PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

パイロットとA380

皆さんはGWをどうお過ごしでしょうか。「2倍の今年を逃すわけには...」と思っても口にできず、発信できず、孤独な修行を行っているのでしょうか。平時ならこのキャンペーンのインパクトは相当なものですが、喪中のようにならざるえません。

 修行なんて、いかに金を使わないかがポイント。多くは単独行動で口も利かず、空港からも出ません。感染拡大阻止原理主義者も、それほど目くじら立てることはないと思います。歩行者の間をぬってジョギングするランナー(当然マスクなし)など、もっと声を立てるべき身勝手な行動は数多くあると思います。

 多くの旅好きは旅行に出かけられず、しょげているのではないでしょうか。こういう苦しみ(?)を表すのに、ドイツ語には Fernweh なんて単語があります。オフには休暇と旅行の話しかできない人間が多いドイツ。ドイツ語ならではの世界だと思っていましたが、その感覚がわかる日が来るとは。

 

知事の言いつけ通り、3日分の買い物を1回で済ませたところ、1日ですべて食べてしまったなんて事例も数多く発生していることでしょう。晩酌が朝夕の1日2回になったとか、ブログの投稿が突然増えたとか、生活のリズムを崩した人が多いと思います。

 一方、外界では偏狭な正義感が猛威を振るっています。ヤフコメやツイッターは、繁盛至極。慶賀の至りです。IT系の企業は、災害、災禍に抵抗性がありますね。

 

大掃除をして断捨離に走ったとか、ついでに人間関係も整理したとかいう人も多いことでしょう。私めも久しぶりに酒庫をチェック。すると空けた方が良さそうというボトルがいくつか見つかりました。例えば、

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2005は骨格がしっかりした良い年でしたが、作り手のスタイルを考えると、もう老境に入っていそうな気がします。

  

Médoc なんかは50年でも100年でも取っておけば良いのですが、Bourgogneは常に頭を悩ませることになります。

 しかしこのご時世。「コロナ鍋*で一杯」なんてオヤジギャグを飛ばすわけにもいかず、開ける機会を作ることが困難。何をやるにしても、困難が付きまとう疫病流行。

*: 誰か説得力のあるレシピを考えてください。

 

さてこのパンデミックで世界中の航空会社が苦境に陥ることは論をまたず、報道もこの共通認識を前提にしています。資金繰りにまつわる救済劇はそれこそ一斉に出てきましたが、人減らしの方は三々五々発表されます。

 

ブリティッシュ・エアウェイズは1週間ほど前、現在42,000人いる従業員のうち、12,000人を削減すると発表しました。

Coronavirus: British Airways prévoit de supprimer 12.000 emplois

うちパイロットは4,346人中、1,136人となります。

British Airways veut se séparer d'un quart de ses pilotes

「同じような割合でしょ。特に珍しくない。」という見方をしがちですが、半年前、パイロットは増大する航空需要に養成が追い付かず、どんなにケチな LCC でも高給を提示して雇わざる得ない職種だったことを思い出せば、この人材市場の変化の意味に気が付くと思います。

 ちょっと前まで高給取り、どこでも人材争奪戦という花形職業が、人余り、リストラの先頭ランナーになります。ネットを培地に増殖する僻みっぽい人達には、上質なネタになりそうです。

 

エアバス A380 も好んでメディアに取り上げられます。この機材は持て余す会社だらけになり、すでに製造中止になっています。メディアが愛するのは、小さな真実よりも極端な変化ですが、その役回りには力不足。旬を過ぎています。しかしながら、夢の大型機材としてデビューしたものの、疫病にとどめを刺されるというストーリーは愛されるようです。

 表現にも大きな変化が見られます。かつては大型客船 paquebot にまで喩えられたA380ですが、今や gros porteur です。

Confinement longue durée pour les A380 de British Airways à Châteauroux - Aerobuzz

A380, le paquebot désert - Libération

gros は「大きい」ですが、粗野な感じを伴います。gros macho、gros buveur、gros con などと使われます。日本語では「図体のバカでかい輸送機」ぐらいの意味にも取れます。

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栄枯盛衰という言葉は仰々しい文脈で使われますが、身近かつ頻繁に起きるものなのですね。実感しました。パンデミックのように、規模と深刻さの二点で「想定外の」社会変動が起きれば一発です。いろいろ不安に思わず、目の前の問題には合理的に対処、1年後社会がどうなっているのか、変化を楽しみにして待つのが前向きな態度ですかね。