PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

A350 のファーストクラス(その2)

 

A350 のファーストクラス導入とその新キャビンのメディアリリースが、2月から3月にかけて相次ぎました。偶然の一致なのか、それとも何か必然性があったのか、私には分かりません。とにかく景気の良い話です。

 

本日は(その1)https://pechedenfer.hatenablog.com/entry/2023/03/11/183000 の続編。

 

スイス航空

スイス航空は A340-300 の退役を進め、その後継機に A350-900 を2025年より導入します。

https://www.swiss.com/magazine/de/inside-swiss/swiss-experience/swiss-to-fly-the-airbus-a350

幸いなことに新機材にもファーストクラスは設定されるようです。ただし報道によるとスイス航空は 2月末に A350の新キャビンを発表したものの、それはルフトハンザのものと基本的に同一になり、両社の差は内装を多少変えた程度の変更に留まるとのことです。

https://swiss.newsmarket.com/german/press-releases/swiss-unveils-new--swiss-senses--air-travel-experience-with-totally-new-cabin-interiors/s/6e8c68f0-248d-4789-9b75-726a6d76ea42

両社のキャビンの違いは上記のプレスリリースをご覧いただくとして、旅客には大きな違いとして目に映ることでしょう。スイスはルフトハンザと経営が統合されているので、この合理化は納得できます。悪い話ではありません。

 

新キャビン自体は A330 にも搭載するようなことを言っているので、A350 のデリバリーを待たなくても旅客は体験できるかもしれません。

 

JAL

日本航空B777 を引退させると、国際線ファーストクラスが消滅します。現在の JAL の状況を考えると、ファーストクラスの廃止は考えにくい話です。ところが長距離国際線の主役になりつつある B787 にはその設定はありません。どうするか皆んな気にかけていたものと思われます。そして何となく見えて来ました。2023年10月より運航する A350-1000 に新ファーストクラスを導入するようなのです。断片的な情報を元に形を予想したブログ記事も現れました。

https://onemileatatime.com/insights/new-japan-airlines-first-class/

割と説得力がある推理で、彼の言う通り 1-1-1レイアウト、椅子+ベッドの個室タイプになることでしょう。JFK 路線で航空券をすでに買えることも興味深い点です。

 いずれにしても新ファーストクラスのニュースは会社にとっては大きな売りなので、近日中にプレスリリースが行われるはずです。

 

マレーシア航空

A350 のファーストクラスを世界で最初に運用したのは、恐らくマレーシア航空でしょう。1-2-1 レイアウト 1列 4席。他社同様 A380 を持て余し、運行を減らしつつあった頃の話です。鳴り物入りで登場した A380 ファーストクラス(メインデッキに 1-2-1 レイアウト 2列8席)の広大なシートに比べ、A350 のそれは相当幅が狭く「ファーストとしては乗る価値がない」などと酷評もちらほら出る始末。個人用コートロッカーはなく、キャビン天上に荷物ロッカーが設備される有様(=床置きの収納スペースが十分とれない)なので故無きことではありません。エアバスのエキストラワイドボディという売り込みに反し、A350 で 1-2-1 レイアウトにすると B777 とは雲泥の差が生じることが知られるようになりました。

 マレーシア航空はその後ファーストクラスを廃止、A350 の旧ファーストクラス(と A380 のフルサイズのファーストクラス)をビジネススイートとして販売することにしました。理由は「ファーストクラスが出張で認められないビジネスマンが多いため」ということです。

 Pechedenfer は A380 のファーストクラスキャビンを2回(共にビジネスクラス客として)、A350 のビジネススイートキャビンを6回(有償客として4回、ビジネスクラス客として2回)利用したことがあります。ビジネススイートのサービスはマレーシア航空のファーストクラスのそれといって差し支えなさそうです。体験の一部は記事にしたのでご覧ください。

MH71:NRT-KUL ビジネススイート(その1) - PECHEDENFERのブログ

MH71:NRT-KUL ビジネススイート(その2) - PECHEDENFERのブログ

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MH88:KUL-NRT ビジネススイート - PECHEDENFERのブログ

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寝てしまえばビジネスもファーストも変わらない?

シートに関しての意見は人それぞれです。傾斜フラットと水平フラットの差が大きく、幅に関してはそれほど重要ではないという基準を持った方の発言も聞くことがあります。しかし A350 でシートレイアウトが 1-1-1 か 1-2-1 かでは空間的な余裕に大きな差が出ます。ユーザーの価値観による良し悪しの比較、コストパフォーマンスの比較も今後盛んになりそうです。

 長年のぼんやりした懸念---ファーストクラスは利用者がいなくなり、ほとんど話題にされなくなり、いつしかフェードアウトする---このシナリオがかなり先になったことだけは間違いありません。そんなことが見えてきた3月初旬でした。