PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

A350 のファーストクラス(その1)

 

航空会社のファーストクラスは、大量輸送時代到来と飛行機利用の大衆化によって現在のイメージが確立したと言えます。各社のサービスは自国文化の宣伝であり、採算性とは別の観点から最上級の客室が維持されていました。ところが米国から始まった航空輸送産業の自由化により、需要がないサービスの維持は難しくなる一方です。ファーストクラスの廃止、縮小は歴史の必然という気がします。

 今日増殖する金持ちは時間やプライバシーを優先、誰にも邪魔されず好きな時にさっさと飛んで、地上で楽することを考えます。大型飛行機で貧乏人たちと一緒に移動し、地上より不快な空間や地上より劣る給食をありがたがるのは不自然です。彼らにはファーストクラスは望ましいサービスにはなりません。

 過去を振り返ると、豪華客船の(特等客室)内装が全て無垢材でクラフトメイドだった時代がありました。これに比べると現代の移動では貧弱な空間しか提供できません。多数の人を運ぶ空間一つとっても需要がないことで様変わりするのです。19世紀の空間を現代に蘇らせるのは、不可能ではないとしても法外な費用がかかります。そこまでする価値は誰も感じません。ファーストクラスも同じような道を辿っていると思います。

 

そうはいうものの、体力に余裕がある文化国家の航空会社はファーストクラスの維持にこだわります。1970年代以降の長距離路線で主力だった B747B777A340 が引退時期を迎え、A380 が期待ほどには使えないことが明らかになった今日、低燃費新型機 A350 への搭載が次々と発表されたことは予想できました。

 A350 の問題は機体の幅が中途半端なことです。1-2-1 レイアウトだと前代のファーストクラスのシートより幅が狭くなり、1-1-1 だと広くなります。選択肢が用意されたことにより、各社の個性や思想が表現されやすくなったとも言えます。旅客の選択の幅が広がることは確実に良いことなので、この問題は怪我の功名になるかもしれません。

 

ルフトハンザ

2024年の夏にミュンヘン (MUC) ベースで導入される A350-900 に新ファーストクラスが設定されます。2月末日にメディアルームがいくつかの写真を発表しています。

https://www.lufthansagroup.com/en/newsroom/releases/lufthansa-presents-new-first-class-suite-plus-private-room-above-the-clouds.html

当面は MUC からの北米路線が運用先となる模様です。A340-600 の置き換えとみられます。

胴体の軸に対してシートが平行に配列、1-1-1 のレイアウト。ドアと壁の高さは180 cmになるとのこと。

 窓側とセンターでシートの仕様がかなり異なります。シート幅は窓側 77 cm、センター117 cm、フルフラット時の長さは共に 2 m。スクリーンは窓側 27 インチ、センター 43 インチ、共に解像度は 4k。センターは 2人での利用を想定しているようです。

航空券の販売方法にも興味がありますが、幅117 cm に 2人はやや狭いかも。

 

スターラックス

台湾の新星スターラックス航空はラクジャリーが売りなようですので、A350とファーストクラスの組合せはある意味で自然でした。会社のサイトで説明されています。

https://www.starlux-airlines.com/en-US/experience/walk-into-starlux/first-class

写真で知る限り、シート幅は従来型ファーストクラスに比べると狭いようです。キャビンやシートの設備に関する記述を読んでも、1-2-1 レイアウトにした気がします。

 

カンタス

カンタスも超長距離路線での就航を念頭に A350 のファーストクラスを導入すると、2月23日に発表しています。

https://www.qantasnewsroom.com.au/media-releases/qantas-unveils-project-sunrise-first-and-business-class-cabins-for-a350s/

1-1-1 のレイアウトで一機あたり 6席設定されます。

シートとベッドから成り、ベッドと同じ高さでシートもフルフラット化するという形。確かに一人当たりのスペースは広いかもしれませんが、全部フラットにするとカプセルホテルか、単身者向け賃貸住宅のロフトのような雰囲気になります。

シートはシートのままに保ち、立体的に変化があった方が居住性は良くなる気がします。

なおプレスリリースのリンクに DROPBOX が使われていて、新ビジネスクラスの写真やA350 のファーストクラスとビジネスクラスの mp4 動画も視聴(+ダウンロード)できるので、時間がある方はご参照を。

 

(その2)に続きます。