PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

フランスの変な地名(つづき)

 

長くなったの分割しました。前の記事の続きです。

 

Arnac-la-Poste

2つ以上の単語が結合した自治体は、trait d'union で接続して表記します。自治体の合併でよく起きますが、その他の理由で "-" 付きになることも多いのです。

 la poste は郵便局ですが、arnac はペテン、詐欺(正規の記法では arnaque )です。フランスの郵便局もお金を扱います。物騒な名前と一緒になったものです。この自治体の標識も妙なので、記念撮影によく使われるようです。

 Haut-Vienne 県にあります。もともとは単に Arnac という地名で、そこに郵便駅(鉄道駅とは関係なく、郵便の移送の中継所。)ができたことから、la poste を後に着けることになったそうです。と言うことは他にも Arnac があって紛らわしかったのでしょうか。

 

Rue des Crottes

育ちが良いとは良い教育を受け、教養が豊かでマナーが洗練されていること。そういう方々はご存じですが、苛立った時につい口にする間投詞は多くの言語で一致を見ます。それはヒトの排泄物を表す名詞で、くそ(日本語)、shit(英語)、Scheiße(独語)です。

 これに相当する仏語は merde になります。マルセイユ11区にあるこの通り、糞の通りの crotte も使えないことはありません。

 Crottes(複数形)は家畜や犬などの糞、一般にくそです。この通りは犬のフンだらけなのでしょうか。こんな名前だと、逆に市当局が清掃強化の対象にしそうです。次のマルセイユ訪問時には、マルセル石鹸を手にしてその辺のことを確かめてきます。

 

Anus

この単語、英語も仏語も同じ意味で肛門。l'Yonne 県にある一応独立した自治体です。しかし歴史的にも、実情も近所にある Fourones 郊外の小集落という位置付け。

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何故こうなったかについては、まあまあ合理的な推定が出来ますが、長くなるので省略。単純に奇妙な名前として受けとめられているようです。もしあなたが医者で、この地で肛門科を開業したら(= proctologue という看板を掲げたら)全仏でニュースになるかもしれません。

Rue de Mauvais Garçons

悪童通り。パリ4区、Rue de Rivoli に交わる全長 33 m の小さな通り。偶然見つけて驚いた方もいらっしゃるのではないでしょうか。Pechedenfer もそうでした。ごろつきの巣窟?という感じ。語源にはいくつか説があるようですが、行儀の悪い男が住んでいたという話に行きつきがちです。

 悪ぶってみたい中年男は、この通りで撮影ですね。ただし複数形なので記念撮影するなら、ちょい悪オヤジ同士がパリでデートすることになります。ちなみにここはマレ地区です。

 

Rue Courbe dite des Fesses Fanées

fané は花や植物を形容し、しおれた、枯れたの意味です。転じて色あせたこと、艶を失ったことを表す時にも使います。この湾曲通り、通称「しなびた尻」通りは、黒魔術の書に出てきそうな文字列。実際にはローヌ県の Haute-Rivoire という自治体にあるカーブした小さな通りです。

 語源についてはフランスらしいエピソードが残っています。

Fesses fanées - Boulevard des Farfelus

1950年にはまだ正式な名がなかった城壁跡の小さな通り。そこには独り身の老女ばかり住んでいました。ある日キュロット仕立て/アイロンがけ職人の老婆が山の手の女と口論になり、それを通りかかった市の秘書 (30歳) が耳にします。他所者女が通りの住民たちを表現した

« ..., car dans votre rue, il n’y a que des vieilles filles et en plus vous avez toutes les fesses fanées ! »「だってあんた達の通りは、独身婆さんしかいないじゃない。それにみんなしなびた尻だわ!」

で秘書は大笑い、この話をあちこちで吹聴したとのことです。地元の博物館創始者/老作家の話なので、本当の話なのかもしれません。

 

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Haute-Rivoire ではありません。エピソードにあった courater les hommes という方言(?)で、思い出してしまいました。

 

2つの記事を合わせて合計で10。ありきたりの観光に飽きた時、原住民たちの関心に着目するのは旅の定石です。それにしてもシモの話が多いこと。さすがはフランス。

 実は珍地名では、日本もフランスに負けません。ろくに調べていませんが、女体入口、冷蔵庫前などというバス停はいかにも変。岐阜市の尻毛はワープロの変換辞書にも入っています。ということで、他の国も機会があれば記事にしてみます。