その野望(2019年9月時点)
イギリス第二のフルサービスキャリア Virgin Atlantic は、ロンドン・ヒースローの第三滑走路の建設を当て込んで、将来計画をぶち上げています。2019年9月の話でした。
この計画では、84もの新路線が描かれています。欧州線の拡充もさることながら、現在 19 しかない長距離路線に 35もの新路線を加えています。派手なのは結構。3本目の滑走路の実現に向けて、発着枠の協議が始まるのを待っていては遅いということでしょう。
日本の旅好きになじみ深い都市では、東京線が復活し、大阪、シドニー、オークランド、シンガポールへ路線を開設することになっています。これだけ飛べば、BA の路線網に比べて遜色ありません。
しかしながら、その後の展開は皆さんご存じの通り。疫病禍による旅客需要の激減により、会社消滅の恐れありでした。何とか危機は乗り越えられそうなものの、青息吐息の状態が続きます。大胆な路線拡充の発表の一年後、実施されたのは大胆な人員整理でした。
Richard Branson はろくに納税していないことが改めて強調され、すっかり悪者に。さらに今日 1月13日には、航空券の払い戻しが Ryan Air と並んで最悪であると報道されています。
化けの皮が剥がれ、トップも悪者、会社も悪者というイメージができてしまいました。恐るべし武漢肺炎-COVID。
個人の経験ですが、BA では彼らから払い戻しが提案され、普通に返金されました。こういう時には差が出ます。しかしバックボーンが違うので BA 万歳、VS クズと言うのはさすがに酷です。
ステータスマッチ・キャンペーン
客への払い戻しにも応じなかったおかげで財務が持ち直し、戦略的に未来を考えるようになったのでしょうか。Virgin Atlantic はステータスマッチのキャンペーンを始めました。
https://flywith.virginatlantic.com/gb/en/flying-club/status-match-offer.html
対象となるのは BA エグゼクティブクラブのエリート会員のみ。VS フライングクラブのシルバー会員かゴールド会員にマッチします。VS 便の予約を持っていることが必要条件で、BA の
・ブロンズ会員は1年間シルバー会員に
・シルバー会員は1年間シルバー会員に
・ゴールド会員は1年間ゴールド会員に
マッチされます。ただしブロンズ会員は VS のエコノミークラスではダメで、プレミアムクラス、アッパークラスの予約が必要です。2月28日までに申し込みを行います。マッチは次の VS のフライトの前に行われ、それは申込後30日以内ということなので、フライト自体は相当先でもよいようです。
現在の感染拡大状況では、VS の航空券を買う人間はほとんどいないでしょう。現金収入を得るための苦肉の策に見えますが、明らかに英国在住者を想定しています。もちろん狙いは BA から「航空機でよく移動する」会員の引き剥がし。
BA のエリート会員は日本にも多いことでしょう。少し毛並みの違ったサービスを味わいたければ、この機会は一考に値します。渡航困難はまだまだ続きそうなので、購入するのはできる限り先の航空券にしたいところですが、いつまで可能なのか、確かめた方が良さそうです。
航空券とエリート会員資格のセット販売のようですが、12月の終わりに Etihad もやっていました。彼らのは応募期間が数日しかない flash marketing。成田空港発のフライトでもよかったため、日本人の利用も可能でした。しかもステータスマッチの必要はなく、徒手空拳でOK。こういうオマケつき販売は流行りなのですかね。
普段からステータスマッチ
VS のキャンペーンですが、千載一遇のチャンスと言うほどでもありません。というのは、フライングクラブでは普段からステータスマッチを行っているためです。会員引きの対象となる FFP は決まっており、直前では下の表のとおりでした。
Airline |
Programme |
Top tier |
Second tier |
---|---|---|---|
Executive Club |
Gold |
Silver |
|
Jet Airways |
JetPrivilege |
Platinum, Gold |
Silver |
Emirates |
Skywards |
Platinum, Gold |
Silver |
Air India | Flying Returns | Maharaja Club | Golden Edge Club |
Etihad |
Etihad Guest |
Platinum |
Gold |
United Airlines |
Mileage Plus |
Premier 1K |
Premier Platinum |
それぞれ top tier はフライングクラブ・ゴールド会員に、second tier はフライングクラブ・シルバー会員にマッチします。この場合も VS の予約を持っている必要があり、それはプレミアクラスかアッパークラスでなければなりません。今回の BA 会員を対象としたキャンペーンは、キャビンクラスの点で有利になっています。
顧客引き抜きとはいえ、前向きにキャンペーンができるところを見ると最悪の状態は脱したようです。しばらく戻らない航空需要の虚を突いて LHR の発着枠を獲得し、日本に再就航してもらいたいものです。