欧州大手の気苦労の種は、LCCだけではありません。長距離便についても厳しい競争に直面しています。競争相手は湾岸諸国の航空会社です。
最近、EtihadがAlitaliaに資本参加し、最大株主(49 %)となることが決定的になりました。Etihadは、Darwin Airlines (29.2 %)、Air Berlin(33.3 %)とすでに資本関係がありますが、今回ばかりは欧州の巨人たちを刺激したようです。
7月5日のLe Figaroや他のメディアによると、Air France-KLMとLufthansaは共同で欧州交通審判員 (というのですか?le commissaire européen aux transportsです。)に、Etihadを名指しすることなく、「EUは公正な競争が保証されるようあらゆる手段をとるべきだ」と訴えました。
湾岸三会社、Etihad Airways, Emirates, Qatar Airwaysは、経営に関するあらゆる数字が二桁の伸びを示しているような勢いで、市場に食い込んでいます。Etihadは2003年に設立され、この三社の中ではもっとも新参かつ小規模ですが、すでに保有機数100、就航都市100となっています。JALの90都市、ANAの75都市を考えると、勢いが理解できると思います。
Etihad Airways、Emiratesは、かねてから経営の内情が不透明であることが問題にされ、国家の金がじゃぶじゃぶ使われていると欧州の航空会社は信じています。これで不公正な競争を行っているというのです。
これら湾岸三社の世界戦略は対照的で、もっとも大きなEmiratesは個別提携を大規模に進めています。独立系大手のVirgin各社の他、地勢的に不利で経営が思わしくないQantasなどが重要な提携相手になっています。同様の規模のQatar Airwaysはoneworldに加盟したので、経営状態はある程度公開されるようになったのでしょう。旧世界からの反発はもっとも弱いように見えます。
Etihadは資本投入により航空会社の路線網を「手に入れる」という攻撃的な手法のせいか、もっとも警戒されているようです。バルカン半島では、Jat Airwaysの49 %の資本を握り、Air Serbiaとしました。2013年のことです。同年、同じ手法でスイスのDarwin AirlinesもEtihad Regionalに改名しました。これらの会社の路線網を手に入れ、Etihadは欧州内でのハブ・アンド・スポークを形成することになります。
湾岸諸国は、欧州・アフリカとアジア・オセアニアをつなぐ時、中間点となるので、地勢的なアドバンテージがあります。Etihadは、欧州やアジアで地域航空網を手に入れ、大陸横断や大陸間の自社便と連携できれば、強力な世界ネットワークを構築できます。アジアでも同様の戦略で動いています。例えばPhilippines Airlinesが標的となっているようです。Malaysia Airlinesに対しても噂があり、その株が乱高下したのは記憶に新しいところです。
Alitaliaの場合は規模が大きく、名も通っているので漠然と脅威に見えるという面はありますが、欧州の航空会社は負のレガシーだらけ。Etihadの持ってくる金はありがたいはずです。
競合大手には実質的な脅威になるので今度のLH-AF共闘になったわけですが、Air FranceはEtihadとコードシェア、地上のハンドリング、FFP、ラウンジの提供などの本格的な提携を2年前に始めたばかりです。全体としてフランスのメディアは、AFの節操のなさを皮肉っています。AFは統合失調かとまで言われています。
この物言いは適切には思えませんが、フランスのメディアは相変わらず辛辣です。