バス代わりの飛行機

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

ANAメディアキット

最初にマレーシア航空を懐かしく思い出す人向けの情報。ビジネスクラスキャビンのフラグランス Acca Kappa (発音は「悪貨・河童」)は、東京でも手に入ります。東京ミッドタウン日比谷1階にある伊勢丹の一角にアンテナショップがあります。

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通販でも入手可能。

グリーンマンダリン 《公式サイト》ACCA KAPPA アッカカッパ

世界中で販売攻勢をかけているとは存じませんでした。

 

一応 Made in Italy、原産国イタリアとなっていますが、製造販売元がヴェルシーナという日本の化粧品製造会社。バルクで運んで、国内で成型しているのでしょうか。ちなみに値段は、同重量で Chanel などの「高級品」の半額以下。

 

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さて本日の主なテーマは ANA の自己アピール。彼らは広告受注に大変熱心で、専用のサイトを作って毎年資料を更新しています。

ANAの広告媒体 | ANAグループ企業情報

企業向けサイトのはずですが、ANA の旅客が読むことを明らかに意識しています。いろいろと興味深いデータが提供されているので、ご存じの方が多いと思います。自社に都合の悪いデータは載せないのは当たり前だとしても、いろいろと深読みができます。

 

・一年間 ANA 国内線を一度も利用しないマイレージクラブ会員は余裕の8割越え

国内線の利用客数(年間総計)と年間利用回数平均から、ANA国内線の客は633万人だと算定できます。これはマイレージクラブ会員数のわずか18.8%に過ぎません。ゲート通過時に SAG と表示される客もいるので、実際の「不活性」会員は8割を大きく越えそうです。少し前にAMC全会員のうち年に一度でも搭乗するのは1/3~1/5と予想しましたが、下方に外れています。想像以上に幽霊会員が多いのです。

 

ANA 国際線を利用するマイレージクラブ会員は偏差値70に匹敵

同様に計算して、ANA 国際線のお客様は202万人。これはマイレージクラブ会員数の 6.0%にあたります。つまり2019年に ANA 国際線を利用した会員は 6%未満。国際線では「外国人搭乗者の比率が約5割」だそうですから、この比率を他社会員として大体よさそうです。するとマイレージクラブ会員の昨年のANA国際線利用は 3%にしかなりません。例外的な存在ともいうべき数値です。

 こんな調子では、マイレージクラブの会員は 3,360万人だと言っても、マーケティングで意味を持つ集団とは思えません。ランダムに収集した巨大な名簿に近い性質を持ちます。管理コスト過大になっているのではないかと、他人事ながら心配になります。

 

・女性利用客35%、男性利用客65%

これはデータそのままです。女性の利用者も多いのです。個人的な利用体験をもとにすると、だいたい実感に合います。

 ANA は搭乗客の男女比を彼らの広告写真に反映させているようです。差別に鈍感な ANA としては頑張っています。今後は男性客室乗務員にサービスされる女性客の絵がもっと欲しいところ。また写っている女性客の年齢層は幅広くした方が良いと思います。

 

・客は 50 代、60代、70+代が過半数

56%を超えます。機内は老人だらけと言うことですな。これもデータから直接読み取れること。全体の3分の1が50代(33%)はともかく、60代、70代を合わせる(23%)と 40代の利用者(26%)に近づきます。さらに 60代(18%)は30代(13%)よりも多いと、高齢化は深刻。ANA のサービスは老齢者を向いたものでなければいけません。成人用紙おむつぐらいはキャビンに用意してあるのでしょうか。老年痴呆への対策は十分でしょうか

 

・言うほどには金はない ANA の客

広告を集めるため、客の購買力を高く見せようと必死の ANA情報商材の販売に血眼になっている twitter を彷彿とさせます。客の年収分布を出さないところが鍵ですね。日本全体の分布と比べた時に目覚ましい差がなかったのか、そもそも不自然な分布だったのでしょう。

 女性もキャリアを積む時代です。専門職では年収 1,000万円は下位の方。そういう女性の多くは結婚しますが、結婚相手もたいてい自分と同等かそれ以上の収入を得ています。世帯年収2,000万円台は専門的な職に就く女性たちには平凡、日常、普通の世界。

 また世帯収入2,000万円の勤労婦人に2人の子供がいると、彼女らのクレカの支払いは年収600万円の独身者と同程度でしょう。ほどほどに購買力があるぐらいですね。

 

金持ちがいるかどうか、それがどの程度の金持ちかを占うには、広告を見ると良いのです。機内誌に限っても他社では、世界的に有名な保養地のヴィラ、Patek Philippe、bespokeの靴なども見かけます。この水準の購買層相手の広告は、ANA のメディアでは見たことがありません。広告出稿する者たちには広告リテラシーがあるので、 ANA の思うようには踊ってくれません。

 

・消費動向は破産予備軍

このサイトの利用客世帯年収が(良く誤解されるように)個人年収だとすると、3,000万円以上の収入を得る者は ANA の客の 3%。一方でビジネス用途以外でのクレジットカード利用の上 3%の内訳は

2,400 万円~3,600 万円が 1%

1,800 万円~2,400 万円が 1%

1,200 万円~1,800 万円が 1%

です。これは個人の利用に読めます。年収が3,000~5,000万円(世帯年収とするとANA顧客の上位2-3%の帯)では、(世帯の)手取りは1,700 ~ 2,600万円。クレカの支払いで精一杯になりますな。さらに普通はクレカを通さない不動産ローンなどがあります。したがって素直に考えると、ANAの客のうち高収入な上位 3%は大多数が数年でクレカ破産します。データが語る限りでは、かなりヤバい客層です。

 

3,000万円~5,000万円の収入が世帯収入なら、2人で等しく稼ぐ場合に手取り合計は最大になり、2,000 万円~3,000 万円。さらにクレカ利用が世帯単位だと好意的に読んでやったとしても、上の利用額は多すぎます。いずれにしてもANA の客は破産予備軍ばかり。

 

・言葉のインフレ

ANA の面目躍如。「養分」たちの心に刺さる表現のオンパレード。年収が500万円同士で所帯を持つと二人ともビジネスエリートとは、素晴らしい着想でした。

 ANAの世界観では、利用者3人の漁港にもエリートがいそうです。 (1) 評価する人=上にあげる人、(2) 早く上にあがる人、(3) その他の人がいれば、(2)をエリートと呼んでも嘘はついていません。

 

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ANA はこの種の空虚な表現を濫発しますが、ここからも客の階層、所得が想像できます。

 フランスのような例外はあるものの、エリートは社会制度や経済が充実した国ではあまり必要とされません。élitisme(エリート主義)は発展途上中の国家で有効な仕組み。現代の日本でもそういう人たちがごく少数養成されていることは否定しませんが、歴史の残渣のようなものです。特に実業界(=ビジネスの世界)では、明治時代(=殖産興業の時期)と比較すると絶滅したと言っても問題ありません。ビジネスの世界では叩き上げが限りなく100%に近く、népotisme (血縁/縁族主義) の恩恵に預かる者が極僅です。

 

それからインフレには違いありませんが、次の自己アピールはやや性格が異なります。ANA 英語に曝される者には悪い冗談に見えます。

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いくらクールな広告を出稿しても、コンテンツが gibberish で書かれていては...。