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Tipps für Flugreisen

特典航空券の必要マイルは変動制が標準に

マイルの入口と出口

航空会社の会員プログラムは顧客囲い込み、利用促進を目的としていますが、顧客の

①搭乗したマイルを積算、

②マイルに応じていろいろな特典を用意

するものでした。これが会員プログラムの基本です。しかし年々進む規制緩和により、航空旅客輸送のビジネス環境が大きく変わり、この基本形を保っていてはプログラムが機能しなくなってきました。

 このブログを始めたのは6年前ですが、それ以来ずっと話題性が大きかったのは、①に関する変化でした。最近は一段落着いたらしく、②に関する変化に注目が集まっています。新しい潮流になるでしょうか。

 

入口の変貌

会員の利用実績はマイルで量るべきところを、航空券購入金額で量る形にしたデルタ航空。一般には①の変化の源流と考えられています。その後、北米での競争相手であるユナイテッド航空、さらにはアメリカン航空が追従しました。北米三大会社のプログラムではマイルという名は残るものの、マイレージは関係なくなりました

 欧州でも金額制への移行が目立ちます。ルフトハンザ航空などの Miles & More、エールフランスなどの Flying Blue が金額制になりました。エーゲ航空は自社(含オリンピック航空)利用分に関しては、格安エコノミークラス利用でも飛行距離をマイルとして積算する古体を保っていますが、こういう会社は少数派のようです。

 

背景はいろいろですが、低価格長距離という路線は存在します。さらに搭乗日や条件によって航空券価格は大きく変化します。そのため昔はマイル/支払金額を最大化すべく、ゲーム感覚で航空券を探索、旅行する人がいて賑やかでした。金額制になると、このゲームは原理的に消滅します。大手の会員プログラムはすっかりつまらなくなりました。 

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大手が次々に獲得マイルの金額制へ移行するので、②に関しても「1マイルは〇〇ドルで航空券購入時に利用」という金額制になるのではと危惧した人が多かったようですが、今のところこれは主流になっていません。もしそうなると、会員プログラムはスーパーの会員やクレジットカードの会員並みのシステムになり、世の注目度が桁違いに小さくなると思います。

 ただしニュージーランド航空は、昔から出口が金額制です。マイル(Airpoints Dollars)は、積算も段階的です。こういう心配をした人たちがAirpoints Dollarsを知っていたかどうかはわかりませんが、彼らには非常につまらないプログラムのはずです。

 

出口の変貌

現在②に関する変化の大きな流れは、様々な特典が時価になること。「マイルに応じて」が根源から変質しつつあります。

 会員プログラムでは特典航空券に必要なマイル数が路線、搭乗クラスで固定されているのが常識でした。例えば、Flying Blueで日本-ヨーロッパの往復特典航空券を得る場合、

エコノミークラス    80,000 miles

ビジネスクラス     120,000 miles

ファーストクラス 160,000 miles

航空券(Y)購入  640,000 miles

が必要でした。プログラム発足時(2005年)の数字です。

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これらの数字を固定値ではなく変動制、つまり搭乗日、搭乗便によって綿密に、大胆に変えるシステムへ移行する会社が出てきています。必要マイルは少数の表では表現できないため、一般客の目につくようなチャートは廃止されます。

 実は Flying Blue では、相当前に移行済みです。2015年頃には(必要マイルは搭乗便によって細かく変わり、最大値は 640,000 miles とこのプログラムに特殊な航空券購入に必要な値になっているという意味で)完全変動制になっています。しばらくは、プロモーションを除く最低値を並べたマイルチャートが存在していました。今ではそんなチャートすら見なくなりました。Flying Blue は、①で入口の金額制を実施するより何年も前に、②で出口を現在流行の形にしていたのでした。

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閑散期と繁忙期を設定、必要マイルに差をつける程度の穏やかな変動制なら、JALブリティッシュ・エアウェイズも採用しています。ただし導入はここ 5年ぐらいの間の出来事。完全変動制へのステップになるかもしれません。

 

昨今、特に変動制が騒がれるわけは、ユナイテッド航空 MileagePlus のチャート廃止でしょう。今年11月15日以降のフライトに関して、特典航空券のマイルチャートが消滅しました。

Say Goodbye To The United Airlines Award Charts

金額制創始者と目されるデルタ航空は、①の改革が定着する頃には、②の改革、つまり変動制導入による必要マイルのチャート廃止を行っています。アメリカン航空はまだ固定マイル制で、チャートの廃止はアナウンスされていません。

 

ルフトハンザ航空やブリティッシュエアウェイズも、②は完全変動制に移行するという噂があります。これは実施可能性の問題ではなく、実施時期の問題と考える方がよさそうです。

 

変動制では、必要マイルは段階的に設定され、それぞれの段階で席数に制限が設けられ、それらの席数は便で変わります。細かい基準は公表されません。固定制の場合でも、便によって特典席数を調整していたはずですが、それに必要マイルの調整が加わりました。変数が増加しただけとも言えます。

 

航空会社を理解しようと努めると…

航空会社の事情は、次のような流れだっただろうと想像します。

 

技術の進歩により航空券価格を効率よく制御、有償客だけで空席を減らすことに成功。

→ 利益を最大化すると従来のマイルでは、無料航空券枠がほとんど消える。一方で無料航空券枠の大幅縮小や必要マイルの大幅上昇は、会員離れ、利用離れを起こす。

→ 航空券価格の最適化技術を転用して、無料航空券の必要マイルも変動制へ。

→ 最低マイルは従来の数字かそれ以下にし、平均マイルを大幅上昇、改悪イメージと利益への影響を最小化。

 

改悪には違いありませんが、会員のショックを最小にする良い方法...だと思います。

 

出口側はやり方次第で面白いことに

②の改革(改悪)は、①の改革(改悪)と大きく違う点があります。必要マイル変動制ではゲーム性が増大します。いかに低いマイルで航空券を獲得するかというゲームです。航空会社はこの特徴を生かし、大胆なキャンペーンを打ってはいかがでしょうか。

 昔から Flying Blue ではマイルのプロモーションがあり、-25%、-50%で特典航空券を得ることができます。これは非常にお得で利用はまさにゲーム感覚。対象になる路線と時期に大まかなパターンがあるので、何年も見ていると予想できますが、これを意外性のある形で提供すれば、意味あるものになると思います。

 路線、時期に加えて、会員属性(年齢、居住地、会員レベル、干支 etc.)を要件に加えるとか、世界一周のプロモーションを行うとか、いくらでも工夫の余地があります。

 

データサイエンスは、利益最大化にかなり貢献したことでしょう。しかし今後は会員の遊び心を刺激するサービスを開発して、魅力あるプログラムを構築するために使って欲しいものです。