キャセイパシフィックとキャセイドラゴンは経営は一体、路線は補完的です。ドラゴン航空はLCCではないので、JALとJetstarほどの差はありません。機内サービスでは、機内食からチーズ・フルーツが省かれ、ドリンクは種類が減っているのが特徴で、おそらく乗務員を少なくしています。それに加え、サービスそのものでは、余計なことはしないという方針がありありと見えます。
しかしながら、ワインの構成だけはキャセイのビジネスクラスと同じです。これは
Champagne、フランス白、新世界白、フランス赤、新世界赤、ビンテージポート
ですから、フルサービスキャリアのビジネスクラスとしては、上の部類です。
個々のワインの種類を少し変えて、キャセイより少し価格を抑えています。
Champagneは、
Taittinger Brut Réserve
ですが、これは本家CXより価格は下でしょうが、必ずしも品質が劣るとは言えません。フランス白枠の
Michel Delhommeau, Muscadet Sèvre-et-Maine sur lie, Cuvée Harmonie 2014
は、確かにフランスの輸出用AOCとしては、最安な部類。しかし選択が非常に重要なAOC。
明るい黄色、青リンゴやレモン、フレッシュな花の香りが顕著です。口に含むと青いレモン、柑橘類の皮、ライチなどの香りも。酸は十分あり、余韻は長めですが、少々ごつごつした粗野さもあります。前菜のサラダは海の幸と生野菜でしたが、合うとも合わないとも言えません。
変な話ですが、このワインと組合せることにより、この皿は非常に満足できる前菜となりました。キャセイの大抵の前菜よりは満足できます。
CaliforniaのChardonnayは試せず。
赤ワインのShirazは、キャセイがBarossa, Australiaのモノであるのに対して、チリ産。国際的には、評判の違いや価格の違いは明らか。個別には逆転もあるというレベルです。
フランス赤の呼称上の名称は、Bordeaux Supérieurで
Château Sainte Marie (v.v.) 2014
です。l'Entre-deux-Mersの地区に畑はあるらしく、確かにそんな味わいがします。この呼称は白だけに与え、この地区で取れた赤ワインには使えません。いくつかの呼称が可能なのですが、一番通りの良いBordeaux Supérieurで売られることが多いと思います。
この記事を書くにあたって、l'Entre-deux-Mersの赤ワインについて調べたのですが、実は生産量はここ40年ぐらい漸減している程度で、それほど変わっていません。この土地の白ワインは大変魅力的ですが、赤も捨てられません。それならなぜ赤にAOCの使用を許さないのか、よくわかりません。いろいろな事情がありそうです。
縁は紫がかった赤。きれいな足を持ちます。黒スグリ、赤スグリ、キイチゴなどに加えハーブのアロマ。merlotらしい青草の香りも少し感じられます。口に含むと黒サクランボや黒スグリ、キイチゴのジャムのようで、チョコレートのような風味、スミレの香りも混ざります。酸はそれほど強くなくて、余韻も長くありません。ほぼ間違いなく、樽熟成を行っています。
合鴨のローストをさらに煮込んだものですが、これにはShirazの方が良かった気がします。青臭い野菜も入っているので、Bordeauxが合わないとは言えません。
さてワインの体験全般がキャセイと比べて劣るかと言うと、そうでもありません。ワインの満足度を決定する要因として、価格は大したことないことが良くわかります。
一方、ワインの場合サービスが大事で、余計な一言二言が付いてくるキャセイの方が、より良いサービスです。この点についてはドラゴン航空は、足元にも及びません。
ワインの説明は書いた人間が違うらしく、キャセイと比べて、ずいぶん主観的なことが書かれています。これはこれで楽しめます。
ドラゴン航空は、キャセイの劣化版とならないよう、自らの立場ならではの魅力を提供しようと努力していることは理解できました。