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オプションタウンの謎:いったい何者?

Optiontown (OT)はTenon & Groove, LLCというアメリカの会社が運営しています。個人客相手の旅行業者というより、航空会社が顧客だと考えた方が良さそうな業態です。業務は、言ってみれば「航空会社の余剰サービスの分解と切売り」です。この会社の新しい点は、企業コンサルタントか、せいぜい商品販売プログラムの開発業者のような存在が、個々の乗客とのインターフェイスになって、サービスの販売にまで踏み込んでいる事だろうと思います。

 

OTの自己紹介を読むと、使われている用語がまるで投資ファンドの宣伝のようです。

http://www.optiontown.com/jsp/MTP/MTP_About_Us.jsp

 

航空会社の商品は「様々なサービスのセット」です。旅客と荷物を「運ぶ」という単純なサービスに、次第に付加サービスが加わった結果、現在はかなり肥大したセットとなっています。ビジネスクラスというカテゴリー自体、割引運賃を作った後、正規運賃との差が次第に広がり、正規運賃を払った人への差別化されたサービスとして生まれています。

 

さて航空運送事業では、コストの大部分(ざっくり言って60%)が固定費であること、商品在庫が存在しないことの2つの特徴が際立っています。在庫が存在しない=座席は指定された時間にしか存在しないので、売れ残りを別の機会に売るということが不可能。この2つの特徴から、航空機を含む設備や人的資源を常時フルに活用することが経営上極めて大切になります。搭乗率が業績の指標となっているのはこのためです。

 

ここからがOTの基本となるところです。

 航空会社の提供するサービスを要素に分解すると、非常に種類が多いことがわかります。例えば、ビジネスクラスにしても、人と荷を安全に運ぶと言うこと以外に、

座席、飲食、トイレ、毛布や枕、アメニティ、雑誌・新聞

優先チェックイン、優先レーン、優先搭乗、荷の超過、荷の優先扱い、ラウンジ利用

付加マイレージ

などがエコノミーのサービスに加わったり、上質になっている要素です。もっと細かく分けることも可能です。OTの考え方では、航空会社のサービスの単位は、供給する座席ではなく、これらのサービス要素です。サービス要素を機動的に販売することにより、収入を増やすことが可能です。

 

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もちろんビジネスクラスの毛布利用を販売しても、エコノミーの客は買いません。商品の魅力、客の支払意志といった消費行動の分析から、サービス要素を再構成してセットにし、適正な価格で販売する必要があります。かなりのリサーチと特殊な計算のノウハウが必要とされそうです。

 

普通だったら、航空会社相手の業種になりそうなものですが、ビジネスモデルが革新的だったのか、航空会社と個人客との間に立って、直接金を扱う事業にしています。

 

ビジネスクラス(やファーストクラス)のサービスは巨大化した恐竜のような存在です。サービスをばら売り、あるいは再構成後セット販売して、利益を最適化するという考え方は、企業買収、事業再編、事業の切売りに似ています。

 

航空会社としては、OTへの委託費用が合理的なら、売れ残ったサービスと余力の全てを任せて、収益を最適化してもらうのが、四半期の数字を上げるためには効果的でしょう。しかしながら、これは経営者にとって麻薬のようなもので、価格の決定権や、事業の自由度を著しく下げてしまいます。最終的には、大した元手なしにOTが会社の事業を管理、自分たちは下働きという状態になることは容易に想像できます。

 

ベトナム航空で、ビジネスクラスの座席数に相当余裕があっても、OTで販売されるUToは僅かなのは、全く不思議ありません。そもそも体力のある大手はOTを使っていません。自分たちでサービスの再構成を行う力があると思っているはずです。OTほどラジカルにはできませんが、工夫は表れています。

ビジネス空席へのアップグレードをオークションで販売するキャセイパシフックの試みは、まさにUToに匹敵します。また、より多額の支払いを行った人を上級会員(さまざまなサービス要素の受容者)にするデルタのFFPの変更も、広い意味では同様のサービス改革でしょう。

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航空会社はOTの支配を避けたいので、対象座席を絞るでしょう。アップグレードは高頻度では起きそうにありません。私の経験もそれを裏付けますが、16席の容量で、1件か2件ではないでしょうか。

 

OTのパートナー会社は、様子見、販売の多様性の確保、ノウハウの習得などの動機からOTと契約しているではないかと想像します。

 

ここではベトナム航空に関連するUToを例にしましたが、OTのOption商品は9種類有り、過剰荷物運送の低価格の販売などもあります。運べる荷物が大きく異なると、旅行計画を立てるのに困らないのかと思いますが、需要があるのでしょう。エアアジアでは、6つのOptionを販売していて、複数予約オプション(MBo)とか、フライト選択オプション(PFo)とか、僅かな金額で予約時に複数便を押さえ、期日(前日)までに一つに決めるというオプションも含まれます。ますます金融工学の手練れたちの影がちらつきます。

 

搭乗客としてはサービスの切売りは歓迎できますし、お金の流れも透明なので利用しない手はありません。ただし仕組みをよく理解して、期待しすぎないことが大切なようです。