PECHEDENFERのブログ

Le rayon d'action illimité. D'une véritable ruche bourdonnante.

FFP:脱アライアンスと自社会員優遇の傾向(その1)

 

ある者は露骨に、ある者は巧妙にです。

 

航空連合は、加盟会社の FFP の大きな部分(特典マイル獲得、特典航空券の提供、搭乗実績の記録、会員の優待)を共通化しました。多くの二社間提携を締結せずに、多社間で共通プラットフォームを構築すると経営効率は良くなり、客には分かりやすい世界が実現します。今でも航空連合外の二社間提携は数多く存在しますが、個別に内容が異なり、客としては

××社が販売して、△△社の運航するフライトに○○社のプログラム会員として搭乗

する場合、この組合せで何が利用できるのか、毎度確認しないといけません。

○○社はスターアライアンスなので、会員サービスはこうだ

と分かると利用促進にもつながります。

 

ところが FFP の要件やら特典をよくチェックする者としては、パンデミック以降に

・自社会員の優遇

・自社の意向が反映しやすい小グループの形成とグループ内での会員優遇

・航空連合向け共通サービスの削減

が次々と起きていることに気がつくのでした。客の立場では改善と改悪が起きていますが、ベクトルは一致しています。それは脱アライアンス・自社会員優遇。具体例をあげていきます。

Miles & More の制度改革

直前の記事内容こそ、良い例です。しかもかなり露骨。

 

(1) 改革の最大の特徴

Miles & More は Lufthansa が1993年に始めた FFPスターアライアンスUA-LH 間の包括提携を軸に1997年に結成。Lufthansa は盟主としての立場があります。Miles & More と加盟会社 FFP との共通化は重要でした。事実、旧制度の Miles & More ではアライアンス加盟会社の搭乗を LH と区別せず積算され、特典や会員資格もそれに応じて得られたのでした。

 ところが直前の記事通り、新制度では会員に要求される利用実績の半分は Miles & More 会社の搭乗です。方向転換もよいところ。Miles & More は拡大しており、現在は 10社の FFP。今回の改革は明らかに 10社の結束を強化し、アライアンスから距離をとるものです。

 なお特典マイルの加算は FFP 内では支払金額式に変更、FFP 外会社の搭乗では距離制を保ったままです。現時点では支払金額式の定着を待つ段階ですが、二方式並列は壁を作るので、自社利用を促す方向に傾くことでしょう。

 

(2) 地域外会員 vs 地域内会員

Miles & More の採用会社は、Lufthansa Group の 7社

Lufthansa, Air Dolomiti, Austrian, Brussel Airlines, Discover Airlines, Eurowings, Swiss

および他の 3社

Croatia Airlines, LOT Polish, Luxair

からなり、全て中欧が本拠地。そして明らかに地域寡占です。アライアンスの負担を避け、市場寡占のメリットを生かすことにしたのでしょう。その結果、地域外で Miles & More を利用していた会員の多くは壊滅的な影響を受けます。

 

Senator 会員を長年続ける会員を考えてみます。旧制度ではスターアライアンス加盟会社のフライトで 100,000 mile 積算すれば Senator になれたので、長距離の移動が多い場合、世界中で無理なく Senator 会員を続けられました。中欧の住民でも状況は同様、搭乗パターンも同様だったのです。

 ところが新制度では距離区分はわずか2つ。5,000 mile 超の路線利用客には相当な改悪、500 mile 未満の路線利用者には相当な改善になります。しかも要求される利用実績の半分は Miles & More 会社への搭乗。域外の Senator 会員は高価な Miles & More 会社の長距離路線をそこそこ利用するか、頻繁に来欧して Miles & More 会社の短距離便に多数搭乗するかの二択になります。例えば日本在住だと、

HND-FRA-HAM エコノミークラス12往復半

HND-FRA-HAM ビジネスクラス4往復+α

・上記 2パターンどちらかの半分と ANA 国内線 50搭乗

などという搭乗になるでしょう。費用か時間、あるいはその両方がかなり負担になります。これがドイツ在住だと、

Lufthansa の国内線を100回搭乗

で OK。国内線 100 回搭乗なんて、回数修行では平凡な話です。費用は 5,000 €もあれば十分と楽勝プログラムになりました。

 Miles & More 会社利用の会員に有利になる一方、それ以外のスターアライアンス加盟会社利用の会員は排除されることはご理解いただけると思います。貧乏でも Senator を続けたいなら、中欧に住むのがベスト。

 

(3) ライフタイム会員

Miles & More には「長年の愛顧に報いる」制度がありました。Status Stars というプログラムで、Frequent Traveller、Senator、HON Circle 会員である日数がポイントに換算され、ポイントに応じて☆1つから☆5つの荷物タグが贈呈されました。JAL グローバルクラブの亀タグに似た制度でした。

 Miles & More の新制度では Status Stars は多分廃止で、ライフタイム Frequent Traveller、ライフタイム Senator という会員に置き換わっています。

 これまでは FFPスターアライアンス会社利用で Frequent Traveller、Senator になれたので、Status Stars も☆付荷物タグも獲得できました。新制度ではライフタイム Frequent Traveller、ライフタイム Senator は Qualifying Points の生涯積算で測られます。Miles & More 会社の利用分しか評価されないのです。

 年毎の会員要件よりも、アライアンス排除が徹底しています。

 

Status Stars プログラムから Miles & More ライフタイム資格へは、移行措置がありました。Status Stars points を 2倍して Qualifying Points としたのです。20,000 points (4☆) 以上の会員は、1月にライフタイム Senator に。20,000 points は Frequent Traveller で 20,000 日、Senator で 10,000 日、HON Circle で 6,667 日という内容。2023年12月31日がスターアライアンス結成から 26年134日 (=9,629 日) であることを考えると、FFPスターアライアンス会社利用のみでライフタイム Senator を達成した者は皆無でしょう。