PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

CDG エキスプレス・CDG のアクセス

凡庸な空港アクセス

パリの玄関、Charles-de-Gaulle 空港。現在の市内のアクセスは、近郊鉄道(RER)、バス、タクシーなどです。道路も鉄路も空港のごく周囲にしか専用線がないため、市内からの距離の割には時間がかかります。

 

世界の大きな空港では、高規格の鉄道線とか、専用線が着々と整備されています。LHRのHeathrow Express、KULのKL Expresなどにその例を見ることができます。フランス第二の空港 LYS でも Rhônexpress の専用線が長々と敷かれています。

 CDGのアクセスが極めて凡庸であることの意味を理解するために、次の事実を指摘しておかないといけません。

 

・CDGは欧州でもっとも広い敷地を持つ空港です。

・CDGはLHRに次いで、欧州で2番目に旅客が多い空港です。

・CDGはフランスのGDPの1.7%を産み出しています。

http://www.leparisien.fr/espace-premium/val-d-oise-95/l-aeroport-de-roissy-dope-l-economie-16-02-2012-1863210.php

・欧州各地への接続を可能にする CDG の TGV駅は25年前に開業しています。

 

国家の威信がかかる事柄、特に土木・文化の分野では、しっかり投資するフランスとしては、市内アクセス整備の遅れは見逃せないはずです。

 

専用列車の計画

もちろん手をこまねいていたわけではありません。鉄道の敷設計画は以前から存在します。その名は CDG Express。

f:id:PECHEDENFER:20190515193955j:plain

https://cdgexpress.groupeadp.fr/index.html

周辺住民、納税者、空港関係者向けのサイトらしく、事業の概略、事業の意義、事業計画、予算などがかなり詳しく述べられています。

 

全てを専用に建設するわけではありません。空港周辺を専用に建設する予定です。RER B線、そしてM17線に接続して、パリ市内の終点は東駅です。地上施設は 3種類という感じですが、恐らく空港からノンストップで東駅に到着という運航になるでしょう。

f:id:PECHEDENFER:20190515195410j:plain


M17線は2024年までに整備、運転を開始する予定で、こちらはパリの地下鉄・バス・トラム・RERの運営を行う Île-de-France Mobilités と RATP の計画。そのためなのか、CDG Express の運用開始も2024年とされています。パリでは2024年のオリンピックに合わせて、周辺の地下鉄、RER線、バス路線、トラム等を大規模に整備する計画が進行しており、その計画の影響を受けています。

 

もちろん素人目にも過剰投資に見えます。M17という新線を一つ敷く以外にCDG Express専用線を整備するわけですから。当然料金は並行する空港アクセスより高くなるはずで、「車庫行きの線路上を走る」などと言われているようです。

Le CDG Express s’oriente vers un retard olympique

そこで地域の行政側からは盛んに攻勢があります。Île-de-France の 行政のトップ(Presidente)、Valérie Pécresse氏も国家に着工の早期実施をお願いしているようです。

 

国の総意のレベルで、「Heathrow Expressがあるのに、CDG Expressがない」ということは、少し引っかかるかもしれません。その辺にもプッシュする余地があります。

 

結局実現するでしょうか。CDG Express。

 

現在と近未来の空港アクセス

さてCDGの空港アクセスは、2024年のパリ交通網整備の影響をすでに受けています。Île-de-France Mobilités はあちこちで工事を始めましたが、バス路線の再構築も行いつつあります。

 CDGアクセス関係では、東駅まで運航していた 350番のバスが Porte de la Chapelle で運転打ち切りになりました。合わせてPorte d'Orléans — 東駅 — 北駅という運航をしていた38番のバスは、Porte de la Chapelle まで運転を延伸しています。つまり路線バスで市内中心部に出たいなら、Porte de la Chapelleで乗換えが必要になってしまいました。同じような役回りの351番は以前からNationまででしたが、350番はそれより不便になりました。

RATP350番のバスとCDG - バス代わりの飛行機

RATP351番のバスとCDG - バス代わりの飛行機

これらを使って移動する航空旅行者は多くないと思いますが、個人的には大変残念な変更でした。

 

日本からの旅客は、RER B線を利用する場合が多いようです。これは危ないという評判が定着しています。個人的には何度か利用したことがありますが、特に変わったことはなく普通の路線でした。多くの人の意見が知りたい場合は、

RER B train in evenings - Paris Forum - TripAdvisor (英語)

などのフォーラムを参考にするとよいと思います。RER B線が危ないなら、350や351のバスもたぶん危ないはずです。

 

やはり安全なのは、料金がやや高くなる LE BUS DIRECTでしょう。

Le Bus Direct : The best way between Paris and its airports (英語)

 

これより高頻度、低料金のRoissybusは、パリ市内の発着地(Opéra Garnier, Rue Scribe ー オペラ座、スクリーブ通り)に難があります。難点というのは、旅行者でごった返す関係でスリが多そうな事。これも旅のフォーラムに格好の話題を提供します。

Roissybus Pickpockets - Paris Forum - TripAdvisor (英語)

オペラ座周辺は、意外に道が分かりにくいことも不慣れな旅行者には障害になります。

 

タクシーなどの利用では、高速道路が渋滞、ノロノロ運転している時や停車している時に、強盗被害に会うケースが時々紹介されます。窓ガラスを割って、車内のカバン等をひったくるという手口。当局が警戒に当たるのは難しいでしょうから、強盗は仕事がしやすい状況です。

 

空港アクセスで総合的に状況を考える必要があるのは、旅行者には面倒な話です。インフラ整備を行うなら、防犯、セキュリティもしっかり検討して欲しいものです。