入れましたと、店主の弁。この鰻独特のテキスチャーが印象的。油は澄んでいて旨味の多い鰻ですね。甘ダレは少し薄め。松戸や柏の味つけの特徴ですが、ピリ辛や発酵調味料に頼ったアクセント付けに消極的。そのためか、鰻自体の味わいがかなり残りました。記憶に残る味です。

 

和歌山産の山椒はフレッシュで、この鰻によく合いました。おそらく京都産より良い結果になったのではないかと思います。

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細かい点まで気を使っていることが分かりやすく伝わってきます。次回訪問する時は、コメの産地を聞こうと思いました。

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土地開発には奥ゆかしい東武鉄道。駅近でも住みやすいのでしょうが、この店が無ければ何をしに行くのか分からないような街です。逆に言うと、ウナギ巡礼にぴったりでした。

 

最後に柏駅に戻り、柏銀座通りの外れにある芳野屋。高い評判を維持する店です。

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訪問後ほどなくして、この店は柏駅近くに移転しました。現在は旧そごうの裏手、サンサン通り沿いで営業しています。

 

昼の営業開始時刻の席を予約したところ、客は他に2人でした。ここも注文を受けてから捌き始める「普通の鰻屋」。白焼せず、生の鰻を蒸してから焼く調理法とのことです。

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身がふっくらとして、口の中でとろけるような感じが特徴的。味つけは突出した個性があるわけではなく、東京の味覚から普通に想像できるうな重です。技術の卓越した方が調理している感じがしました。

 うまい鰻を食べたいという人がいたら、連れて行きたい、そんなお店でした。

 

未知の土地を探訪して強い印象が残ったら、お土産です。うなぎ屋では持ち帰りも可能ですが、東京までもって帰ると冷めます。グルメというカテゴリー、ここにしかないという独自性から選ぶと、こちら。

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好評を博している中華料理店の辣油です。痺れる系統の辛さで、麻婆豆腐を enhance したい時に重宝しそう。柏駅の JR 改札口近くの売店で購入しました。お店については、時々このブログにコメントを頂いている方が紹介されています

 

外食に関しては、全国区で著名な店がちらほらある土地。♬合言葉はか・し・わ。まだまだ探検の余地があります。

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