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Tipps für Flugreisen

もう一つ4月の魚

最近 ANA が AI の積極的な活用を行っていることは良く知られている。旅行客には概ね好評のようだ。自信を持ったANAは4月1日、運用で明らかになったAIの絶大な効果とそれを補完する新サービスを公表した。

 

AI活用:サービスのパーソナル化

人工知能を活用、サービスのパーソナル化を実現した AIモバイルサービス、ANA AIサービス(ANA-AIS)がスタートして半年がたった。すでに利用した読者も多いだろう。ANAマイレージクラブ(AMC)会員は、スマートフォンに無料アプリをダウンロード、会員番号でログインした後、やりたいこと、知りたいことをつぶやく。すると ANA-AIS が旅行を提案・予約・販売したり、質問に答える仕組みとなっている。旅行の管理はもちろん、旅行中でも様々な提案と予約を行うすぐれものだ。

 「本日午前10時の時点で、すでに1,023,569人の会員様がアディクトになっていると、AIS自身が認定しております。」と想像以上の大成功から、ANAの広報は喜びの色を隠さない。しかし「問題もあります。NMB48公演チケットのご要望に対して、エア・ナミビアの航空券が販売されたことがありました。羽田でフランクフルト行に乗継ぐお客様がパスポートをお持ちでなかったため、福岡空港の地上係員がエラーを発見しました。お客様は何も疑わず、AISの指示どおりに福岡空港にいらしたとのことです。」AIが NMB48 を航空会社コードか便名と混同したようだ。ANA自身が認めるように、ANA-AISは語意特定の精度に課題が残されているようだ。一方で、

 「ケータリングとAIの融合では、常に高い評価を頂いています。会員様がお召し上がりになった機内食やラウンジでのお食事は記録され、AIで処理、機内食選択の提案、炭水化物過剰摂取アラートなどに生かされます。カロリー/マイルやライフタイムカロリーの表示、ANAのご利用頻度から計算される体型シミュレーション、空港ターミナル内ジョギングコースの提案は、ダイエットの専門家にもお褒めの言葉を頂戴しております。」好みを判断、機内食を選んでくれるのはうれしい。カロリー/マイルとは聞きなれない言葉だが、注目される指標になっているらしい。ANA をご利用の際に召し上がったお食事の総カロリー(kcal)を、飛行マイルで割った数値です。お客様による差が大きいのが特徴で、平均値は1.8ですが、95% CI は 0.1 ≤ μ ≤ 5.6 と算出されております。同じデータを使って ANA ライフタイムカロリーも計算されます。500,000 kcal、1,000,000 kcal、2,000,000 kcal、3,000,000 kcal に達した会員様には、その度に異なるオリジナルネームタグ "徒費の証 (とひのあかし) " を贈呈します。」

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AMCの新地平:ご旅行同行サービス

AIには隙がないようにも見えるが、ユニバーサルサービスになっていないと言う。重要なことはサービスのパーソナル化。AIは強力だが、手段に一つに過ぎないとANAは断言する。ANA-AISのご利用は、ほぼ20代と30代に限られます。40代以上ではご利用頻度が顕著に下がります。つまりマイレージクラブ会員の8割以上が、AIから置いてきぼりを食らっている状態なのです。ANAは日本唯一の5スターエアラインに相応しいサービスを広く提供する使命があります。幸い4月1日、2つの新サービスを会員に提供できることになりました。国内他社がそうだからといって、ANAは停滞しているわけにはいかないのです。」とサービスの開発で、JALの追従を許さないことを暗にほのめかした。

 「一つはご旅行同行サービス。ANA Accompanying Individual Service、略してANA-AISと名づけました。ANAおよびスターアライアンス各社に搭乗される場合、機内および空港でご利用いただけます。通訳、ガイド、秘書、ポーター、機内食の相伴まで様々なご要望に答えます。費用は基本料金1,000円、同行員の移動料金に加え、要求されるスキルによって時間単価が異なる料金がかかります。機内食を一緒に食べるだけなら、スキルは不要。1時間958円の最低料金となります。

 誕生日なのに客室乗務員が気づかないとか、自分は食べ終えたつもりなのにトレイの片付けに来ないとか、手荷物を頭上荷物入れに収納するのを手伝ってくれないとかいう不満は、今後、起きようがありません。これらの不都合はスキルゼロの同行員でも、すぐに客室乗務員に伝えることができます。このような一般的な意思疎通の介助は1時間958円の最低料金で手に届きます。

 なお同行員は一般の航空券で移動します。フライトマイル、プレミアムポイントは、サービスを利用された会員のアカウントに算入されます。」

 

