PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

フライング・ブルーの新しい提携航空会社

このブログは、「バス」をモデルに航空機旅行を考えていますが、格安に限定しているわけではありません。もちろん価格は最も重要なので、LCCは日本でも成長すると思いますが、重要なのは気楽に遠くへ行けることだと思います。5,000 kmの旅が50 kmの旅と同様に考えられるようになれば、とも思います。

 例えばここ30年を考えてみても、個人所得に比較して旅行は相当安くなりました。エコノミークラスだけでなく、ビジネスクラスも昔に比べればずいぶん身近になっています。その割には旅行は伸びていないのではないでしょうか。旅行が夢でなくなったので、その分出費にシビアになったためとも言えます。

 

50年前、東海道新幹線ができるまで、東京から大阪への日帰り出張は極めて例外的な話でした。今は福岡でも日帰りできます。東京から九州や北海道へ旅行するなどということは、一生にそうあることではなかったはずです。今は学生旅行です。金銭にも時間にも余裕がある人は、週末別荘地で過ごすということが今までも可能でした。別荘地は例えば鎌倉や大磯です。現在は週末アジアです。

 

時代とともに意識の基準は変わります。歴史上、現代人が一番気楽に動けますし、その行動範囲を広げていくことは旅行に関心のある者の宿命です。

 

さて今回の記事は例外的です。バスではなくタクシーに喩える方が正しい場合です。

 

Air FranceのFFP、フライングブルー提携航空会社のリストの最後に見慣れない航空会社が加わっていることに気が付きました。7月のことです。Wijetと言う会社です。

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この航空会社はプライベートジェットの会社のようです。他の提携航空会社と毛並みが違うので、クリックして詳しい説明を見ました。

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エア・タクシーを標榜していて、単一価格、単一機材、単一サービスをモットーとしています。料金は移動時間で決まっており、往復でチャーターした場合、

1時間あたり 2,400€

です。これは1人で利用する場合の運賃で、2人目からは

1時間あたり 600€/人追加

されます。定員は4名です。欧州と北アフリカの1,200もの空港に飛べます。

 

当然というか、スカイチームには加盟していません。したがって、フライングブルーにマイルを貯めることはできますが、上級会員になるためのマイルや搭乗回数にはカウントとされません。

 

Wijetをフライングブルーと関係なく使うのは自由です。パリの空港は市内にほど近いLe Bourget空港(LBG、Porte de la Chapelleまで車で12分ぐらい。この航空会社の拠点。ちなみに今年で開港100年。経営はADP。)が本拠地です。他の都市も定期旅客便が就航できない小さい空港、ただしアクセスは非常に良い空港、を使います。例えばLyonはBron空港です。プライベートジェットは、基本的に点から点の移動、時間の節約を旨とするので、CDGのような「遠い空港」を使うことは、特別な理由がない限りありません。まさに空のタクシーです。

 

プライベートジェットでも大陸間移動は可能ですが、コストが大きくなります。一方、Air Franceの欧州便にはファーストクラスがなく、ビジネスクラスもシートはエコノミーと同じという運用です。この状態では、長距離便ファーストクラスを使ったり、短中距離プライベートジェットを使う旅客層は、別の大陸から欧州の中小都市に向かう場合、どこかで妥協せざる得ません。Air Franceはこの層を取り逃していたのです。

 

フライングブルーと関連付けるための利用には制限があります。Air FranceのファーストクラスでCDGへ着いた後、Wijetに乗継ぐか、その逆の利用が必須です。この戦略的提携でAir Franceは、アメリカやアジアから欧州・北アフリカの中小都市への移動において、最上レベルのサービスを提供できる体制ができました。

 

専用車でCDG内のターミナルを移動し、乗継ぎます。希望すればファーストクラス用ラウンジも使えるとありますが、プライベートジェットは旅客の都合で飛びますから、基本的に待ち時間はないはずです。したがって別の大陸から飛んできて、CDGで待合せ、Wijetに乗継ぐような場合以外、ラウンジは不要です。

 

ちなみにフライングブルーに積算されるマイルですが、Delta航空の「スカイマイル」の新制度と同様、払った金額ベースです。往復の場合は、1時間当たり1,800マイルです。シルバー会員なら1.5倍、ゴールド会員なら1.75倍、プラチナ会員なら2倍になるのは、他の提携会社への搭乗と同じです。

 

Wijet機内では飲み食いはタダのようですが、Champagne (Veuve Clicquot)をはじめとする各種の飲料にPierre Herméのスナックが用意されています。他に雑誌や新聞が用意され、衛星電話が使えます。 シャワーやジャグジーはありません。短時間ですから地味なものです。有料で市内への移動や機内食の用意も付けることができます。この辺は普通のプライベートジェットです。

 

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実はAir Franceは出遅れていて、Lufthansaはプライベートジェットをすでに運用しています。就航地も欧州と北アフリカの1,000空港です。もちろん長距離ファーストクラスとの接続を考慮しており、例えばFRAのファーストクラス専用ターミナルはそのためにも機能しているのではないでしょうか。

 

飛行機旅行では、(大型)旅客機を所有して好きな時間に使うというレベルが最高ですが、これは特権階級か、個人の能力でとてつもなくのし上がった人間にのみ許されます。プライベートジェットが次に来るわけですが、支払い能力のある多数の無名の人間が利用するということから、大衆レベルに分類されます。もちろん料金を考えると、好奇心で利用するような人間は「旅行を気楽に考える」というより、「人生をお気楽に考えている」と言われそうですが、一生に一度のバカとしては、12,000€で2時間の距離を往復するなんて平凡な話ではありませんか。(2人分)例えば、非常に良いRomanée Conti一本を開けることに匹敵します。無駄遣いにおける選択の問題です。

 

2度目の新婚旅行、銀婚式、宝くじの当選の折などには考えても良いかもしれませんね。なおパリまではAir Franceのファーストクラスですのでお忘れなく。