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バス代わりの飛行機

Tipps für Flugreisen

多言語化のチェック:フライングブルーの場合

Air France(AF)の顧客プログラム、Flying Blue(FB)がらみで芋づる式にネタが出てきます。昨日の元ネタ、Les EchosにあったFBのディレクターの説明で私が気になったのは、当初は6言語でスタートした顧客への配信が、現在12言語で行われているという部分です。12言語も使っているとは知りませんでした。

 

確かに世界は多言語化が進んでいて、どこにいても様々な言語で用が足せるようになりました。産業の高度化に伴う必然的な歴史の流れなのでしょう。それでは母語以外の言語を四苦八苦して勉強する必要がなくなるかというと、そうはなりません。むしろ逆なのですが、monolingualの人でも世界中で一通りのことができるなんて、「人類の進歩」以外の何ものでもありません。

 当然のことながらFBの多言語化なんて、一瞬たりとも気にしたことがありません。やり取りは当初からフランス語。AF-FB-仏語は一体になっていて、要素がひとつでも入れ替わると、全く別物に感じます。物心ついた時から方言で会話している親族と突然英語で話し始めるようなものです。

 特定の二者の間で利用する言語は、普通固定されます。polyglot間でもそうで、それ以外の「チャンネル」を使うのは、周囲の状況が強制する場合ですね。個人対会社の場合も同じです。SKでMUCへ行った時、予約したSK便がLHの運航便に代わりましたが、出発の事前案内はLHから直接届きました。これがぎこちなく感じたのは、英語だったからです。Nonstop AusstandもといNonstop youのLufthansa。なるべく英語に変えていく方針のようです。

 

思い立って、FBの多言語化をチェックしてみることにしました。言語の種類と多様性は、顧客の種類と多様性バロメーターだからです。世界に路線網を張り巡らせる野望を持つ航空会社では、種類と多様性はかなり重要な話のはずです。

 

実際に調べる前に、言語を大言語とそれ以外に分類する必要性を感じました。

・Lingua franca(日常利用する言語が異なる二者間の意思疎通のために利用される第三の言語)として使われ、

・話者一人あたりの経済力が大きく、

・文化的発信力(出版点数が多い、ウェブのページが多いなど)が大きく、

母語話者が多い

言語とそれ以外では性格に差があります。「どんな言葉が強い?」というのは昔から人気のある主題ですが、ここのところ圧倒的な存在になっているのは英語。前世紀から、別格の世界言語です。その次のランクに少し議論がありますが、普通の相場感ではスペイン語、ドイツ語、日本語、フランス語、北京語(50音順)の5言語になるでしょう。

 大多数の北京語話者は言論の自由を持たないので、北京語には難ありとされますが、ここでのテーマは航空会社のサービス。北京語話者の旅客数が圧倒的に成長した現在、この言語を外す理由はありません。

 「グローバルな」航空会社だと、これら6言語に対応していることが期待されます。

 

FBの場合、この6言語は外していないでしょうが、残りの6つは何でしょうか。調べる前に予想すると、

・地域的に顧客が多そうなので、イタリア語ロシア語

・世界言語には違いないので、アラビア語

公用語として習得する人数が多いヒンディー語

あたりが入りそうです。後2つは何か?と思った時に、すっかり忘れていることを思い出したのが、オランダ語。FBはAFとKLMの合併で出来たプログラムですから、当然。残り一つはオランダの旧植民地であり、話者人口が多いインドネシア語でしょうか。マレーシア語とも言語的には同じですから、この言語の採択は効率が高いはずです。

 

ということで、私の予想ではFBの利用する12言語は、

英、西、独、日、仏、北、伊、露、阿、印、蘭、イ/マ(北は北京語)

です。ゲーム感覚で調べてみます。

 

AFのサイトに行きます。

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言語を選択します。ふつう言語を選択することはないので、このメニューは初めて見ます。

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AFのサイトは集中管理されているわけではなく、国ごとに管理されているようです。総本山のサイトでは、仏英の選択しか許されません。最初に大言語、西独日北を調べるために、スペイン、ドイツ、日本、中国のサイトを訪れますが、当然これらの言語には対応しています。

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スペインやドイツでは仏語も選択できますが、日本や中国ではそれぞれの言語と英語があるのみです。

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大言語以外では、イタリアとロシアは外しませんでした。

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ところが、アラビア語ヒンディー語オランダ語インドネシア語はみごとにありません。英語以外の選択肢がないのです。

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相棒なのに、オランダ語もありません。しかし「実は仲が悪いのでは」と勘ぐるのは間違っています。これは合理的な経営判断オランダ語話者はKLMに任せて、省力化。考えてみれば当たり前です。

 結局、KLMのサイトにも行ってみないとFBの全貌はつかめません。もちろんKLMサイトは、オランダ語で書かれています。

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注目のインドネシア語ですが、ビンゴ!でした。

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やはり旧宗主国ということで、影響力は保ちたいのですね。面白いことに、マレーシアを選ぶと、英語にしか対応していません。

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よく知られていますが、インドネシア語もマレーシア語もマレー人の言語。植民地時代にそれぞれの宗主国が異なったため、語彙に少し差がありますが、基本的には同じ言語。ナショナリズムの発揚のためか、マレーシアは公用語をマレーシア語と呼ぶようにしたようですが、言語自体は変わりません。KLMが国家選択→言語選択という運営の枠組を使っている限り、この流れに沿うのが適当です。

 

さてオランダ語インドネシア語は正解、アラビア語ヒンディー語が外れだったわけですが、残りの2語は何でしょうか。いろいろ探してみたところ、タイ語と韓国朝鮮語でした。

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これらの言語の話者が、AFの顧客として重要だということでしょう。

 

正確に言うと、以上の言語は航空会社のサイトの言語であり、FBが顧客にニュースを配信する言語を調べたわけではありません。しかし、おそらく一致するでしょう。

 

以上まとめると、

 

・FBが使う12言語は、

英、西、独、日、仏、北、伊、露、泰、朝、蘭、イ(北: 北京語、イ: インドネシア語

で、アラビア語ヒンディー語は入っていません。またオランダ語インドネシア語は、AFでは対応せず、KLMの担当です。

 

・6大言語には、全て対応しています。

 

・言語の管理は国別のサイトによって行われています。分散管理です。このため、どこでも英語は選択できますが、仏語は利用が少ない国では選択できません。

 

フランス語は経済効率に勝てず、国際言語としての地位を拡大することはやめたようです。