「ラクジャリー」ホテルの宿泊をハンバーガーチェーンの昼食並みに大衆化、巨大な利益を上げることに成功した Marriott グループ。彼らが仕掛ける次のパラダイムシフトは、ヨットクルーズの大衆化です。
客としてはお付き合いがなくなったサービスのチェーンですが、新しい世界を開拓する姿勢には感嘆せざる得ません。
メールの主旨は、エリート会員向けにヨットの旅を特典として用意したという事のようです。ついでながら、このメールは Pechedenfer がまだエリート会員であることを教えてくれます。マリオットには関心がなくなって久しく、会員データはすべて忘れています。
「あなたのクルーズを見つけよ」のリンクをクリックすると、専用サイトが現れます。新鮮さを感じたので報道を調べてみたら、11月 9日に始まったということでした。
受信箱にあったのは、ヨットクルーズでマリオットのポイントを獲得し、利用できるというメッセージですが、マリオットはむしろ新しく始めた The Ritz-Carlton ヨットコレクション(The Ritz-Carlton Yacht Collection)の宣伝がしたかったという気がします。文字面からは
・ヨットクルーズ料金 1 USD あたり、5ポイント獲得。
・クルーズ料金の内、最初の 1,000 USD は 180,000 ポイントで支払え、それ以上は 500 USD あたり 90,000 ポイントで支払える。
などが会員特典だと言うしかありません。
ポイントが得られるとか、ポイントで支払えるという仕組みは、間違いなくターゲットにアピールすることでしょう。キャビンサービスについてのチープな文言の羅列
”On board the yacht, multiple dining venues, premium beverages, unlimited Wi-Fi and additional luxury amenities are part of your all-inclusive cruise fare. Your Marriott Bonvoy member status will also be recognized and rewarded throughout the voyage.”
(=複数のダイニング、プレミアムなドリンク、制限のない Wi-Fi に加えラクジャリーなアメニティはすべてクルーズ料金に含まれます。旅行全体を通してマリオットボンヴォイ会員ステータスが有効であり、特典を受けられます。)
を伝統的なクルーズ客が読んだら、異質な世界に紛れ込んだような気分になりそうです。しかしマリオットの挑戦は、新しい顧客層の開拓によりレジャー産業に革命を起こすこと。野心は伝わり、慎重かつ大胆に企画を進めてきたことも感じられます。
専用サイトもあります。外部サイト扱いでした。
このサイトでも
「The Ritz-Carlton のラクジャリーなライフスタイルと、カジュアルなヨットの休日の結合を企画」
と空虚な文句が並びます。他にも
「テーラーメイドの旅行(bespoke voyages)」
とか、
「比類なく企画された(uniquely curated=美術展の用語)経験」
などというフレーズが踊ります。2022年に 3隻のヨットをまず用意、一隻がそれぞれ 149 にもおよび「テラス付きスイート(2人用)」を備え、
「陸地における The Ritz-Carlton のようにパーソナルなサービス、エレガントな食事、ラクジャリーなアメニティによって特徴づけられます。」
とマリオット節は絶好調。
試しに 2022年 5月の地中海クルーズを選択、港にカンヌを選ぶとこのクルーズがありました。
値段は照会せよという一方で、日程表の下に税金や港の使用料金が具体的に記載されているのは奇妙です。
パンデミックが終結しない現在、大衆がまだクルーズなんて気になれないのは折り込み済みでしょう。その後の世界を見据えて、歩を進めている点に感心しました。この力強さ、日本の旅行業では考えられません。大衆化により巨万の富を産むビジネスは、アメリカ社会のダイナミズムそのもの。絶望的に大きい彼我の差を感じました。