ヴァージン・アトランティックと言えば、かつては成田空港へも就航しており、日本支社は渋谷区にありました。ブリティッシュ・エアウェイズがやや格式張っている感じがするのに対し、おしゃれさを前面に出したマーケティングが成功し、かなりの人気を博していました。残念ながら2015年2月に成田から撤退し、それ以来日本で話題になることはめっきり減りました。
北東アジアは上海に就航しています。東京をやめて上海に集中ということで、これは経営資源の有効活用の問題でしょう。
アトランティックというだけあって、大西洋を囲む都市への就航が多くなっています。アジアは他に、香港、デリー、ムンバイだけ。
さてこの会社、傍から見ていると、おしゃれというより自由闊達なところが魅力です。とてもユニークな存在です。しかしパンデミックが致命的なのは、他の航空会社と同じ。経営が成り立つわけなく、目下身売りの方法を探している最中です。
そんな困難の中、さすがヴァージンというか、従業員が個人的にヴァージンを宣伝するビデオをアップロードし、話題になっています。
このブログとも少し相互作用があった@naomi_sevenさんのツイートで知りました。
暇なNaomi on Twitter: "VSのクルーが作ったビデオがシュールだけどかわいい。
https://t.co/2TyGwZcEUP… "
Virgin Atlantic の客室乗務員が、仕事の日常を面白おかしく表現します。替え歌と振り付けを制服姿で披露するという、陽気かつばかばかしいビデオを作成しています。Luise Ruthie Woodsさんというそうですが、彼女の Facebookアカウントにアップロードされています。
ここにある短い紹介のとおり、同僚を元気づけるために彼女は作ったようです。もちろんパンデミックで彼らの仕事が消滅したことが背景にあります。この災禍は仕事を減らすと同時に、自宅勤務、遠隔勤務を強制していますが、彼女は突然世界中に広まったビジネスの流行を下敷きにユーモアを一発。
Yes, I was wearing pyjama bottoms. 「そう正解。下はパジャマをはいていた。」
英語が第一言語なら、この種のユーモアはお手のモノのはず。さらりと数語で表現してしまう点はさすが。ノンネイティブスピーカーには、言語能力の目安になります。
ちなみにこのビデオは著名ブログでも紹介されています。
Must-See: Flight Attendant's Tribute To Virgin Atlantic | One Mile at a Time
何となく予想がつきますが、マドンナの Like a virgin の替え歌をとても良い声で聴かせます。内容はばかばかしくても、空港や機内(=彼らの仕事場)に郷愁を抱かせるようなビデオに仕上がっています。
母語話者なら、楽しんで視聴してそれで終わりでしょうが、私たちにはいろいろと勉強になります。feeling blessed なんて、英語圏に住んだことがないとピンと来ないのではないでしょうか。 blessed はたいてい名詞の前に来る形容詞ですが、動詞が feel だからその辺は自然です。この「祝福された」というニュアンスが今一つ伝わりません。例えば、good, relaxed, relieved, easy, happy などと合わせて、状況の応じて使い分けができるかという問題です。こういう使い分けは、第一言語の話者でないと難しいのではないでしょうか。今の時代、多数の用例がウェブで調べられるので、外国にいてもそれなりに理解は可能です。しかし効率が低いのは何ともなりません。
表現に感覚が伴わないことが多いので、英語はフランス語より鈍く感じます。要は苦手。ビデオで St Tropez の発音が異様に感じられることもこの意識を補強します。
繰り返されるサビの部分は、
We are Virgin. We're gonna be just fine. We are Virgin. No one compares with our airline. Feels so good to fly.
と、自分たちを奮い立たせるもの。そして Virgin がいかにユニークか世に知らせるもの。会社は買い手を探している状態ですが、良い宣伝になったのではないでしょうか。
大西洋の共同運航の相手が有力とも噂は出ていますが、どうなることやら。
製作者の Louise 自身もとても charmingです。確かに Virgin Atlantic のファンでなくても、必見ですね。このビデオは。