筆者のように、孤食は何だか格好悪くてイヤ、自分なりにサービスにこだわりはあるが、なかなか口に出せない世代にアピールしそうである。

 ただし、「このサービスは、スーパーフライヤーズ本会員様にのみ提供します。クレジットカードの種類によって、基本料金の割引が受けられます。」と、利用できる会員に制限があるのは残念。とても魅力的なサービスなので、これまでスーパーフライヤーズに二の足を踏んでいた筆者も、今年プラチナ修行をすることを決意した。

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究極のサービス:ご旅行代行サービス

「もう一つは、ご旅行代行サービスです。ご利用はダイヤモンドサービス会員様に限定されます。日本ではANAだけが提供できるとの自負も込め、ANA Alter Idem Service、略してANA-AISと名づけました。

 ANAマイレージクラブには、忙しくご活躍されている会員が多いのです。半年間にわたるAIのデータを解析してみると、猫の前脚のレンタルまたはご自身のクローンを希望、つぶやかれる会員様が多いことが明らかになりました。機内、空港での猫の貸し出しは、十分な数の猫トレーナーが見つからないため、断念いたしました。人体の複製も ANA の能力を超えます。しかし本人の代わりにANAに搭乗し、目的地でも本人の代わりに業務を行うなら、ある程度問題も解決すると判断しました。」とAIによるフィードバックを利用した画期的なサービスながらも、妥協の産物であることを認める。「スピーチ代行なら、典雅系、爆笑系、感動系と3種類のスキル分類から代行員を選べます。商談代行なら、履歴を元に代行員を選べます。ゴルフコンペの代行なら、代行員のハンディを指定できます。観光代行、冒険代行なら、撮影技術の他、文章のスタイルから代行員をお選びすることになります。この細やかさが、ANAの次世代サービスの核なのです。AIか人かは大きな問題ではありません。

 料金は必要スキルによって異なります。単純に往復搭乗するだけなら、フライト時間と現地滞在時間の合計に2時間を加えて、1時間あたり958円で計算されます。代行員を ANA 便で移送頂くことがこのサービスの利用条件で、一般の航空券をご購入頂きます。なお代行員のフライトマイル、プレミアムポイントは、サービスをご利用頂いた会員様のアカウントに算入されます。」これを聞いた筆者には、修行の2字が再び思い浮かんだ。ずっとスイートラウンジにいたままでも、代行員が搭乗してくれればPPが貯まる。禁問かなとも思ったが、思い切ってその質問をしてみた。

 「そうです。極端な話、来年も同じ会員レベルを保つために、必要な搭乗を全て代行サービスで済ませることも可能です。10人の代行員を同時にご利用になれば、すぐにプレミアムポイントが貯まるのではないでしょうか。」何と修行代行もOKなのだ。これは使えるサービスだという印象を得た。

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新会社の発足

AMC会員に対するサービスの充実は、ANAグループの経営改革を促したようだ。説明は続けられる。「バブル期に入社した社員が50歳を超え、弊社でも人材の余剰感が高まっています。加えて今年度、弊社は役職定年制を完全実施します。早期退職制度だけでは対応し切れません。またエクセレントなはずの社員にANAを去れと言うのは二枚舌だと、お客様からお叱りを受けます。50代社員に活躍の場が必要です。そこで 4月1日、新会社 amis d'ANA をイノギュレート、転籍奨励制度を設けました。社名はフランス語。ANAの友という意味です。アミダナ=網棚=とりあえず存在を忘れてもよいストックということではありません。この網棚の社員、いや amis d'ANA の社員が、ただ今紹介した同行員、代行員の業務に当たります。当初は500人規模ですが、1年後には2,000人体制でサービスを支えます。

 amis d'ANA の制服は、ノースパシフィック・カジュアル。同行員と代行員はオーシャンブルー、スカイブルー、クラウドホワイトの背景に、前面には の一字、背面には AN の一字が大書された Tシャツやスウェットを着用します。代行員は三人一組で搭乗、機内で 代 行 員 と並ぶよう着席します。彼らを背中から見たら、A N A となっているはずです。」

 最先端でハイセンスなサービスを提供し続けるANA。そしてどんな場合でも、遊び心を失わないANA。顧客の嗜好をよく理解しており、うれしい限りだ。もうしばらくすると、ANAの客は ami d'ANA 社員に囲まれて旅行できる。紺色のカーディガンをすっぽり被ったデッドヘッドの客室乗務員に比べ、何と愛嬌のあること。2018年は筋金入りのJAL派の間でも、ANAブームが起きそうな気配だ。

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(注)青字は幻聴を記したようです。黒字は文末の「(のだ or だ)といいのに」が共通するのですが、いちいち書くのが鬱陶しくなったので、省略しました。