PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

鉄道会社の広告のレトリックを航空券のプロモーションに利用すると...

先日届いた「未承認広告」表示なしのメール。もちろん送ってよいと、DBに意思表示をしたはずなので、広告ではなく通知です。

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「das City Night Lineでお得にすぐに出発」、「寝台車でわずか39ユーロから」、「夜をリラックスして移動」、「ホテルの費用を節約」、「朝からすぐに発見の旅を開始」、「ミュンヘンアムステルダムプラハ、ローマ、チューリッヒ」などと威勢の良い文句が並びます。

 このメールの表題は、Mit dem City Night Line schon ab 39 Euro reisen!(City Night Lineでたった39ユーロから旅を!)です。Nachts noch günstiger durch Deutschland und Europa!(ドイツとヨーロッパ中もっと得な夜)と、絵葉書風のイラスト中にもあります。

 

確かに39 EURは、宿泊代として考えるとかなり低額です。例に挙がっているような大都市では、ほとんど不可能。しかも、夜越しの移動=長い移動付き。鉄道料金の比較に馴れ、財布の紐と浪費心を固くしている旅客に、お得感の新風を吹き込むことができます。庶民の経済感覚を呼び起こし、「何か得な気がする」とクリックすることをDBは期待しているはずです。

 

中等教育のドイツ語の授業で行うような広告の解析をしてしまいましたが、ここで使われるレトリックは航空券の販売では使われません。

 

例えば、東京からシンガポールに行く場合、昼便と夜便の利用が考えられます。現地の活動時間をそろえると、昼便利用では宿泊費が余計にかかります。往復で2泊違いますが、このことが夜便の宣伝に使われているのを見たことがありません。

 低い出費で多くのマイルを得るため、ランドサイドでの宿泊を極力避けるという旅行もありますが、ここではそれとは離れて、ビジネス客とか、元気な旅行者など「健全な」旅行者を考えています。

 

ハードの上ではフルフラットになるシートを導入、睡眠できることを売りにする一方、経済的メリットを強調しないのは、考えてみれば不思議です。「夜便だとホテル代が節約できます。」と暗に述べるビジネスクラスの広告は、可能なのにありません。やはり飛行機の旅は「特別なもの」でないと困るようです。

 

確かにファーストクラスでも、ベッドだけの個人スペース、ソファーベッド、トイレ共同、バス・シャワーなしと、宿泊として評価すると、カプセルホテルにも劣る設備しか提供できません。また派手に揺れることや、絶え間ない騒音は宿泊所としては致命的なレベルです。

 このことを考えると、宿泊費節約という方向へ広告を打つと、次のフェーズで自分の首が絞まることになりそうです。

EmiratesのA380のファーストクラスでは、共同シャワーも設置され、ようやくカプセルホテル並みになりました。めでたし、めでたし。さらにEtihadのレジデンスでは、なんとかビジネスホテルに匹敵するスペースを確保、シャワーも専用となります。

 

「カプセルホテル代わりの飛行機」が適当なテーマでないのは、旅行をつまらない方向へ誘導するような視点しかないからです。

 

シンガポール旅行を考える時、以下の比較は楽しそうです。

・SQのエコノミークラスで移動、到着後と出発前に良いホテルに2泊する。

・SQのビジネスクラスで移動、ホテルの宿泊を2泊節約する。

この比較は時間とお金に余裕がある人向きですが、「私だったらこうする」と想像するならタダですね。それでも楽しいのが旅好きの性向。私もこういう話題は好きです。