PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

真ん中席(その1)

 

旅客機のエコノミークラス用のシートは 3列が多くなっています。シート数からいうとおそらく世界一でしょう。ファーストクラスのみ使う客には関係ない話ですが、そのタイプのシートは両隣に他人が座るかどうかで移動の快適度が異なります。窓側でもない通路側でもない真ん中席は両側から挟まれることになり、一人旅だとそれなりに窮屈。一般的には人気がありません。本日はそんな真ん中席にまつわる話。

 

シートの差が確率になる Lufthansa 短距離ビジネスクラス

欧州キャリアは、短距離~中距離路線をエアバスA320シリーズで運航します。最近A220も出現しましたが、まだ多くありません。A320シリーズの標準的シート配列は、中央が通路で両側に3列ずつシートが並ぶ3-3の配列。そしてBA, LH, AF, KL などほとんどのメジャーキャリアが、全て3-3のシート配列の機材を使います。ビジネスクラスは前方座席を「需要に応じて」特別区画として後方座席とカーテンなどで仕切り、ビジネスクラスの区画では中央席をブロックするのが通例です。シート自体はエコノミークラスと全く変わりません。この方法は利便性が高く、経費削減に貢献しているはずです。

 この会社側の融通が優先するキャビン構成は、アジアでは一般的ではありません。3-3のシート配置の単通路機材でもビジネスクラスには大型シートを設置、2-2のシート配列とする方が普通です。

 

さて欧州ビジネスクラスは BA のように中央席にテーブルを固定、物理的にブロックする会社もあれば、単に空席としている AF のような会社もあります。いずれにしてもA320シリーズのビジネスクラスは、窓側席か通路側席しか販売しません。

 

ところがルフトハンザがビジネスクラスの中央席を空席保証から空席優先に変えると報告がありました。

Lufthansa Short Haul Business Class Now Has The Empty Middle Seat Only “Where Available” !? - LoyaltyLobby

ビジネスクラスのキャビンは機内食があったり、アルコールドリンクが無料だったり、エコノミークラスとはサービスが異なります。すると基本的には

・クラスに無関係に機材が満席になるまで席を販売する

ビジネスクラスとして販売できた席の区画を区分する

という調整になります。ビジネスクラスが多く売れるかどうかに無関係に、ビジネスクラスの中央席は使われることになります。またシートの事前指定も制限が大きくなることでしょう。

 

単通路機材による運航路線(北米や中東線も含まれる)の全てを対象にこの販売システムにする必要はないので、おそらく短距離で高頻度運航される路線がターゲットになることでしょう。機材繰りや機体の調整の問題もあります。

さすがにこれは魅力がなくなり、ビジネスクラスを利用する客はいなくならないでしょうか。Miles & More でステータスクレジットが欲しい客しか残らないでしょう。それならば航空券販売時にステータスクレジット自体を販売すればよいことになりませんか。すでにエーゲ航空ではステータスマイルが多く得られるオプションがあります。ルフトハンザは単通路機材でのビジネスクラス廃止へ向けて歩み始める気がするのです。

 

何だか自分で自分の首を絞めることになりそうな方策ですが、ルフトハンザは本気でこんなことを行うのでしょうか。

 

隣席ブロック

ルフトハンザのビジネスクラスの「新」シート運用法は、どの程度広がるか不明ですが、「フライトで空席があるなら優先して隣を開ける」サービスは古くから行われています。航空会社はできる限り満席で運航したいのですが、時には空席が発生します。チェックイン時のシート割付け作業で、どこか空けなければならないなら、隣空席の権利を販売したり、重要顧客への無料サービスにしようというわけです。

 隣席空席の販売では、多くの航空会社と契約しているオプションタウンが有名です。発生する空席を利用した様々なサービスを商品化、販売するアメリカの会社です。搭乗クラスのアップグレード(エコノミーからプレミアムエコノミ、ビジネスなど)が代表的なオプションですが、そのオプション商品の一つにシートブロックがあります。シートブロックには、隣席空席と数席空席(ベッド化)の2種類が用意されています。

 オプションタウンの提供するシステムを自前で整備している航空会社も多いのは、皆さんご存じの通り。ルフトハンザの長距離路線では、運航日当日の空席をまとめて、3席または4席並びで利用するオプションをビジネスクラスの寝具提供と組み合わせて商品化していました。

 

またエコノミークラスに上級会員がいた場合、隣席の中央席を優先して空けるサービスを行う会社も多いのです。このサービスは明文化されることは稀です。いつでも止められるサービスなのです。販売することも可能なので、当たり前ですね。

 

大型機ではエコノミークラスのキャビンはだいたい2つあり、前方に個人客やビジネス客、後方に家族(子供連れ)を集めるという運用が普通に行われます。また機内サービスを考えると、空席は一箇所に集めた方が客室乗務員の負担軽減になります。比較的空いているフライトで、機内最後部に空席が多いのはこうしたメカニズムで発生します。さて無料の中央席ブロックサービスですが、現在は行われるとしてもほとんど最上級会員が対象です。もしあなたが JAL/ANA のエコノミー前方キャビンに搭乗する自社ダイヤモンド会員で、自分の隣を除いてそのキャビンが満席だったら、それは隣席ブロックです。なお隣席ブロックで空席対象になりやすいのは、人気が低い中央席であることは当然です。また料金が発生する席のブロックは期待薄ですが、誰も買わないのなら結果は同じになります。

 ワンワールドの場合、共通する上級会員が三種類あり、最上位のエメラルド会員だと多くの会社でこの「エコノミークラス隣席ブロック」のサービスが受けられます。シートアサイン・シート選択のプログラムルーティンに入っているようなので、該当する会員としては楽な話です。

 

 

エコノミークラス利用のワンワールドエメラルド会員は、航空会社や路線を選択する時、この「確率的に発生するサービス」も考慮した方が良いのは当然です。そして

・隣席空席オプションを販売しない路線

・上級会員が少ない航空会社、路線

・満席にならない航空会社、路線

・(バルク最前列など以外の)人気が低い中央席の隣

を選択するのが賢いことになります。スターアライアンススカイチームは、共通する上級会員は2種類しかなく、中位会員レベルまでです。このため航空連合内のサービスとしてここまで実施するのは困難でしょう。ワンワールドの優位点です。